憧れの世界自然遺産・屋久島で、2泊3日のテント泊!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

読者レポーターより登山レポをお届けします。なおさんは屋久島で宮之浦岳(みやのうらだけ)を登頂して縄文杉を見るテント泊を満喫。

文・写真=なお


今年のGWに屋久島に行き、淀川(よどごう)登山口〜宮之浦岳(1936m)〜白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)を2泊3日のテント泊で歩きました。

1日目:淀川登山口~淀川小屋

朝4時頃に車で熊本市内を出発し、鹿児島港へ。8時半発の「フェリー屋久島2」に乗ります。フェリーは高速船と比べると時間はかかりますが、揺れが少なく船酔いになる心配はありませんでした。船内に「うどん・そばコーナー」があるのですが、人員不足で休業していました。そちらで昼食をとる予定の方は、営業情報をあらかじめ調べておくことをおすすめします。

フェリーから見た屋久島
フェリーから見た屋久島

12時半に屋久島・宮之浦港に到着し、バスを乗り継ぎ、15時過ぎに淀川登山口へ。

淀川登山口
淀川登山口

バス停から淀川登山口に向かう間に小雨が降り始めました。屋久島は、付近を流れる黒潮と地形の影響で、「ひと月に35日雨が降る」とも言われるくらい雨が多い島だそうです。撤退するほどの雨になりませんように、と祈りながら、入山料1人2,000円を投函して登山を開始しました。世界自然遺産の山に入るのは、なんだかドキドキしました。

淀川登山口からの道
淀川登山口からの道

小雨が降ったりやんだりするなか、バス停から1時間と少しで淀川小屋に到着しました。この日は10張ほどのテントが張られていました。

淀川小屋のテント場
淀川小屋のテント場

お手洗いは、トイレットペーパーを持参する必要があります。また水場は、川から直接汲む形式でした。とてもきれいな川でした。

淀川小屋の水場
淀川小屋の水場

2日目:淀川小屋~宮之浦岳~高塚小屋

2日目は、朝から本格的な雨でした。朝食をとり、テントを片付け、水を補給し、5時過ぎに淀川小屋を出発。まずは黒味岳(くろみだけ)をめざします。

大きな岩から木が生えている珍しい光景
大きな岩から木が生えている珍しい光景

1時間半ほど歩くと、小花之江河(こはなのえごう)、花之江河に到着しました。残念ながらガスで景色は見られず。

花之江河
花之江河

7時に黒味岳の入口に到着。バックパックをデポし、黒味岳に向かいました。途中、ロープを使って巨大な岩を登る箇所がいくつもありました。雨でも岩が滑らないのが救いでした。

黒味岳への道
黒味岳への道

20分ほどで頂上に到着しましたが、地面に手をついていないと飛ばされそうなほどの爆風でした。真っ白で景色も見られず、早々に下山しました。

黒味岳山頂
黒味岳山頂

続いて宮之浦岳に向かいます。宮之浦岳の手前から、たまに青空が出てくるようになり、気分も少し晴れやかに。

宮之浦岳の手前で青空が現われた
宮之浦岳の手前で青空が現われた

そして九州最高峰、最南端の日本百名山に登頂できました。こちらも頂上は爆風、そして真っ白。たまに視界が晴れて青空や遠くの山々が姿を現わしてはまた隠れる、の繰り返しでした。

宮之浦岳山頂
宮之浦岳山頂

昼食をとりながら完全に晴れるのを待っていましたが、あまりに風が強く寒いので、下山を開始しました。その後少しずつ空が晴れ、平石(ひらいし)に向かう途中にはすっかり青空に。

平石の手前で青空に
平石の手前で青空に

10時50分ごろ、平石に到着し少し休憩。宮之浦岳や翁岳(おきなだけ)がきれいに見えます。

平石から宮之浦港、翁岳を望む
平石から宮之浦港、翁岳を望む

平石から少し進むと坊主岩という岩がありました。屋久島では、このように岩から木や植物が生えている光景をよく見かけました。

坊主岩
坊主岩

12時20分ごろ、新高塚(しんたかつか)小屋に到着。ヤクシカが出迎えてくれました。この日、宿泊予定の高塚小屋には水場がないので、こちらで水を補給しました。

ヤクシカ
ヤクシカ

13時30分に高塚小屋に到着。縄文杉がここから10分ほどなので、テントを設営した後に見に行きました。

縄文杉
縄文杉

縄文杉は最大の屋久杉で、日本で一番太いスギだそうです。樹齢は2000年以上といわれています。ここまでの登山道でも大きなスギはいくつも見かけましたが、縄文杉は別格の存在感を放っていました。

テントに戻り、夕食をとり、翌日に備えて早めに就寝しました。高塚小屋でも、テントは10張くらいありました。テントを張れるエリアが広く、パーソナルスペースを十二分に確保できました。こちらもお手洗いにはトイレットペーパーの持参が必要です。

3日目:高塚小屋~白谷雲水峡登山口

3日目は、下山し、この日のうちに鹿児島まで戻る予定です。予定していたフェリーに乗るには、白谷雲水峡を10時50分に出発するバスに乗らないといけないため、朝4時前に高塚小屋を出発しました。

テントを片付けるころから強めの雨が降り出しました。この3日間で一番の土砂降りのなか、真っ暗な道をひたすら下りました。歩きやすいように木道になっている箇所が多かったですが、暗いので道を見失いそうになることも何度かありました。慎重に歩き続け、5時半ごろにやっとトロッコ道にたどり着きました。

ひたすら続くトロッコ道
ひたすら続くトロッコ道

森の中に突如現われたトロッコ道は、とても不思議な光景でした。ジブリの世界に入ったような感覚になりました。

平らなトロッコ道を1時間以上歩くと、白谷雲水峡への分岐が現われました。入口付近は雨で登山道が川のようになってしまっており、なんとか避けながら登っていきました。

登山道に水が流れ川のように
登山道に水が流れ川のように

雨に濡れた白谷雲水峡の苔むす森は、緑がとても鮮やかできれいでした。土砂降りのなか歩くのはつらかったですが、がんばった甲斐がありました。

木の下をくぐります
木の下をくぐります

白谷雲水峡に向かう間には、橋のない沢がいくつかあり、大雨のときには増水し渡れなくなります。渡れるのかドキドキしていましたが、どれも無事渡ることができました。

その後すれ違うガイドさんたちからは、「川、渡れた?」と何度も聞かれました。雨がおさまれば水位は下がるそうなので、増水していたら、無理に渡らずおさまるのを待った方がよさそうです。

そして、9時半ごろ、白谷雲水峡に到着しました。予定通り、今日中に鹿児島に帰れることが決まり、ほっとしました。

白谷雲水峡に到着
白谷雲水峡に到着

10時50分のバスで宮之浦港へ。港近くの「屋久島ふるさと市場 島の恵み館」で、屋久島名物・トビウオの刺し身や、鹿児島の黒豚を食べ、お土産に屋久杉グッズや焼酎、手ぬぐいを購入しました。

鹿児島名物「しろくま」
鹿児島名物「しろくま」

フェリーに乗り、夕方に鹿児島港に到着。下船後は、鹿児島名物「しろくま」を食べ、モンベル鹿児島店で限定Tシャツを購入。短い時間でしたが鹿児島名物も堪能でき、大満足の屋久島山行でした。

唯一悔いが残るとすれば、最終日が余裕のないスケジュールになってしまったことです。見どころ満載の縄文杉〜白谷雲水峡が時間に追われてしまい、ウィルソン株や太鼓岩などの名所が全然見られませんでした。白谷小屋か島内の民宿でもう1泊した方が満喫できそうです。

(山行日程=2024年4月29日~5月1日)

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る

コース

【1日目】淀川登山口~淀川小屋(参考コースタイム:45分)
【2日目】淀川小屋~黒味岳~宮之浦岳~高塚小屋(参考コースタイム:8時間40分)
【3日目】高塚小屋~白谷雲水峡登山口(参考コースタイム:5時間30分)

なお(読者レポーター)

なお(読者レポーター)

神奈川県藤沢市を拠点に、夏はアルプス、秋〜春は関東近郊や九州の山に夫婦で登っています。特に北アルプスと伊豆が好きです。

この記事に登場する山

鹿児島県 / 大隈諸島 屋久島

宮之浦岳 標高 1,936m

 屋久島のほぼ中央に位置し、九州の最高峰。山体は四万十層の基盤岩に貫入した花崗岩で、山容は女性的である。  屋久島は九州本土最南端の佐多岬から70kmの黒潮洗う中にある。南北25km、東西27km、周囲わずか105kmのハート型をしたこの島には、1500m以上の高峰が11座、1000mを超える山が30座以上もあり、洋上のアルプスである。  海岸線からは、宮之浦岳などの高峰は見ることができないので、奥岳とも呼ばれ、これらを囲む前衛の峰を前岳と呼ぶ。また、宮之浦岳、永田岳、黒味岳を三岳(みたけ)、または御岳と呼び、翁岳、安房岳(あんぼうだけ)、投石岳(なげしだけ)、筑紫岳(ちくしだけ)を含めて八重岳とも呼んでいる。  屋久島の骨格をなす山々の稜線は、宮之浦岳からほぼ四方に延びる。全山花崗岩からなり、山頂近くは風化、浸食された奇岩、怪石が多い。一帯は低いヤクザサに覆われ、矮小化したヤクシマシャクナゲが点在し、花期の6月上旬には登山者の目を楽しませてくれる。  豊富な雨量により渓谷も発達し、山肌を深く浸食しながら島の中央から無数の河川が海に注ぐ。宮之浦岳を源流とする宮之浦川、小揚子川、安房川などは日本有数の峻険な谷である。  山頂西側の花崗岩の割れ目には、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)を祭る宝珠大権現の社があり、宮之浦にある益枚(やく)神社の奥宮として、古くから島民の岳参り信仰の中心となった。春は日帰りで五穀豊穣、国家安穏、延命息災を祈願し、秋は大願成就のため2泊3日で参詣した。必ず各集落から参拝し、女人禁制で登られていた。  昭和40年代まで安房川中流域小杉谷を中心に、伐採が盛んに行われた。島の南東の安房集落から小杉谷まで軌道が敷かれ、トロッコによって屋久杉を運搬していた。現在では輸送手段がトラックに変わり、島の四周に林道が延び、これを利用した登山コースが多い。  花崗岩の山頂からの展望は抜群。島とは思えない雄大なスケールで、島の山岳はもとより、晴天時には遠く九州本土佐田岬や開聞岳、口永良部(くちのえらぶ)島、種子島も浮かんで見える。  島の中央宮之浦岳への登山道は四方に拓かれ、代表的なコースは、楠川―小杉谷―縄文杉を眺め、宮之浦岳まで約20km、12時間。永田―鹿之沢―永田岳―宮之浦岳は約14km、9時間。他に栗生―花山歩道―鹿之沢。湯泊―湯泊歩道―花之江河(はなのえごう)―宮之浦岳。尾之間―尾之間歩道―花之江河。屋久杉ランド―安房歩道―花之江河などがあるが、一般日帰りコースは、淀川登山口(よどごうとざんぐち)―花之江河―宮之浦岳、約8km、所要5時間などである。山小屋は淀川、石塚、鹿之沢、高塚にある。

プロフィール

山と溪谷オンライン読者レポーター

全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。

山と溪谷オンライン読者レポート

山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。

編集部おすすめ記事