クマは歯磨き粉さえも嗅ぎつける。目を合わせないためにサングラスは有効。米国のロングトレイルに学ぶクマ対策

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クマに遭遇したら

①野生ではアイコンタクトは敵意の表われ

僕が初めて歩いたアメリカのロングトレイルは、アパラチアン・トレイル。アメリカ東部にあるトレイルです。私はセクションハイカーの人と歩くことが多く、いろいろなことを教えてもらいました。まず、最初に言われたのがサングラスを買った方がいいということでした。顔はクマの方向に向いていなくてはならないのですが、野生においてアイコンタクトは敵意の表われになるそうです。サングラスをかけると、絶対に目は合いません。

②クマに突然遭遇しても、落ち着いて

クマが人間の存在に気づいていない場合、クマとの距離があった場合は絶対に驚かせないでください。ゆっくりとクマの方を見ながら後ずさりし、クマの様子を注意深く見守ってください。ある一定の距離まで離れるとクマが安心して逃げてくれます。

③クマよけスプレー(ベアスプレー)について

私がトレイルを歩いていてベアスプレーを持参したのは、唯一カナダとアメリカの国境からイエローストーン国立公園の間だけです。ここはグリズリーベアが多く生息するエリアで、僕が歩いたときは、余計な物を持たないUL(ウルトラライト)のハイカーでさえ、全員持参していました。ベアスプレーを持つときの注意点は次の通りです。

  • 取り出しやすい場所に装着する(バックパックの中には入れない)
  • クマが突進したり攻撃してきたときのみ使う(15mくらいからがベスト)
  • できれば風上から噴射する(自分にかからず、噴射距離が長くなる)
  • 噴射時間が短いので注意する
ベアスプレー
ベアスプレーはすぐに取り出せる場所に装着しておく

ちなみに、ヨセミテ国立公園やその周辺の国立公園では、人間に対するクマの被害がほとんどないのでベアスプレーは使用禁止になっているようです。間違えないでいただきたいのは、ベアスプレーはクマに出遭ってしまい、やむを得ない場合に使用するもので、最終手段として考えてください。普段からクマに遭遇しないように細心の注意を払って行動することが重要です。ベアスプレーはいたずらにクマを傷つける道具ではないことを理解してください。

④人間の声が有効

ちなみに、クマ対策に熊鈴をつける方は多いと思いますが、アメリカでは熊鈴はクマに人間が近くにいることを知らせるに効果的な手段ではないと考えられています。手を叩いたり、話したり、人間が音を立てる方が効果的だと言われています。

安全で楽しく歩くために

ハイカーは野生動物の住む土地に入って歩き、生活をします。だからこそ、野生動物や周辺の自然を知り、学んだ上で、危険から身を遠ざける作業が欠かせません。人間社会に動物が現われたらニュースになりますよね。私たちも同じです。野生動植物の生活を邪魔しないように、自然の一部を使わせてもらっている意識をもって歩くことが必要なのだと思います。だからこそ、アメリカの多くのトレイル団体が提唱するのが、「LEAVE NO TRACE」、(痕跡を残さない)。すなわち、ハイカーがトレイルに残していいのは足跡だけとされているのです。

いかがでしたでしょうか。

ハイカーのクマ対策がみなさんの安全な登山や生活のヒントになれば幸いです。

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プロフィール

斉藤正史(さいとうまさふみ)

1973年、山形県新庄市出身。ロングトレイルハイカー。
2005年に、アパラチアン・トレイル(AT)を踏破。2012年にパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を踏破。2013年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)踏破し、ロングトレイルの「トリプルクラウン」を達成した。日本国内でロングトレイル文化の普及に努め、地元山形県にロングトレイルを整備するための活動も行なっている。

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