暑さによる集中力の低下に注意! こまめに休憩して慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第306号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年7月20日に配信された第306号では、暑さによって集中力が低下して起きる事故について言及。充分な準備とともに、こまめに休憩を取りながら一歩一歩慎重な行動を呼びかけている。

 

7月20日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第306号では、期間中に起きた12件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月10日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した19歳の男性が、白馬岳から大雪渓を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。11日に大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して、県警ヘリで男性を救助した。

北アルプス・白馬岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月18日付

  • 7月15日、恵那山で、3人パーティで入山した35歳の男性が、登山口付近の川原でキャンプ中に、ハンモックテントを立ち木に設置した際に、倒れてきた木の下敷きとなり負傷する山岳遭難が発生。飯田警察署員および飯田広域消防本部の消防隊などが出動して男性を救助した。

  • 7月15日、北アルプスの白馬岳で、12人パーティで入山した77歳の男性が、登山中にバランスを崩して転倒、頭部を負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳救助隊員、警察本部警備部機動隊員、山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月16日、北アルプスの前穂高岳で、2人パーティで入山した51歳の女性が、前穂高岳北尾根を登山中に5峰付近で滑落する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して県警ヘリで女性を救助したものの死亡が確認された。

  • 7月15日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した42歳の男性が、登山中にスリップして転倒・負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳救助隊員、警察本部警備部機動隊員、長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月16日、北アルプスの前穂高岳で、単独で入山した52歳の女性が、前穂高岳紀美子平付近を登山中に滑落。県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。

  • 7月16日、北アルプスの前穂高岳で、3人パーティで入山した20歳の男性が、上高地から前穂高岳に向けて登山中に脱臼・負傷により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 7月16日、北アルプスの乗鞍岳で、2人パーティで入山した63歳の女性が、乗鞍岳に登頂した後、下山中に転倒・負傷する山岳遭難が発生。長野県防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 7月16日、長野市の裾花川本谷で、沢登りのために3人パーティで入山した69歳の女性が、裾花川の地獄谷付近において滝つぼに転落して溺水する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助したものの、死亡が確認された。

  • 7月17日、北アルプスの針ノ木岳で、単独で入山した73歳の男性が、針ノ木岳大雪渓を登山中に落石により負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して県警ヘリで男性を救助した。

北アルプス・針ノ木岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月18日付

  • 7月17日、北アルプスの白馬乗鞍岳で、3人パーティで入山した67歳の女性が、山頂から下山中に岩に足を挟み、負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員、警察本部警備部機動隊員、北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員、山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月17日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した50歳の男性が、八ヶ岳連峰西天狗岳から唐沢鉱泉に向けて下山中に、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員および諏訪広域消防特別救助隊が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月3週は、週末の3連休を中心に多くの登山者が県内外から訪れ、3件の死亡遭難を含む12件の遭難が発生しました。
北アルプス前穂高岳では、上高地側の一般登山道である「重太郎新道」とバリエーションルートの北尾根で2件の死亡遭難が発生しました。
いずれのルートも、鎖場やハシゴ場が連続し、岩場を登攀する場所など危険箇所が多数あり、わずかなミスが致命的な遭難につながってしまいます。
行動中、常に神経を張り詰めていることは難しいことですが、こまめに休憩を取りながら一歩一歩慎重な行動をお願いします。

夏山シーズン中は、暑さによって集中力が低下し、疲労や熱中症のリスクも高まります。入山前にスポーツドリンク等などの水分やカロリーを補給し、行動中はのどが渇く前に水分を補給することを意識して、疲労や熱中症による遭難を防ぎましょう。

また、遭難には至っていませんが、「登山に行った友人や家族と連絡が取れない」などの通報もあり、なかには、下山していたものの「携帯電話が故障して連絡できなかった」といった事例もありました。
下山したら、まず帰りを待つ家族や友人などへの下山連絡を忘れないでください。あなたのことを待つ家族は、「無事に下山したよ」という連絡を待っています。
登山に行く際は余裕をもった計画を立て、登山日程を家族や友人、職場などに確実に共有し、無理のない行動を心掛け、安全登山をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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