秋深まる静かな沼ッ原湿原から紅葉シーズン直前の那須・茶臼岳に登る

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夏の花々で彩られた沼原湿原も秋深まり、静かなときを迎えています。まもなく紅葉シーズンを迎え、にぎわいを見せる前の那須・茶臼岳で静かな山旅を楽しみます。

文・写真=奥谷 晶

ニッコウキスゲやコバイケイソウなど夏の花々でにぎわった沼ッ原湿原も、しだいに秋の深まりを見せています。

沼ッ原湿原に咲くアケボノソウ
沼ッ原湿原に咲くアケボノソウ

ひっそりと咲くのはセンブリの仲間のアケボノソウで、星のように花弁を広げています。黄色く目立つのはキンミズヒキです。湿原の木道を一回りして登山道に入ります。

ダケカンバやミズナラなどの樹林帯の中を徐々に高度を上げて行き、三斗小屋温泉への分岐を左手に見て、ひと登りすると、姥ヶ平に着きます。紅葉の最盛期には、山麓の織りなす紅葉の木々と噴煙を上げる茶臼岳のコントラストが見事に映える場所となります。

ひょうたん池に映る噴煙をあげる茶臼岳

少し寄り道して、登山道より北の脇道を少し進むと小さなひょうたん池があり、水際に降り立つことができます。池面が静かであれば、猛々しく噴煙を上げる茶臼岳の逆さ画像を撮影することができます。

斜面の噴気孔から蒸気が噴き出す「無間地獄」

姥ヶ平から牛ヶ首へは、ハイマツなどの低木から火山特有の砂礫の地帯を登っていきます。エゾリンドウ、ハハコグサなどが見られます。いよいよ茶臼岳が前面に大きく迫って存在感を増していきます。牛ヶ首から鉢巻き道を北に進むと、いくつかの斜面の噴気孔から水蒸気が噴き出す無間地獄と呼ばれる場所になります。

茶臼岳より見る朝日岳への稜線
ハイカーでにぎわう茶臼岳山頂

さらに荒々しい岩石地帯を茶臼岳山頂を取り巻くように巻き道を進み、山頂火口を巡るお鉢周りに出て、やがて山頂です。山頂は、ロープウェイで上がってきた大勢のハイキング客でにぎわっていました。

帰路は牛ヶ首に戻り、日の出平より南月山への、展望がすばらしく気持ちのよい稜線を進みます。南月山山頂には南月山神社の祠がありました。南月山からは白笹山をへて沼ッ原湿原へ戻ります。白笹山からはかなりの急降下です。灌木や樹林をつかんで真下の沼原湿原調整池をめざして下ります。

MAP&DATA

那須地図

コースタイム:沼原~沼原湿原~姥ヶ原合流点~沼原分岐~牛ヶ首~茶臼岳~牛ヶ首~日の出平~南月山~白笹山~沼原:約6時間30分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

この記事に登場する山

栃木県 福島県 / 那須・日光

那須岳・茶臼岳 標高 1,915m

 茶臼岳は那須岳ともいわれ、栃木県と福島県との県境から南北に連なる那須火山群の中央に位置する。最も新しくできた溶岩円頂丘(トロイデ)で栃木県内では唯一、噴煙を上げる山だ。 天空に白煙をたなびかせる雄大な姿は、まさに那須の盟主にふさわしい。 噴気孔は主に西斜面にあり、ゴーゴーと大きな音を立てている。周辺には硫黄の結晶が見られ、かつては硫黄の採掘が行われていたが、昭和28年(1953)の噴火を前に中止された。 朝日岳との鞍部にある峰ノ茶屋は、当時硫黄精錬所の従業員の休憩所として利用されていたが、平成7年に建て替えられ、登山者用として重要な役割を果たしている。 山頂直下までロープウェイが通じ、初心者でも楽に登れるようになった。山頂は360度の大展望で、春のツツジ、燃えるような秋の紅葉を楽しむ多くの観光客や登山者が訪れている。 ロープウェイを利用して40分も歩けば山頂に達することができる。山麓駅から登山道を峰ノ茶屋経由で登っても2時間ほど。 茶臼岳の南にある南月山まで足を延ばせば、別の角度からの那須を味わうことができる。また、山麓にはたくさんの温泉もある。 那須岳という場合、一般的には茶臼岳を指すが、広い意味では那須連山の呼称である。那須連山の中の顕著なピークに対して那須五峰や那須五岳という呼び方があるが、この場合、那須岳を仰ぐ場所によって若干異なるが、白笹山、黒尾谷岳、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳を指す場合が多い。信仰登山の面からは南月山がはずせないし、展望のよさなら隠居倉が抜群である。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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