読図ってなに? 読図を学ぶメリットは?【山と溪谷9月号】
実際に見る地図が紙の地図であれ、登山地図アプリであれ読図は登山者必須の知識です。多くの人が使う登山地図アプリ「ジオグラフィカ」の開発者、松本圭司さんに読図とはなにか、読図を学ぶメリットを教えてもらいました。
文=吉澤英晃 イラスト=白井 匠 写真=矢島慎一、吉澤英晃
Q.読図ってなに? A.ナビゲーションを行なう手段
「ジオグラフィカ」開発者の松本圭司さんは読図を「地形図に書いてある要素から情報を読み取って言語化すること」と言う。要素とは地形図上の「等高線」や「地図記号」などを指し、読み取れる情報は、「地形」や「植生」や「リスク管理に関わるあらゆる予測」などが挙げられる。では、なぜ登山で読図を行なうのか。理由は、自分自身を安全に目的地までナビゲーション(道案内)するためで、読図はその手段という位置づけになる。
普段地図を使うときに私たちは、目的地までのルートを大まかに把握して、交差点や建物など目印になるポイントを覚えておき、それらの情報を頭の中でなぞりながら自分自身をナビゲーションしている。目的地へ向かう過程で行なう作業は登山においても変わらない。
繰り返しになるが、自分自身を安全に目的地へナビゲーションするための情報収集が読図にあたる。
1.ルートを大まかにイメージする
事前準備として、地形図を見ながら登山口、山頂、下山口を1本の線でつなぎ、ルート上の地形や進む方角、標高差などを確認しておく。読み取った情報は頭の中で覚えておいてもいいし、文字にして地形図に書き込んでもいい。
2.細かい情報を調べながら歩く
当日は先々にポイントを設けて、標高差や距離、方角など、より細かな情報を調べながら歩く。地形図ばかりを見ているのではなく、周りの地形に目を向けることも重要で、地形図と現場の地形を照らし合わせながら行動する。
3.現在地を確かめながらルートを維持する
地形図と実際の地形を頭の中やスマートフォンの画面で照らし合わせてルートを維持。予定外の地形や分岐が現われた場合は、改めてよく確認することで道迷いの予防や早期の対処につながる。ナビゲーションのために読図をするというわけだ。
Q.読図を学ぶメリットは? A.“先読み力”が身につく
本来、読図は自分自身を安全にナビゲーションするために嫌でも学ぶ必要があった。メリットを考える以前に、登山者の必須スキルだったといえる。ところが、登山アプリが誕生したことでナビゲーションは機械に頼れるようになり、その裏で読図の必要性は年々薄れているように感じられる。
しかし、松本さんは現代における読図を学ぶメリットを「先々でどんな状況になるか、未来を予想できるようになる」と説明する。これが“先読み力”である。
先読み力がない人は行き当たりばったりの行動しかできず、現場の潜在的なリスクにも気付きづらい。一方、先読み力が身についている人は、がんばるところでがんばり、休むところで休み、リスクに対する備えを事前に行なえる。
安全に登山を続けるためには、読図から先読み力を身につけてリスク管理できるようにしたい。
事前に行動を判断できる
樹林帯を抜ける手前でジャケットを着る、急登の前で食べ物と水分を補給するなど、先々の状況に応じて行動を判断できるようになる。
道迷いに気付きやすくなる
予想と違う地形に出くわしたときにルートを外れた可能性を予測しやすくなり、道迷いを防ぐことができる。
休憩場所を見つけやすくなる
比較的安全と思われる休憩場所があることを予測できると、行動時間を逆算でき、不適切な場所で休むリスクをおかすこともなくなる。
がんばりどころがわかる
傾斜が急になる区間がわかっていれば、登り切るまでのおおよその所要時間から適切なペースを考えることができ、体力を温存できる。
登山アプリはナビゲーションスキルをモノにしづらい
登山アプリはボタン一つで現在地を表示できる便利さからナビゲーションスキルを身につけづらく、例えるなら、電卓を使いながら九九を暗記しようとしているようなものだ。ナビゲーションスキルを身につけるにはアプリに頼らない学習方法をおすすめする。

(『山と溪谷』2025年9月号より転載)
プロフィール
山と溪谷編集部
『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。
雑誌『山と溪谷』特集より
1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。
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