準備不足が招く山岳遭難が多発。登山にはリスクがつきものという自覚を! 島崎三歩の「山岳通信」 第408号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第408号では、16件起きた遭難の多くで準備不足が原因だったことを指摘し、自身の登山を見直し、安全登山を心がけることを促している。


8月19日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第408号では、期間中に起きた16件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月13日(水)、南アルプスの甲斐駒ヶ岳で、4人パーティで入山した71歳の男性が、甲斐駒ヶ岳を登山中に滑落、負傷した。

  • 8月13日(水)、中央アルプスの中岳で、2人パーティで入山した69歳の女性が、木曽駒ヶ岳から下山中に疲労により行動不能となった。

  • 8月13日(水)、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した58歳の男性が、白馬大雪渓を登山中に疲労により行動不能となった。

北アルプス白馬大雪渓での遭難現場の様子
  • 8月14日(木)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した71歳の女性が、八方尾根を登山中に木道で足を滑らせて滑落、負傷した。

  • 8月14日(木)、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した48歳の男性が、常念岳から蝶ヶ岳に向けて縦走中に疲労により行動不能となった。

  • 8月14日(木)、北アルプスの白馬岳で、3人パーティで入山した62歳の男性が、白馬岳付近の山小屋で体調不良により行動不能となった。

  • 8月15日(金)、北アルプスの白馬岳で、7人パーティで入山した36歳の女性が、白馬岳から下山中に体調不良により行動不能となった。

  • 8月15日(金)、北アルプスの鳴沢岳で、単独で入山した63歳の男性が、針ノ木岳に向けて縦走中に鳴沢岳付近で転倒、負傷した。

  • 8月15日(金)、北アルプスの赤沢岳で、2人パーティで入山した81歳の女性が、赤沢岳山頂付近を縦走中に転倒、負傷した。

北アルプス赤沢岳での遭難現場の様子
  • 8月16日(土)、北アルプスの槍ヶ岳・北鎌尾根で、単独で入山した46歳の男性が、北鎌尾根を登山中に急峻な沢に迷い込み、行動不能となった。

  • 8月16日(土)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した65歳の男性が、白馬岳方面から唐松岳に向けて縦走中に天狗の頭付近を登山中に滑落、負傷した。

  • 8月16日(土)、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、3人パーティで入山した51歳の女性が、鹿島槍ヶ岳から五竜岳に向けて登山中、八峰キレット付近で滑落、死亡した。

  • 8月16日(土)、北アルプスの唐松岳で、単独で入山した28歳の男性が、唐松岳から五竜岳に向けて登山中に道に迷い、行動不能となった。

  • 8月16日(土)、北アルプスの小蓮華山で、2人パーティで入山した31歳の女性が、白馬岳へ向けて登山中に小蓮華山付近で疲労等により行動不能となった。

  • 8月17日(日)、北アルプスの常念岳で、4人パーティで入山した57歳の女性が、常念乗越に向けて登山中に転倒、負傷した。

  • 8月17日(日)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した57歳の女性が、唐松岳から八方尾根を下山中に滑落、負傷した。

北アルプス唐松岳での遭難現場の様子

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内では16件・16人の山岳遭難が発生し、先週に続いて1名の方が亡くなっています。滑落や転倒による遭難が8件、疲労や体調不良による遭難が6件、発生しました。

いずれも本格的な登山の対象である標高の高い山域で発生しており、救助活動にはヘリコプターだけでなく、遭対協・警察・消防など多くの救助隊員が地上部隊として出動し、対応しています。中には日没後、夜遅くまでかかって救助した事案も数件ありました。

救助要請時の聞き取りでは、救助を待つ間のビバークの可否について確認しても、装備や飲料、食料がほとんどない方がいたほか、救助活動後の聞き取りでは、ふだんほとんど運動習慣がないなど、明らかに体力不足とみられる方もいました。

「自分は遭難しない」「自分には関係がない」そう考えていませんか? また、「自分も遭難するかもしれない」と自覚があっても具体的な対策を怠ったまま漫然と登山を続けていませんか? 自然の中で行なう登山にはリスクがつきものです。また、登山には体力が必要不可欠です。今一度、ご自身の登山を見直し、安全登山を心がけましょう。

遭難しないためには……

  • 夏山は天候が急変。雷雨・落雷・気温低下に要注意。「早出早着」が基本!
  • 体調不良や天候悪化の場合、計画中止や変更を検討。引き返す勇気を!
  • 遭難は下山時に集中。暑さと疲労で体力や注意力が低下。最後まで集中!

 

長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ

「登山計画書」を作成・提出しましたか?

登山のリスクを意識し、自分の体力や技術に見合ったゆとりある山行計画をたてましょう。登山計画書は必ず提出してください。その際、山小屋・地元自治体・観光協会などを通じて、登山口までの道路や登山道の状態、残雪の状況など、現地の最新情報を事前に把握しておきましょう。  
そのうえで、家族や知人等にも詳細な予定(行き先・登山ルートなど)を伝えましょう。登山計画書を提出し、情報を共有しないと、入山場所や遭難地点の特定に時間がかかり、捜索活動が遅くなってしまいます。  
 ⇒詳細はこちら

信州の山岳遭難防止対策プロジェクト~寄付を募集しています!

登山の楽しい思い出作りを陰から支える活動をご支援ください。長野県では長野県山岳遭難防止対策協会の活動などを通じ、登山者の安全確保に向けた啓発活動や遭難救助に取り組んでいます。信州の山岳を安全に楽しんでいただくため、全国の皆様のあたたかいご支援を心からお待ちしています。なお、1万円以上の寄付をしていただいた方には、「安全登山啓発カード」を差し上げます。   
 ⇒詳細はこちら

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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