南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑥南海トラフ地震と遍路

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弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。

写真・文=岸田 明 トップ写真=高知県土佐市にある安政地震(1854年)・津波の碑

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土砂崩れと遍路

南海トラフ地震が発生した場合、四国各地でどの程度の揺れが発生し土砂崩れが起きるか、これは津波浸水と同様に非常に重要な問題だ。内閣府防災ホームページによれば、室戸岬、足摺岬そして高知周辺で震度7と予想している。全長1200km以上ある遍路道のどこかで土砂崩れが発生する可能性は高い。

土砂崩れのリスクに関しても、ハザードマップポータルサイトで表示することが可能だ。想定される津波浸水区域と重なる区間も多いが、区域外であっても、峠越えにあるような旧遍路道は山道であるし、また河川や沢筋に沿った里の遍路道も土砂崩れのリスクを抱えている。特に第十二番焼山寺(しょうざんじ)から下った鮎喰川(あくいがわ)、久万(くま)高原への小田川田渡川(たどがわ)付近は川に沿った長い遍路道なので、注意が必要だろう。

なお津波からの避難では「山に逃げろ」が一般的だが、山は土砂災害の危険もあるので、山に逃げる場合は、地震の揺れがおさまり地盤の安定を確認しつつ山に登る、ということになるのだろう。その意味で、津波避難においては土砂災害危険箇所にも留意することが望ましい。

〉第二十六番金剛頂寺のある海成段丘から、麓の不動岩に下る急峻な斜面
第二十六番金剛頂寺のある海成段丘から、麓の不動岩に下る急峻な斜面

また霊場は山寺であったり、平野部にあっても小高い山の懐にあるお寺も多く、霊場がある場所自体にも土砂崩れのリスクがある場合がある。もし霊場で地震に遭遇した場合は、少しでも安全と思われる場所に身を隠すしかないだろう。

本コラム後半にて、ハザードマップポータルサイトから導き出した急傾斜地崩壊特別警戒区域の一覧、土砂災害の恐れがある崩壊特別警戒区域および付近にある霊場などもまとめたので参考にしていただきたい。

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プロフィール

岸田 明(きしだ・あきら)

東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。

四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/

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