山の上も気温が高く、体調不良や疲労による遭難も多発しています 島崎三歩の「山岳通信」 第402号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第402号では気温上昇と共に体調不良や疲労による遭難が増加する傾向にあり、あらためて、こまめな水分・塩分補給と熱中症対策を行なうよう促している。
7月10日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第402号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
7月2日(水)、北アルプスの五竜岳で、2人パーティで入山した55歳の男性が、五竜岳に向けて登山中に滑落して死亡した。
7月3日(木)、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した61歳の女性が、天狗岳から唐沢鉱泉に向けて下山中に転倒して負傷した。
7月4日(金)、苗場山で、2人パーティで入山した73歳の女性が、苗場山山頂から下山中に発病により行動不能となった。
7月4日(金)、北アルプスの白馬岳で、4人パーティで入山した43歳の女性が、猿倉登山口から入山して白馬大雪渓を登山中に、落石のため負傷した。
7月5日(土)、四阿山で、単独で入山した51歳の男性が、根子岳から四阿山に向けて縦走中に疲労により行動不能となった。
7月5日(土)、中央アルプスの南越百山で、5人パーティで入山した71歳の男性が、大平登山口から入山して登山中に山頂付近で発病、死亡した。
7月6日(日)、北アルプスの常念岳で、3人パーティで入山した66歳の女性が、常念岳から一ノ沢に下山中に転倒して負傷した。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では、7件の山岳遭難が発生し、うち1件は死亡遭難でした。
白馬大雪渓で発生した落石による遭難は、大事には至らなかったものの、落石を受けた箇所は一歩間違えれば致命傷になっていたかもしれないものでした。雪渓上の落石は、音を立てずに静かに、ものすごい勢いで落ちてきます。白馬大雪渓などの雪渓が残っている場所を歩く際には、落石に充分注意しましょう。
また、先週の発生はなかったものの、白馬大雪渓では装備や技量不足による遭難が多発しています。麓では暑い日が続いていますが、大雪渓では残雪が多くあり、アイゼン・ピッケルが必須です。かつ、それを使いこなす技術も必要です。しっかりと自分のレベルに合った山域を選択するとともに、事前の下調べ・登山計画を立て、登山をしましょう。
7月に入り、麓では30度を超える真夏日が続いていますが、山の上も気温が高く、大量の汗をかき、体調不良や疲労による遭難も多発します。登山中は、トイレを気にして水分補給を控える人もいますが、熱中症になってしまえば、元も子もありません。行動中は、こまめな水分・塩分補給を心掛けるとともに、登り始める前にも、目安として500mlの水分を取ってから登山を始め、熱中症対策もしっかりとしましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
“夏山登山Safety Book”が完成しました!
槍・穂高連峰、後立山連峰、八ヶ岳連峰、南アルプス、中央アルプス、御嶽山など各山域の最新情報を盛り込んだ登山者必見の資料です。常駐隊の常駐予定、山岳診療所の開設予定も掲載しています。安全登山の参考にご活用ください。
⇒夏山Safty Book(PDF)
御嶽山は剣ヶ峰まで通行できます!
御嶽山の登山道の立ち入り規制は、7月1日(火)から規制が緩和されました。黒沢登山口(木曽町)に続いて、王滝登山口(王滝村)も7月5日午前6時から通行できます。
<規制が緩和されたルート>王滝登山口(田の原駐車場)~王滝頂上~剣ヶ峰、王滝頂上~二ノ池トラバース~黒沢十字路
詳細は、地元自治体にご確認ください。
⇒【黒沢口・開田口】木曽町役場 総務課危機管理室 0264-22-4280
⇒【王滝口】王滝村役場 総務課 0264-48-2001
白馬大雪渓(猿倉登山口)につながる県道の通行規制について
県道白馬岳線(猿倉登山口~二股ゲート)は、白馬館ヘリポート(猿倉登山口の手前、車両転回場)と二股ゲートとの間の車両の通行規制が解除されました。この区間は、タクシーや路線バスなどの車両に限って通行できます。一般車両の通行はできません。
ただし、この区間における歩行者の徒歩による通行は可能です。現在、県道の復旧工事が行なわれていますが、全面復旧の見通しはたっていません。 詳細は関係機関のウェブサイトでご確認ください。
⇒白馬村ホームページ
⇒大町建設事務所
⇒(株)白馬館
北アルプス地域に「ツキノワグマ出没注意報」
北アルプス地域における6月8日から6月14日までの里地でのツキノワグマ目撃件数が、前週の1.5 倍以上と増加するなど、クマの移動が活発になっています。みなさんにあらためて注意いただき人身被害を回避するため、北アルプス地域を対象に「ツキノワグマ出没注意報」を発出します(長野県林務部)。
発出期間: 6月19日(木)~7月31日(木)
対象区域: 北アルプス地域
人身被害: 令和7年度(6月18日現在) 5件 8名
①朝夕の行動はできるだけ避け、複数人で行動する
②クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯する
③クマのいる場所に近づかない
④子グマを見たら立ち去る
⇒ツキノワグマ出没注意報
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他