初めて泊まる前に押さえておこう。山小屋の泊まり方

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『山と溪谷』2023年8月号の特集「北アルプス山小屋物語」から、山小屋のノウハウを解説した記事をご紹介。一般的なホテルや旅館とは雰囲気が違うところもあり、初めてだと、ちょっぴりドキドキする山小屋泊。宿泊予約から当日、翌日の出発までの流れを押さえておこう。

構成・文・写真=小林千穂、写真=加戸昭太郎、菅原孝司、福田 諭

出発前

予約が必要

ほとんどの山小屋が事前予約制。予約をしていないと宿泊を断られたり、追加料金が必要となる場合もあるので注意しよう。日程が決まったら早めに予約を入れたい。予約は電話での受付が多いが、WEB予約が可能なところも増えている。宿泊予定日、人数、代表者の氏名、連絡先、食事の要不要、予定コースなどを伝える。予約金の入金が必要な山小屋も。

持ち物

衛生対策としてインナーシーツの持参を必携としているところ、持参を推奨している山小屋がある。マスク着用についての対応も各施設で異なるのでHPに書かれた注意点をよく確認し、不明なことは予約時に直接聞いておこう。

マスク/インナーシーツ

 

宿泊日

到着

15時ごろまでには山小屋に到着するよう、余裕をもって計画を立てたい。遅い時間帯の行動はアクシデント時に日没が迫り、遭難のリスクが増す。やむなく大幅に到着が遅れる際には、電波の入る場所で山小屋に連絡を入れること。

山小屋には早めの到着がベター

受付

宿帳に氏名や連絡先、食事の希望、翌日の予定などを記入し、受付をする。宿泊費は受付時に支払う。カードは使えないことが多いので、現金を用意しておこう。部屋や食事の時間などを確認し、案内された部屋へ。受付時に食券が渡されることもある。

到着したら受付を済ませよう

部屋

山小屋は限られたスペースに大勢が泊まれるように、上下2段に区切られた小さめの部屋であることが多いが、畳敷きの大部屋にほかの人と一緒に泊まる場合も。個室を用意している山小屋もあるので、希望の場合は予約時に伝えよう。

通称「蚕棚」といわれる2段式の伝統的な客室
個室を利用できることも

夕食

シーズンや混雑状況にもよるが、だいたい17〜18時。食堂でほかの人たちと一緒に食べることが多く、交流の場ともなる。ご飯のおかわりは自由で、ビールやワインなどの飲み物を注文できることがほとんど。

各山小屋こだわりの夕食
混雑時は相席となる食堂

消灯まで

20〜21時ごろに消灯となる。翌日の準備を終えたら、消灯まで各部屋や談話室などでリラックスして過ごそう。翌日に備えて早めに休む人もいるので、周囲に配慮したい。消灯後は部屋が暗くなるのでヘッドランプを枕元に用意して。

食事以外の時間は基本的に自由

朝食・出発

朝食は5時前後。天気がよければ日の出を見て朝食を済ませ、6時ぐらいに出発する人が多い。それより早く出たい場合は、朝食を弁当にしてもらうと、朝食時間に影響されずに行動できる。山小屋の人にひとことあいさつをして出発!

朝夕の景色を楽しめるのが宿泊の利点

 

知っておきたい山小屋泊のマナー&工夫

着替えと濡れ物の管理
山小屋に到着したら、汗冷え対策としてはもちろん、寝具を汚さないためにも着替えをしよう。雨などで濡れ物がある場合は乾燥室を利用、ビニール袋に入れるなど、山小屋によって対応が異なるのでルールに従う。

トイレの使い方
山小屋の多くは使用したトイレットペーパーを専用の箱に分別し、屎尿とは分けて処理している。ただ、トイレの方式も施設によって異なるので掲示物などをよく確認して、対応しよう。また、チップ式の場合は協力を。

靴の間違いに注意
山小屋には同じ靴、似たデザインの靴を履いている人も泊まっていて、靴を間違えるトラブルがときどき起こる。ネームプレートを使ったり、自分だけの目印を付けるなど、他の人に間違えられない工夫もしたい。

所有物の管理に気をつけよう

山と溪谷2023年8月号より転載)

プロフィール

小林 千穂(こばやし ちほ)

山岳ライター。山好きの父の影響で子どものころに山登りをはじめ、里山歩きから雪山、海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動している。著者に『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)、『失敗しない山登り』(講談社)などがある。日本山岳ガイド協会認定、登山ガイド。

雑誌『山と溪谷』特集より

1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。

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