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夏の羊蹄山のベースキャンプ山行で快適軽量テントを試す MSR/ハバハバNX[モチヅキ]

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2014年08月25日

今月のPICK UP MSR/ハバハバNX [モチヅキ]

メッシュを多用した通気性の高い軽量テント

価格:49,000円+税(専用フットプリント5,000円+税)
定員:2人用
重量:1.54kg(フライ+本体+ポール)/総重量1.72kg
付属品:ペグ×6、ガイコード×2、テンショナー×2、修理スリーブ×1

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歴代のモデルを使い続けた僕のファーストインプレッション

遠望した山はあんなに美しいのに……。正直なところ、この登り道は面白くない。この単調な坂道はいつまで続くのか? わざわざ山頂に登らなくても、あの快適なテントでダラダラしていたほうが楽しかったのでは?

北海道の羊蹄山は「蝦夷富士」とも呼ばれ、その名のとおり富士山のような姿をした単独峰だ。ひたすらに山頂を目指す登山道は8合目付近まで樹林帯。あまり視界は開けない。わざわざ倶知安側からの比羅夫コースを選び、北側にあるニセコアンヌプリの姿を眺めながら登ろうと思っていたのに、これは誤算だった。初めての山ではありがちな話ではある。僕はたんたんと高度を稼ぎながら、昨日使ったテントのことを考えていた。

ハバハバNXは、横幅127cmの2人用。1人用のハバNX、3人用のマザハバNXと、いくつかのバリエーションがそろっている

今回の僕の出発地点は、半月湖野営場がある比羅夫登山口。前日のうちにクルマで到着し、テントを張って就寝した。持参したのはMSRの「ハバハバNX」という2人用のテント。以前から同社で展開していた「ハバ」シリーズの最新バージョンである。車中泊もできないことはなかったが、広いテントならばのびのび眠れ、翌日のコンディションがダンゼン違うだろう。だが、細かな部分の使い心地はどんなものなのか。

僕はこれまでにフライシートの色がオレンジだった昔の「ハバ(1人用)」、そしてクリーム色になってからの「ハバハバ(2人用)」を使ってきた。オレンジ色時代のものはフライシート裏の防水コーティングに加水分解が生じ、べたつくばかりか水も浸透するため、すでに廃棄。クリーム色時代のものは生地が薄く、何度も破ってしまい、もはやズタズタだ。そんな弱点はありつつも内部空間の広さや通気性など居住性のよさはすばらしく、いくらか不満を洩らしながらも使い続けてきたシリーズだ。

ちなみに今期のグレー色と、僕が使っていたクリーム色との間には、フライシートがグリーンだった時代もある。厚めの生地で強度を出し、加水分解にも強い素材だったと記憶している。ともあれ軽量になった最新作はグレーで、最後に「NX」がついたモデルだ。

フライシートを外した状態。上部は大きなメッシュを使って換気を促し、下部は布地のパネルで就寝時に風が体に直接吹き付けることを防いでいる

登り坂の連続に気持ちはなえているが、体力は万全だった。これはやはりテントで熟睡できたからだ。夜には北海道らしい肌寒いほどの風が吹いていたが、ハバハバNXはメッシュ使いのテントであるにも関わらず、寝転んでいれば布地のパネルが風を遮断し、体に寒気が直接当たることはない。だから体感温度は思ったほど低くならないのだ。反面、上部のメッシュで換気は充分に行なわれるので、朝起きて見ると結露は少ない。しかも太陽が出てくると、温度と換気の相乗効果ですぐに乾燥してしまう。なかなかよくできている。

入口は両サイドにあり、フライシートを開けば解放感は抜群。心地よい風が吹き抜け、夏の日差しの中でも涼しく過ごすことができた

インナーテントの壁は直立気味に立ち上がっており、内部が長方形型になって広く感じられる。この長所は、以前のシリーズと同様だ。また前室の広さと高さも特筆すべきことだろう。雨が降っているときには重宝するはずだ。これで重量1.54kgならば上出来である。

前室の広さもポイント。フライシートは中央ではなくポールに近いサイドから開くようになっているため、荷物を真ん中に置いておいても開け閉めの邪魔にはならない

 

夏のお昼寝に最適な快適モデル

さて、森林限界を超えたのは、9合目を過ぎてから。ここまでくれば周囲の眺望を楽しめるかと思ったが、あいにく濃厚なガスが漂い、しかも強風だ。なんだかな~。それでも僕は山頂の一端である外輪山の北山を目指し、さらに登っていった。

倶知安の市街地と広大な農地の先には、ぼんやりと海も。この左側にはスキーで名高いニセコアンヌプリの山々がある

しかし! 北山まで登りつめると、ガスが一気に流れ去っていくではないか。まるで僕の到着を祝ってくれるかのように。目の前には火口を取り囲む外輪山がぐるりと見え、その上に登山道が付けられているのもよくわかる。倶知安方向を眺めると、街と農地、そして海まで見渡せる好展望。しかも早朝出発したうえに、他の登山者を追い抜いてきたために、おそらく外輪山にいる人は僕だけという貸し切り状態である。これは歩き甲斐がありそうだ。

とはいえ強風は相変わらずで、一歩進むごとに体がグラつく。試しに風上に顔を向けて呼吸してみるが、風圧のために少々息苦しいほどだ。だが僕は外輪山を時計回りにジワジワと歩いていき、ついに最高地点の1892.7mに到着した。

体がよろけるほどの強風の中で記念撮影。このために、遠くからトレラン姿で走ってくる他の登山者の到着を待ってました

目の前に広がる大火口の父釜。その内部の平地には、緑鮮やかな高山植物。赤茶けた岩の斜面がいかにも火山らしい。下におりて行きたくなるほど雄大だ。振り返ってみれば、南側は完全な雲海。真っ白なカーペットの上に、羊蹄山が浮かんでいるようである。この風景の対比は素晴らしすぎる。「よし! よし!」などと独り言が出てくるほど大満足だ。

僕を追いかけるように登頂した方に記念撮影を頼み、僕はさらに外輪山を進む。いつしか風も弱まり、岩場が連続する南側の登山道も難なくクリア。改めて外輪山と大火口の風景を目に焼き付けると、再び比羅夫コースから下山し始めた。半月湖野営場には張りっぱなしにしておいたハバハバNXが待っている。

縦幅は213cmもあり、全身サイズのマットを入れても頭上に充分なスペースが残る。広々としていてリラックスできるはずだ

到着すると、僕は絞れるほどの汗で濡れたTシャツを脱ぎ棄て、乾いたウェアに着替える。そしてテントの中にゴロリ。下山後に足を延ばして休息できる幸せといったら。開け放った入口とメッシュ、さらにはベンチレーターから風が流れ込み、この上なく心地よい。そのまま1時間ほども昼寝をしてしまい、その後にはせっかくなのでと、半月湖をぐるりと歩きにいってみた……。

寝た状態で上を眺めると、このような感じ。顔の上はメッシュではなく布地のパネルが位置しており、結露した水分がメッシュ越しに降りかかってくる恐れは少ない
インナーテントとフライシートのベンチレーターは連動して換気を促す位置にある。フライシートにはつっかい棒のようなパーツも付属し、大きく隙間を空ける

1泊した程度でテントの使い心地を語るのは難しい。できれば晴天時、雨天時、強風時など、状況を変えてテストしたいところだ。とくにこのテント、居住性の高さは間違いないとしても、稜線上のテント場で強風に遭遇したときに、どこまで耐えられるのかもいずれ試してみたいと思う。外側から見たときにフライシートの壁が垂直気味に立ち上がっているため、風圧の影響を受けやすい可能性があるからだ。また、この換気性のよさは涼しい時期には過度すぎないか? 今回はあくまでも夏の好天時、木立に囲まれた野営場での感想だと思ってほしい。

 

OTHER DETAILS

ポールの先端にはミゾがあり、テントやフライのグロメットから外れにくい。とくにテント設営時には有効で、途中で外れてやり直す失敗が減り、ストレスを感じずに済む

数本のポールはハブで一体となっている。この部分の強度を知りたかったが、こればかりは山域や状況を変えつつ長い間使わないと判断できないだろう

テント内部に設けられたメッシュのポケットにはマチがあり、大きなもの、多くのものを入れられる。こういう細かな工夫がうれしい

スタッフバッグの入れ口は大きく開き、収納してからコンプレッションストラップで圧縮する。出し入れはラクだが、形は一定しない。人によって好みは分かれるだろう

 

テント用品 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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