南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑩愛媛県の遍路道 区間ごとのアドバイス
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明 トップ写真=国道56号・内子線喜多山駅付近の景色。やはり春が遍路のベストシーズンであることに間違いはない
はじめに
愛媛県の遍路道は、高知県最後の町・宿毛(すくも)を起点とすれば、愛媛県最後の霊場の第六十五番三角寺(さんかくじ)の先、県境に接する四国中央市川滝町まで約380kmある。実はその先の遍路道は、香川県ではなく短い距離だが一度徳島県に入る。第六十六番雲辺寺(うんぺんじ)本堂は徳島県に位置しており、その先香川県に入って第六十七番大興寺(だいこうじ)に至る。
遍路道は海から山、平野に出て、人口の多い市街地や鉱工業の生産現場である工場地帯の脇も歩く。愛媛県は面積では四国第2位だが、人口、GDPともに第1位だ。そして太平洋側と瀬戸内側では風景も大きく異なり、遍路道を歩き続けていると、残念ながら県や地域の力の差を感じる部分がある。
スタートは、第8回コラムに従って、愛媛県の宇和島駅とするのがよいだろう。そして愛媛県の打ち止め箇所だが、上述の川滝町にある県境の境目峠(さかいめとうげ、徳島県との県境)は山中で、交通の便が悪く区切り地点としては非常に難しい位置にある。最も自然な区切り地点は、さらに先、第六十六番雲辺寺を越えて香川県に入り第六十七番大興寺にお参りした後のJR予讃線観音寺(かんおんじ)駅ではないだろうか。この考えに従って歩くと、宇和島駅から観音寺駅までは約340kmになる。
もし一国参りにこだわるのであれば、境目峠から雲辺寺に登らずに、JR土讃(どさん)線の阿波池田(あわいけだ)駅まで下道の国道を約14km歩く方法がある。この場合次回の香川県の一国参りは、阿波池田駅から雲辺寺に直接一般道を登るスタートになるだろう。
次に愛媛県内の途中の区切り箇所だが、内陸に入った久万(くま)高原は交通の便が悪いので松山周辺を1カ所目とせざるを得ないが、松山以降は遍路道がJR線と平行している区間も長く任意の地点で区切りが可能なので、例えば伊予西条駅で区切って、全3区してはどうだろうか。なお瀬戸内海側に入り、結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)に向かって気持ちも高まってきているので、長期の日程確保が可能であれば、松山周辺から観音寺駅まで1回で歩ききるのもよいだろう。
なお、第六十番横峰寺(よこみねじ)と第六十六番雲辺寺は一日がかりの登山なので前日に麓に着いている必要があるが、その反面、麓の宿の到着時刻が早ければ、体を休めるよいチャンスとなるだろう。
高知県の解説では宇和島駅で打ち止めとしたため、今回の愛媛県は宇和島駅から3つの区間に分け、遍路道や霊場などについて区間ごとに説明していくことにする。
プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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