超軽量テントを南アルプス縦走で試す! プロモンテ/VEL-10 3S|高橋庄太郎の山MONO語りVol.119
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はプロモンテの「VEL-10 3S」を紹介します。
文・写真=高橋庄太郎
今年は秋になってもなかなか涼しくならず、初冬でも気温は高そうだ。低い山であれば今はちょうど夏の日本アルプスのような気温で、暑くもなく、それほど寒くもなく、テント泊山行にはむしろ好都合といえるかもしれない。
今回取り上げるのは、僕が今年の夏の「南アルプステント泊縦走」の取材で実際に使用したテント、プロモンテの「VEL-10 3S」。「10」は1人用の意味で、モデル名の最後の「3S」とは3シーズン用ということだから、真冬の雪山以外を想定したソロテントと考えればよい。その最大の特徴は、重量約891gという“超軽量性”だ。詳しくは来年発売の『山と溪谷』掲載号をご覧いただきたいが、体力勝負の長距離ルートで体力をできるだけ消耗しないようにと、超軽量テントをセレクトしたわけである。
まずはパーツをチェック
はじめに各パーツを見ていこう。「VEL-10 3S」はオーソドックスな山岳用テントだ。ボトム(底部)が長方形のドーム型で、インナーテントにポールを組み合わせて立体化させ、その上にフライシートをかける、いわゆる自立式ダブルウォールタイプ。設営後の大きさは底面が205×90cmで、高さが105cmとなる。
上の写真の左から、ペグ、ポール、フライシート、インナーテント。それぞれにスタッフバッグが用意されているが、収納時はフライシートとインナーテントを一緒に収めれば25×18cm。12本付属しているペグを抜いた重量が約891gだ。ゆうに1kgを切っており、一昔前ならば考えられなかったほどの超軽量性である。それでいてテントを軽量に作ることができるシングルウォールやワンポールテントではなく、あくまでも居住性に優れるダブルウォールテント。あとは超軽量性と引き換えで犠牲になりがちな耐風性、耐久性がどれだけキープされているか、である。
使用素材は、フライシートとインナーテントのボトム部分が、ポリウレタン防水加工の20D(デニール)ナイロンリップストップ。インナーテントが、10Dナイロンリップストップで通気撥水加工が施されている。20Dにしろ10Dにしろ、相当に極薄だ。
テントのボトムを守るグラウンドシートは別売りで、1人用の「GSL10」のサイズは205×90cm。素材はポリウレタン防水加工を施された30Dポリエステルリップストップで、重量は約125gだ。
これだけの厚みがあれば、超薄手のボトムをしっかりと保護できるだろう。
ポールはDAC社のフェザーライトNFL8.7mmという超軽量タイプだ。一般的な日本の山岳用テントのポールと比べても細く、収納時に束ねても直径9.5cmにしかならない。
折りたたんだ際の長さはちょうど40cmで、収納しやすいサイズだ。
このポールの末端は球状になっていて、設営時はこの部分をインナーテントのスリーブ(袋状になっている部分)に差し込む。
といっても、VEL-10 3Sは完全なスリーブ式ではなく、フックを使用した吊り下げ式とのコンビネーションタイプだ。
そのためにポールはテントのボトムから30cmほど差し込むのみ。これよりも上の部分はポールとフックを組み合わせるのである。
2本のポールは中央でハブによって連結されており、インナーテントの最上部はこのハブに吊るす。
ポールにインナーテントのフックをかけていくのは、この後だ。
このフックはプロモンテのオリジナルで“スクリューフック”と呼ばれるもの。ただ引っかけるのではなく、以下の写真のようにねじって引っかけるタイプだ。
一般的なフックよりも確実に固定でき、たとえ強風でテントが歪んでも簡単には外れることはないのが大きなメリットである。
さて、こちらがインナーテントとポールを組み合わせて立体化した状態だ。
下部だけがスリーブ式で、上部はフックを使った吊り下げ式というコンビネーションのテントであることがわかるだろう。
インナーテントの生地には通気性があるものの、蒸し暑い時期は熱気が溜まりやすい。
そこで、出入り口のパネルの横に小さなメッシュの窓を設け、この部分をベンチレーターとしている。
インナーテントの後側の上部にも、吹き流しタイプのベンチレーターが設けられている。
つまり、インナーテントの前側には下部、後側には上部にベンチレーターがある。上に溜まった熱気を下部から取り入れた涼しい外気によって流し出すというイメージだ。また、このインナーテントのベンチレーターと同じ位置にフライシートのベンチレーターもつけられていて、両者が連動して換気を行なうシステムになっている。
後側のベンチレーターをテント内から見たのが、以下の写真。
外から虫が入らないように、内側にはメッシュ素材が組み合わせられている。
防水性のボトムの生地は10cmほど立ち上がり、生地の縫い目も防水処理されている。
ボトムに穴さえ開かなければ、もしも設営場所が雨で5~6cmほど水没してもインナーテント内への浸水はないはずだ。
こちらはテント設営後にボトムの生地を写したもの。初日のテント場は柔らかな草地で、そのために地面の草が透けて見える。
地面の上にあった小石などの異物は丹念に取り除いたので、こういう場所であれば20Dという極薄の生地でも穴が開いたり、破れたりはしないだろう。
次の写真はフライシートをかぶせた状態だ。
VEL-10 3Sはボトムをペグで固定したあと、フライシートの中央4カ所に取り付けられているガイライン(張り綱)でさらにテントの固定力を補強する。
また、前室以外のフライシートの裾の部分もペグで引っ張って固定でき、雨のときでもインナーテントとフライシートが張り付きにくい。
内部の幅は90cmあり、マットを敷いても過不足ない広さだ。寝袋に入って寝転んだときに寝袋がインナーテントの壁に押し付けられることなく、荷物も充分に置ける。
体が大きくてそれでも少し狭いと感じる人は、幅120cmの2人用を使う手もある。重量は約978gになるが、1人用と87gしか変わらないのに幅が30cmも広がるのだから、一考する価値はある。
ミニマルな構造のソロテントだけに、天井部は広いとは言えない。
とはいえ、体を起こして座るくらいの余裕は充分。さほど圧迫感は感じないだろう。
以上、これらが外観的なVEL-10 3Sの特徴だ。プロモンテ独自のスクリューフックを使っていたり、スリーブ式と吊り下げ式のハイブリッドタイプであったりと、ユニークな特徴はあるものの、全体的には非常にオーソドックスな山岳用テントといってよい。ただ、見た目はオーソドックスでも、重要なのは“超軽量”であることだ。
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他