山岳・風景写真の教科書 第14回 夜の山とミズバショウ

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季節の題材を取り入れた一枚を撮る連載。今号では白馬岳(しろうまだけ)の栂池(つがいけ)自然園で6月中旬から7月上旬に見頃を迎えるミズバショウを取り入れた夜景作品についての解説です。

文・写真=菊池哲男

朝の栂池自然園ミズバショウ湿原より白馬三山とミズバショウ

撮影データ

焦点距離15mm 
F2.8 
シャッタースピード30秒 
ISO1250

北アルプス白馬岳の中腹に広がる栂池自然園に入ってすぐのミズバショウ湿原には6月、雪解けとともに白馬三山をバックにミズバショウが咲き乱れます。この時期、明け方近くなると夏の天の川が西側の白馬三山に近づくので、このミズバショウの群落を月明かり、星明かりで照らし、一緒に星月夜を撮影しようと考えました。もちろん合成なしの一枚撮り(シャッターを押すのは一度だけ)での挑戦です。この時期は夏至に近く、昼間の時間が長いので、山岳夜景を撮影するには寝不足になりがちですが、狙いは天の川が西に傾く、ぎりぎり薄明前ということになります。長野県の6月の日の出時刻は午前4時30分前後ですので、薄明が始まる午前3時くらいがベストという計算です。

作例

まだ残雪が多い5月、月齢22の下弦に近い月明かりで撮影。月に照らされて残雪やミズバショウもくっきりしているが、月齢がそれなりに大きいのでやはり空が明るくなり、天の川もかすかに。できればもう少し細い月で撮影したかったが、これはこれで月光浴のよい作品になった。

撮影データ

焦点距離15mm 
F2.8 
シャッタースピード30秒 
ISO1250

星明かりのみ

6月、満天の星空の下、星明かりだけで撮影。ミズバショウは基本、白系なのだが、そのままだと思ったほどには浮かび上がらない。ダイナミックレンジ補正を強く利かせると浮かび上がるが、ややノイズが気になるところ。

撮影データ

焦点距離24mm 
F2.8 
シャッタースピード54秒 
ISO1600

ヘッドライトの光が強すぎる

遊び心で手前のミズバショウをわずかにヘッドライトで照射したが、光が強すぎて失敗。

撮影データ

焦点距離16mm 
F2.8 
シャッタースピード57秒 
ISO1600

ヘッドライトの光を調整

なるべく光が拡散するように、照射時間を変えて何度かトライしていい感じに。

撮影データ

焦点距離16mm 
F2.8 
シャッタースピード48秒 
ISO1600

『山と溪谷』2025年6月号より転載)

プロフィール

菊池哲男(きくち・てつお)

写真家。写真集の出版のほか、山岳・写真雑誌での執筆や写真教室・撮影ツアーの講師などとして活躍。白馬村に自身の山岳フォトアートギャラリーがある。東京都写真美術館収蔵作家、公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本写真協会(PSJ)会員。

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。

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山岳・風景写真の教科書

『山と溪谷』で2024年5月から連載の『山岳・風景写真の教科書』から転載。写真家の菊池哲男さんが山の写真を撮る楽しみをお伝えします。

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