大注目された“トランスフォームする”バックパックをレビュー! パーゴワークス/ZENN 45|高橋庄太郎の山MONO語りVol.120

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山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はパーゴワークス「ZENN 45」を紹介します。

文・写真=高橋庄太郎

今年の山で注目の的! パーゴワークス「ZENNシリーズ」とは

今年の山にも、いかにも新しいバックパックを背負った登山者の数は多かった。そのなかで特に目を引いていたバックパックのひとつが、今年発売されたばかりのパーゴワークス「ZENN」シリーズだ。その人気ぶりを見ていると、相当な売れ行きだったことは間違いない。

パーゴワークス「ZENN 45」

そのZENNシリーズには「25L」「35L」「45L」という3つの容量が用意されている。僕がテストに使用したのは、用途としてはテント泊やロングハイクをイメージしたシリーズ最大の「45L」だ。

45Lモデルが35Lや25Lモデルと決定的に違うのは、重い荷物に対応すべく、45Lモデルのみ内部にアルミフレームが入っていることくらい。ハーネスは3タイプ共通で1サイズ、重要パーツであるフロント部分のデタッチャブル(脱着可能)ポケットの大きさも共通しており、ロールトップ式(35L、45L)かチューブトップ式(25L)かという差はあるとしても、“大事な点”の違いはほとんどない。詳しくはこれから説明していくが、この「容量は違っていても、ハーネスは共通」という点は、ZENNを語るうえで非常に重要だ。

ZENN 45の特徴:本体と各パーツの構成

では、最初にZENN 45の特徴を見ていこう。

パーゴワークス「ZENN 45」

ZENN 45は、本体重量が960g、デタッチャブルポケットが85g、ヒップハーネスが130g。すべて合わせると1,175gだ。デタッチャブルポケットとヒップハーネスを分けて算出しているのは、不要時はそれらを取り外し、より軽量にして使えるからだろう。また、容量は本体が40Lでデタッチャブルポケットが5L。それらの容量を合計したものがモデル名となっている。

以下は、デタッチャブルポケットを取り外して本体と並べたカットだ。

パーゴワークス「ZENN 45」

いうまでもなく、左がデタッチャブルポケットである。

次はそのままひっくり返したカット。

パーゴワークス「ZENN 45」

デタッチャブルポケットの中央の黒い部分は、面ファスナーだ。しかしデタッチャブルポケットを本体に合わせたとき、この部分に対応する面ファスナーが本体に張られいてて固定できるわけではない。固定はストラップで行なうスタイルなのだ。それならば、なぜデタッチャブルポケットに面ファスナーが付属しているのか? 実は、本体側のハーネス(デタッチャブルハーネス)は取り外すことができ、その取り外したデタッチャブルハーネスをデタッチャブルポケットに取り付ければ、小型バックパックに変身するというのが、このZENNシリーズの大きな特徴。詳しくは後述する。

ZENN 45の各パーツを可能な限り、外してみるとこのようになる。

パーゴワークス「ZENN 45」

左上がデタッチャブルポケット、左中がデタッチャブルハーネス(ショルダーハーネスと背面パッドの一体型)、中央が本体、右がフレームと内蔵パッド、下がヒップハーネスである。

最後に先ほどのカットのパーツ類を、そのままひっくり返して撮影したカットだ。

パーゴワークス「ZENN 45」

このカットでは内蔵パッドを広げているが、2本の折線でわかるように本体内部には三つ折りにして収納され、デタッチャブルハーネスのパッドとの連動で背中に柔らかなクッション性をプラスしている。

サイズ調整自在なハーネスと高重心設計

ショルダーハーネスと一体になった背面パッドは取り外し可能な“デタッチャブル”なので、本体には面ファスナーで固定する。このシステムによって背面長の調節が可能になり、その幅は44~54cm。つまり10cmだ。一般的な大型バックパックであれば調整の幅が10cmのみではすべての人の背面長には合わせきれないのが普通なのだが。

パーゴワークス「ZENN 45」

バックパックのフィッティングにおける“背面長”とは、首の裏の第七頸椎から腰骨の上端を指している。基本的にテント泊を想定した大型~中型パックのフィッティング時は、もっとも荷重がかかるヒップハーネスの位置(腰骨の位置)を合わせてからショルダーハーネスの付け根の位置(第七頸椎)を決めていくが、ZENNシリーズはヒップハーネスという名称ではあるものの、実際にはヒップではなくウエストにベルトを位置させて背負う設計だ。

つまり、ヒップハーネスにはあまり荷重をかけず、幅広のハーネスによって肩から背中へ荷重の多くをかけ、重心を高くして荷物を軽く感じさせるようにする。この設計思想ならばバックパックの下部を腰骨に固定して使う必要がなく、背面長をそれほど厳密に合わせなくても背負い心地は大きく変わらない、ということだ。なお、メーカーではZENN 45の適応身長をおよそ155~180cmとしており、1サイズで大半の男性にも女性にも合うと説明している。

“デタッチャブル”なハーネスゆえに、本体やデタッチャブルポケットとはなんらかのパーツで各部を固定しなければならないわけだが、そこで使われているのが、このような特殊バックル。

パーゴワークス「ZENN 45」

幅が広いストラップでも簡単に脱着でき、とても使いやすい。このようなパーツでなければ、いかにデタッチャブルといえども脱着が面倒で使いたくなくなるから、地味ながら重要なパーツだ。細かいところだが、僕がZENN 45で気に入っている点のひとつである。

以下は、デタッチャブルハーネスを取り外した本体の裏側だ。

パーゴワークス「ZENN 45」

中央に太い面ファスナーが取り付けられており、この部分とデタッチャブルポケットの面ファスナーを合わせ、先ほどお見せした特殊バックルによって、本体とハーネスが一体化する。

こちらは取り外したデタッチャブルハーネスの裏側だ。

パーゴワークス「ZENN 45」

本体と連結する位置に面ファスナーがつけられている。

そのままひっくり返して、デタッチャブルハーネスの表側。

パーゴワークス「ZENN 45」

トレイルランニングパックから派生したデザインで幅が広いショルダーに大型ポケットが付いている。近年人気のいわゆるベスト型だ。

パッドの厚み自体はそれほどなく、25Lや35Lの小型モデルならともかく、45Lモデルとして言えば他のメーカーの一般的バックパックよりもかなり薄い。ウルトラライト的なバックパックのパッドの厚みともいえるだろう。ショルダー部分のシルエットはストレート気味で、これも男女ともに背負えるようにと考えられた設計から生み出されている。

パーツを組み合わせて使えるモジュール設計

さあ、そしてデタッチャブルポケットにデタッチャブルハーネスを取り付けた状態だ。

パーゴワークス「ZENN 45」

ショルダーハーネスの幅が太いので、地面に置くと少々見慣れないルックスになるが、これはまさに“普通”の小型バックパック!

パーゴワークス「ZENN 45」

このようにZENNシリーズは「ハーネスひとつで、大小ふたつのサイズのバックパックとして使える」のである。いわば“親子”バックパックだ。

また、テスト時は使用しなかったが、ZENNシリーズにはこのデフォルトのハーネス(スタンダードハーネス)以外に、「ランニングハーネス」と「スノーハーネス」が別売りされている。前者はスタンダードハーネスよりもポケット数が多い代わりにパッドの厚みが半分になり、重量は2gだけ重い。後者は雪が付着しにくい素材でポケットの構造も多様なギア類が入れやすいように少し変わり、重量は8g重くなる。

これらのハーネスに付け替えれば、ZENNシリーズはよりさまざまなシチュエーションに対応できるわけだ。いずれは現状のデタッチャブルポケットの代わりに使える、用途を変えた新しいパーツも発売されるようだ。このように多能なパーツを組み合わせて使える「モジュール設計」がZENNシリーズの売りなのである。

その他のZENN 45の特徴

ここまでZENNシリーズ最大の特徴ともいえる「デタッチャブルポケットを小型バックパックとして使える」仕組みを見てきたが、これ以降はZENN 45の主だった他の特徴だ。

パーゴワークス「ZENN 45」

メインとなる素材は、210デニールのエクストリーマ・グリッド・ナイロン。薄手でも強靭な生地だ。

先に説明したように、ヒップハーネスは取り外せる。裏側がスリット上になっている腰のパッド部分から“抜き取る”といったほうがいいかもしれない。その取り外した状態が次の画像だ。

パーゴワークス「ZENN 45」

荷物が軽いときはヒップハーネスを外して軽量化して使用しても、背負い心地はそれほど損なわれない。

本体はロールトップ式で上部が大きく開く。

パーゴワークス「ZENN 45」

内部にはその3つに折りたたんだパッドとフレームが入るポケットが付き、ハイドレーションパックを吊るすフックも取り付けられている。

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プロフィール

高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)ほか著書多数。
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