フィット感と汗抜けのよさが秀逸な小型バックパック ラブ/ベイルXP20|高橋庄太郎の山MONO語りVol.117
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はラブのバックパック「ベイルXP20」を紹介します。
文・写真=高橋庄太郎
近年の新作バックパックには、デザインコンセプトにおいていくつかのキーワードがある。たとえば「超軽量」「背面の通気性」「防水力の強化」といったことだ。そのなかでも外観的にもっとも特徴が出ているのが、「ベストのような形状のショルダーハーネス」だろう。これはトレイルランニングやスピードハイクの流れを汲んだデザインで、胸元にいくつものポケットがあって荷物を背負ったまま必要なものを取り出すことができ、さらに左右のハーネスの連動でフィット感を高め、スピーディーに動いても荷物がブレにくいなどの機能性をもっている。
今回紹介するラブの「ベイルXP20」は、トレイルランニングやスピードハイクのみならず、アドベンチャーレースのようにいっそうタフなコンディションも想定して、さらなる進化を遂げているバックパックだ。とはいえ、小型バックパックとしての機能性は充分に確保してあり、一般的な登山にも適している。
まずは構造をチェック
重量は463g。後述する背面パッドにこそかなりの厚みがあるものの、メッシュ状のショルダーハーネスからはパッドが省かれ、本体の生地は極薄だ。
だから、荷物を入れずに広げておくと、背面パッドの厚み以外は、ほぼまっ平らである。このような素材の使い方がベイルXP20の超軽量性につながっている。
もしもショルダーハーネスと同じように背面のパッドも省いていれば、ますます超軽量に仕上がり、パッカブルタイプのバックパックとして売り出された可能性すら感じる。
ベイルXP20の大きな特徴は、体の前面に当たる各部のデザインだ。
左右のショルダーハーネスには5段にループが設けられ、そこにバンジーコードを2つのフックで掛けてフィット感を調整する。一般的なストラップとバックルによるチェストハーネスよりは手間取るが、胸元から腹部近くまでバンジーコードの伸縮性によってしっかりと抑えられるためにフィット感は極上だ。
そのショルダーハーネスには大きめのポケットが左右に取り付けられている。ソフトフラスクのようなボトルが入れられる上部が開口したポケットには表面にもファスナー付きのポケットが設けられ、2重構造になっている。
ひときわユニークなのが、ウエストハーネスだ。
左右のパーツが大きく異なり、一方は面ファスナーが全面的につけられたベルト状で、もう一方はバックルのみ。このベルトには伸縮性がないが、適度な張りと柔らかさがある。
ショルダーハーネスに使われている素材は超薄手のモノメッシュだ。疎水性が高くて水を吸わないのでドライな感覚をいつも保ち、ぐっしょりと濡れて不快にはなることはない。
この素材は背面にも使われていて、パッドを覆うように張られている。
この背面パッドは「3Dハイロフトメッシュバック」という名称で、じつにユニーク。2枚の白いメッシュで透明の繊維を絡ませたような素材を挟み込み、弾力性が非常に高い1cmほどのパッドを形成しているのだ。
白いメッシュは吸水速乾性に優れ、それらの間の透明の素材は水を含まない。これらのコンビネーションで背中のドライ感を保ち、通気性にも優れる背面パッドが生まれている。
背面パッドと本体の荷室の間は大きなポケットになっている。バックル付きのループも備えていて、ハイドレーションパックをここに入れて固定することができる。
荷物を入れた状態は以下のようになる。
フロントやウエスト部分にもポケットがあり、細かなギミックだらけのバックパックだが、カラーリングがモノトーンだからか意外とシンプルに見える。
街中で使いやすいタイプとはいえないものの、現代的でとてもスタイリッシュである。
上部の荷室へのアクセスは生地を丸めて留めるロールトップ式だ。
丸めた部分の左右に付けられているバックルをそれぞれ本体に留め、その上からストラップで留めるだけのシンプルさである。
この左右のバックルはいわゆるオスとメスに分かれているため、わざわざ左右に分けて本体に取り付けなくても、以下の写真のように上部で連結してもいい。
ただ、荷物をしっかりと安定させるためには、やはり左右に分けて固定し、ストラップを引いてできるだけ荷物を圧縮したほうがいいだろう。
この荷室への開口部の左右には細いドローコードとコードストッパーもつけられている。
これを利用すれば、バックパック上部にトレッキングポールなどを固定できる。
また、バックパックの下部やウエストのポケットの近くなどにも複数のループやコードがあり、それらを連動させれば多様な方法でポール類を固定できる。
もっとも、バックパックの左右には「Z POLL CARRY」という細長いポケットがあり、ここに入れるのがいちばん簡単だ。
とはいえ、コード類にせよ、ポケット類にせよ、用途が決められているわけではない。臨機応変にさまざまなモノを固定できるように各種パーツを活用したいものだ。
と、ここまでチェックしてから荷物をあらためてパッキングし、ベイルXP20を背負ってみる。
なるほど、背面のフィット感はじつに良好! 本体の生地は極薄なので内部の荷物の凹凸が出やすいはずだが、クッション性が高い背面パッドがしっかりと凹凸を吸収してまったく違和感がない。また、今回はハイドレーションパックを使わなかったが、たとえ背面のポケットに冷たい水を入れたとしても、パッドの厚みによって、その冷たさは背中に伝わらなかったと思われる。
ウエストハーネスを締め、胸元をドローコードで調整する。
胸元のポケットの左右には、ソフトフラスクとペットボトルを収納してみた。写真左のソフトフラスクは上部がはみ出ているが、これは絵的に見えやすくするために少し上げているだけで、実際はしっかりと全体が収まる深さを持っている。また、行動中にこれらのボトル類が落ちないように、ポケット上部にはリング状のコードも取り付けられている。
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