残雪登山中の滑落事故が多発、実力に見合った登山計画を 島崎三歩の「山岳通信」 第391号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第391号では、残雪登山で滑落するケースが大半を締めている状況に言及。体力と技術に見合った登山をするように促している。
5月2日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第391号では、期間中に起きた10件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
4月21日(月)、北アルプスの爺ヶ岳で、バックカントリー滑走のため2人パーティで入山した45歳の男性が、爺ヶ岳西沢を滑走中にバランスを崩して転倒、負傷した。
4月25日(金)、北アルプスの前常念岳で、単独で入山した64歳の女性が、登山中に滑落して負傷した。
4月25日(金)、北アルプスの蝶槍で、単独で入山した58歳の男性が、常念岳から蝶ヶ岳に向けて縦走中に蝶槍付近で滑落、負傷した。
4月26日(土)、南佐久郡川上村の天狗山で、2人パーティで入山した53歳の女性が、天狗山に向けて登山中にバランスを崩して転倒、負傷した。
4月26日(土)、中央アルプスの極楽平で、バックカントリー滑走のため2人パーティで入山した64歳の女性が極楽平付近を滑走中に転倒、負傷した。
4月26日(土)、北アルプスの涸沢で、単独で入山した60歳の男性が、涸沢に向けて登山中に発病により行動不能となり死亡した。
4月26日(土)、下伊那郡阿智村の大川入山で、3人パーティで入山した61歳の女性が、大川入山から登山口に向けて下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。
4月27日(日)、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで横尾から入山して北アルプス蝶ヶ岳に向けて登山中に、61歳の女性が滑落、救助に向かった62歳の男性も滑落、それぞれ負傷した。
4月27日(日)、北アルプスの白馬乗鞍岳で、バックカントリー滑走のため単独で入山した50歳の男性が、滑走中にバランスを崩して滑落、負傷した。
4月27日(日)、北アルプスの西穂高岳で、単独で入山した57歳の男性が、下山中に岳沢付近で道に迷い行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週は、週末を中心に10件の遭難が発生しました。登山中の遭難が7件、バックカントリー中の遭難が3件発生しています。
登山中の遭難は、下山中の転倒、残雪での滑落がほとんどです。「残雪に足を取られ、体力と時間を予想以上に消耗し、心にあせりが生まれてしまい、ささいなミスにより遭難……」そんな悪循環に陥らないよう、事前に下調べを行ない自分の体力に見合った行動計画を心掛けてください。各山小屋ではホームページやSNSなどで登山道状況などの情報を発信しています。そのような現地情報を確認することもとても重要です。
バックカントリー滑走は、雪や斜面のコンディションをよく見極めて行ないましょう。車の運転と同じで、技量レベルの限界近くで滑走することは非常に危険です。転倒や滑落は、往々にして骨折を伴う事故に発展します。余裕をもってターンや停止のできる速度を心掛けましょう。
今週末から大型連休後半が始まります。高山の春山は、冬山登山の延長にあります。そのような場所での登山には、多くのリスクが存在します。遭難を他人事と考えず、装備、計画を万全にして安全第一で楽しみましょう。
春山遭難が連続発生! 連休後半は残雪と気象の急変に要注意
本格的な春山シーズンが始まりましたが、長野県内では、山岳遭難が相次いでいます。長野県警察によりますと、4月26日から5月1日までに北アルプスを中心に15件の遭難が発生、死者4人を含む16人が遭難するなど憂慮すべき状況にあります。大型連休の後半5月3日から4連休ですが、登山者の皆様は、以下の注意点を守って「安全・安心」な登山を心掛けてください。登山はリスク(危険)と隣り合わせです。「他人事」ではなく「自分事」として遭難防止に細心の注意を払ってください。「無事帰るまでが登山」です!
1.具体的な注意点
▼滑落に対する警戒を!
春山の残雪による滑落遭難が多発しています。春山の雪面は標高や日当たり、時間帯によって大きく変化します。アイゼン・ピッケルを使用し、雪の状態をよく見極めて慎重に行動してください。なお、アイゼンは安全に直結するので10本爪以上を推奨します。サイズの調整や正しい装着方法を確認して使用してください。
▼気象情報の確認を!
「低気圧や寒冷前線の通過」「寒気の流入」「強い冬型の気圧配置」等の予報があれば、山岳地帯は冬山のような猛吹雪になり、きわめて危険です。5月3日から始まる大型連休の後半では、天候の変化が予想され、細心の注意が必要です。事前に必ず気象情報を確認してください。気温の上昇や降雨に伴う融雪によって、大規模な雪崩や土砂崩落、落石等のリスクも高まりますので、慎重な行動を心掛けてください。
▼登山計画書の作成と共有を!
登山の際は必ず事前に登山計画書を作成し、提出してください。特に単独登山中に遭難した場合は、登山計画書が唯一の手掛かりとなる場合があります。家族や友人にも共有してください。計画段階で自分が登る山をよく調べて、体力や技術に見合った計画を立ててください。
2.その他
長野県ホームページ「山岳情報」、長野県警察ホームページ「山岳情報」および「長野県山岳遭難救助隊公式X」でも安全登山に関する情報を発信していますので、ご確認ください。
【燕岳】登山口(中房温泉)に通じる県道は通行止め! 徒歩通行は可能
一般県道の槍ヶ岳矢村線(通称:中房線)は、4月14日に安曇野市穂高有明地籍で路肩が延⻑約10m、幅約2.5m にわたって崩落、現在も車両通行止めとなっており、規制解除の見通しはたっていません。
崩落箇所は徒歩での通行となります。充分気を付けて通過してください。バスの運行状況などの最新の情報は、安曇野市観光協会HPで確認してください。
⇒詳細はこちら
【白馬岳】登山口(猿倉)に通じる県道は通行止め!
猿倉登山口に向かう県道白馬岳線は、雪崩等に伴う落石や路面の変状により、災害が発生する恐れが強く、安全確保が困難なため、引き続き、通行止めとなっています。復旧の見通しはたっていません。詳細は、白馬村公式観光サイトをご確認ください。
⇒詳細はこちら
【焼岳】噴火警戒レベル2→1へ
北アルプスの焼岳は、4月18日に【火口周辺警報】噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)に引き下げられました。登山の際は、火山活動の異変に注意し、ヘルメットを着用するなどの安全対策をしてください。
⇒詳細はこちら
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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