もしものときのビバーク術――最優先すべきは体温の低下を防ぐこと
ケガや道迷いなど山の中で思わぬアクシデントに遭遇し、下山できなくなった場合、緊急避難的に野宿する必要がある。それがビバークだ。書籍『ヤマケイ登山教室 山のリスクマネジメント』(山と溪谷社刊)から、ビバークの心得とツエルトなしでのビバーク術について抜粋して紹介しよう。
監修=木元康晴、写真=矢島慎一
ツエルトを使わないビバーク法
実際にビバークをする場合、安全性や快適性は、ツエルトを使うか使わないかによって大きく変わる。ツエルトを使わない場合は、手持ちの装備をフル活用し、自然の地形や植生をうまく利用しつつ寒さと濡れを防ぐことが大切だ。
岩陰や樹林帯など風雨をしのげるビバーク適地を見つけたら、まずは整地をしよう。お尻や背中などに当たる部分の石や木の枝を取り除く。
次に、ビバーク時に必要なレスキューシートやホイッスルなどの小物を出して、それ以外のザックの中身を大きな防水スタッフバッグかゴミ袋に移し替えよう。暗くなってから装備を探すと紛失してしまうことがあるからだ。このとき同時に、持っている防寒着やレインウェア、替えのアンダーウェアにいたるまで、すべて着込むようにしたい。ビバークの夜は、時間がたつにつれて寒さが厳しくなる。体を冷やさないようにするためには、持っているものをすべて活用することが肝心だ。
そして、地面からの冷気を防ぐためにザックを敷いて、レスキューシートを体に巻きつける。このシート自体に発熱効果はないので、風が入らないようにシートの端をしっかりと閉じ、隙間なく体に密着させるようにしよう。
ビバークの体勢が整ったら、温かい飲み物や、カロリーの高いものを摂取して、体を内側から温めることも重要だ。ビバークは、非常時の緊急避難行動のため、精神的にナーバスになってしまうことがある。そんなときに温かい飲み物や空腹を満たしてくれる食べ物は、気持ちを落ち着かせてくれる効果もある。また、温かい飲み物がない場合でも、水分補給は必要だ。充分な水分がないと体調を崩してしまう可能性が高い。
また、落ち葉の多い季節なら、大きめのゴミ袋に詰めて、クッションをつくることができる。クッションは寝心地がいいだけでなく、地面からの冷気を防いでくれるので快適だ。

ヤマケイ登山教室
山のリスクマネジメント
大きな判型で、読みやすくわかりやすいヤマケイ登山学校シリーズ。山に潜むさまざまなリスクを知り、回避するための知識や遭遇してしまった危険に対処する方法をわかりやすく紹介する。
| 編集・発行 | 山と溪谷社 |
|---|---|
| 価格 | 2,420円(税込) |
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他