気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発表。巨大地震想定震源域での山の日、お盆休みの登山は慎重に判断を

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2024年8月8日午後4時43分頃、九州南部、宮崎県の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震を受け、気象庁は同日夜、南海トラフ地震の想定震源域で、大規模地震発生の可能性が平常時より高まっているとして、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を初めて発表した。お盆休みを利用して登山を予定している人は登山計画を点検し、慎重に行動してほしい。

文=山と溪谷オンライン


気象庁は8日の臨時情報のなかで「モーメントマグニチュード7.0以上の地震発生後に同じ領域で、モーメントマグニチュード8クラス以上の地震が7日以内に発生する頻度は数百回に1回程度となり、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられる」と発表した。

マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月時点)とされてきた南海トラフ地震の想定震源域で、この先一週間以内に激震が襲う確率が高くなっていると、国民に対して注意喚起を強く促している。

この発表を受け、JRや私鉄の一部会社では鉄道運行において減速走行を決めるなどの対応も始めた。また、各地の海水浴場でも安全を考慮し、自治体の判断で閉鎖、遊泳禁止にする動きも出ている。

このように政府や自治体から巨大地震への警戒が呼びかけられるなかで、山の日からお盆期間にかけて夏山登山シーズンの最盛期を迎える。お盆休みを利用して登山を計画している登山者は、気象庁発表の巨大地震注意を確認したうえで慎重に登山の実行を判断してほしい。

内閣府の「防災情報のページ」で公開する南海トラフ「地震防災対策推進地域」によると、1都2府26県707市町村が防災対策推進地域に指定されている。これらの指定地域では、南海トラフ地震発生時、震度6以上の激震が襲うとされる。指定地域=激震エリアには、夏山登山で人気を集める中部山岳国立公園の一部や、中央アルプス国定公園、南アルプス国立公園が含まれている。また、富士山も対策推進地域エリアに入る。

内閣府ホームページ「防災対策制度、推進地域・特別強化地域」より転載

2024年4月3日、台湾東部沖で起きたマグニチュード7.2の巨大地震の記憶はまだ新しい。このとき、震度6が襲った花蓮県太魯閣渓谷ではハイカーなどが落石に巻き込まれて亡くなるなどした。果たしていつどこで巨大地震が起こるのかだれにもわからないが、山間部で登山中に被災すれば深刻な事態に陥ることは容易に想像できる。

「登山は自己責任」とは言うものの、突発的な地震による被災でなく事前に「巨大地震への注意喚起」が発表されているなかで、「地震防災対策推進地域」での登山は注意深く検討されるべきだ。

2021年9月19日から岐阜県飛騨地方で複数回の地震が発生し、北アルプスで多くの登山者が地震による被災体験をした。2021年9月18日〜20日はいわゆるシルバーウイークの連休であり、多くの登山者が北アルプスに入山していた。『山と溪谷オンライン』のユーザーも北アルプスに入山して思い思いの山行を楽しんでいた。そして、突然、震度4の揺れが襲った。

涸沢テン泊で地震に遭遇
ヤマちゃんさんの登山記録より)

食後に宴会ということで飲み始めた矢先の5時過ぎに、突然の地鳴りと揺れ。
こんな地鳴りは聞いたことがなかった。
揺れが収まると奥穂側からゾッとするような音とともに無数の落石が。
数秒後には北穂側からも。
奥穂側からは沢筋がテン場の方に向いてないが、
北穂の沢はモロにテン場に向いているので背筋が寒くなった。
これはヤバいと貴重品を持ってヒュッテの高い方へ避難。
幸い沢の中ほどに受けがあったので、そこかで止まったので助かった。
涸沢は電波がなく震源や大きさなどの情報がなかったが、
後で調べると岐阜・長野の県境で最大震度が4とのことだったが、体感としては5以上に感じた。
その15分ぐらい後にも同程度の地鳴りと揺れがあり音とともに落石があった。

無数の落石が涸沢カールを襲った(写真=ヤマちゃん

秋の涸沢と奥穂高岳、
地震による大規模崩落2021

ナカゴンさんの登山記録より)

テントに戻り、夕食を食べ終わり、涸沢ヒュッテのトイレに向かった時のことである。
下から突き上げるような大きな地震。
その数秒後に涸沢一帯に轟音が響き渡り、あちこちの谷から砂煙が上がった。
7カ所はあっただろうか、大規模な落石である。
キャンプ場にいる人達にすぐ避難するようハンドマイクで指示があった。
その直後に大きな余震、緊張が走った。
その後も余震は続き、時折落石の轟音が響く。
明日は穂高方面への登山を控えるように、下山は安全確認後にするようにという指示があった。
夜は、時折響く落石の音や地鳴りを聞きながら、月齢13の月を見ながら夜を過ごした。
翌日、7時前には山岳警備隊の掲示板に横尾への下山は通行可能であるという掲示がされていた。
まだ余震が続く、うす暗いうちに登山道を確認してくれたのである。
本当に頭が下がる思いである。おかげで安心して横尾に向かうことができた。

涸沢野営場で地震発生時の様子(写真=ナカゴン

登山記録に生々しい体験談を書いた2人は涸沢のテント場で地震に遭遇した。
このほかにも、行動中に被災した登山者もいる。

いま、巨大地震の発生確率が高まっているとされる。
正しい行動を取って自分や仲間、家族の身を守りたい。

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