北アルプスの大展望と春の花々を楽しめる長野県・鉢伏山へ

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読者レポーターより連休の登山レポをお届けします。勝五郎さんは、北アルプスの展望抜群の長野県・鉢伏山(はちぶせやま)へ。

文・写真=勝五郎


今回紹介する山は信州の鉢伏山です。字のごとく鉢を伏せたような姿からつけられた名前の山です。松本市内から日帰りで登れる山を探していたときにおもしろい名前が目に留まり、登ることにしました。

スタートは牛伏寺の駐車場脇にある登山口(930m)からです。原生林の尾根筋を登ります。登り一辺倒で意外ときつい道でしたが、ミズナラやホオノキなどの新緑、所々に咲いていたスミレ、ヒトリシズカ、カタクリなどの花に癒やされました。

長野県・鉢伏山

出発から2時間ほど経ったころ、ブナノキ権現(1571m)が目に入ってきました。石碑に刻まれた文字は風化して読めませんが、大山祇(オオヤマツミ、山の神)の木札が置かれていたので山岳信仰の山だったことがわかります。

長野県・鉢伏山

ブナノキ権現を過ぎると木々の背丈が低くなり眺望が広がります。一般車両が通る林道が目の前に出てきますが、その林道より若干高い位置に登山道があるため眺めをさえぎることはありません。目の前には鉢を伏せたような山が見え始めます。

長野県・鉢伏山
長野県・鉢伏山

周りを見ると北アルプスはもとより南アルプスや中央アルプスなど主要な山々が見えてきます。

長野県・鉢伏山

鉢伏山荘(1837m)まで行くと林道や高木はなくなり笹原の山容になります。ここからは展望のよい道が山頂まで続きますが、私は少しだけ回り道をして若山牧水・喜志子夫婦の歌碑を見てから山頂へ向かいました。

長野県・鉢伏山
長野県・鉢伏山

山頂(1926m)は予想以上の展望でした。まず目に入ってきたのは、雪が残る北アルプスの山脈です。左から乗鞍岳(のりくらだけ)、焼岳(やけだけ)、穂高岳(ほたかだけ)、槍ヶ岳(やりがたけ)と続き最後の白馬岳(しろうまだけ)まで一直線に見えています。南側を向くと中央アルプスや南アルプス、そして多少霞がかかっていましたが富士山も見えていました。山頂には多数の人がいましたが、みなさん笑顔で写真を撮っていたり、食事をしていたのが印象に残っています。

長野県・鉢伏山
槍穂高連峰、常念山脈
長野県・鉢伏山
後立山連峰

下山は登ってきた道をブナノキ権現まで下り、そこからは登りとは違う牛伏川の源流沿いを通る谷筋ルートを下りました。谷筋だけあって、足場が安定しない場所や木段が崩れている場所が多数ありましたが、慌てず一歩一歩慎重に下れば問題ありません。

慎重に下れば余裕も出てくるので普段見過ごすようなものも目に入ってきます。岩陰にひっそり咲く可憐な花を見つけたり、木々の合間から見え隠れする小動物などに気づくこともあります。

今回は2つの出合いがありました。1つは牛伏川の源流です。余裕がない時に水の流れが聞こえても「沢があるのかな?」と思うだけで通り過ぎてしまいますが、余裕があったので音がする周辺を観察していると木の根の下から水が湧いていました。ほかに湧いている場所はありません。とってもきれいな水が湧いていて感動しました。

長野県・鉢伏山

2つめはリスの群れです。すばしっこくて写真は撮れませんでしたが、慌てず一歩一歩慎重に下ったので出合えたのだと思います。多少時間はかかっても慎重に下山することで新たな発見や出会いなど体験できた一例だったと思います。

下山も後半になると道幅が広がり花々が増えてきます。圧巻だったのはニリンソウの花畑です。小さい花が辺り一面を覆い尽くしていました。

長野県・鉢伏山

沢の幅が広がると沢底に石を積み重ね侵食を防いでいる箇所が出てきます。“フランス式階段工”と書いてありました。下山後にインターネットで調べたところ、2012年に重要文化財に指定された施設だとわかりました。土木工事マニアには見逃せない場所だったのかもしれません。

最後は牛伏寺砂防ダムの横を通って登山者専用駐車場に戻り、登山終了です。

今回のルートは車でアクセスするのが基本です。登山口は牛伏寺の参道脇ですが、牛伏寺の駐車場は利用せず、牛伏寺砂防ダム下に駐車します。体力に自信のない方は、車で鉢伏山荘までアクセスしてから山頂をめざしてもよいでしょう。

MAP&DATA

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コース

牛伏寺砂防ダム~鉢伏山荘~鉢伏山~牛伏寺砂防ダム(参考コースタイム:6時間40分)

勝五郎(読者レポーター)

勝五郎(読者レポーター)

奥多摩と高尾周辺を中心に活動しています。時々日本アルプスへも遠征します。山頂をめざすより、その山の自然や歴史を感じるのが好き。下山後は飲食店に駆け込みます。

この記事に登場する山

長野県 / 筑摩山地 美ヶ原 霧ヶ峰

鉢伏山 標高 1,929m

 北アルプスの展望台として、美ヶ原に勝るとも劣らない位置を占めているのが、その南隣にある鉢伏山である。松本から塩尻にかけての車窓から見ると、草原のふっくらとしたドームを持ち上げている。  美ヶ原が戦後、有名になり過ぎて観光地化が進む中で、鉢伏山はまだ静けさを保っている。展望は北アルプスは言うに及ばず、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプスと、ほとんどの日本の高山が等距離で迫ってくる。山麓の塩尻が、「日本の中心地」だと実感できる。  昔はふもとの名刹、牛伏(ごふく)寺を詣でてから、最後は踏み跡もない谷をつめ、広々とした草原を野の花をめでながら登ったものだが、今は頂上近くまで車道が延び、山小屋も1軒できて、以前のような処女性は大分失われた。  頂上の大展望を楽しんだら帰りは道を北にとって、扉温泉で一汗流すのがよかろう。

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