疲労と安易な行動が招く山岳遭難を避けるために必要な登山者の心得 島崎三歩の「山岳通信」 第409号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第409号では、転倒や滑落、疲労や病気による遭難が大多数だったことを指摘。自分自身の登山計画や装備品を見直しを行ない、安全登山を心掛けることを促している。
8月27日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第409号では、期間中に起きた20件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
8月18日(月)、北アルプスの烏帽子岳で、2人パーティで入山した46歳の男性が、烏帽子岳に通じるブナ立尾根を登山中に発病により行動不能となった。
8月18日(月)、御嶽山で、単独で入山した74歳の男性が、御嶽山から下山中に疲労により行動不能となった。
8月18日(月)、南アルプスの甲斐駒ヶ岳で、2人パーティで入山した59歳の女性が、甲斐駒ヶ岳から北沢峠に向けて下山中に滑落して負傷した。
8月18日(月)、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した84歳の男性が、天狗岳に向けて登山中に疲労により行動不能となった。
8月20日(水)、北アルプスの布引山で、2人パーティで入山した56歳の男性が、鹿島槍ヶ岳から冷乗越方面に向けて縦走中に滑落、負傷した。
8月20日(水)、中央アルプスの宝剣岳で、2人パーティで入山した57歳と22歳の男性が、宝剣岳のしらび平から千畳敷に向けて中御所谷付近を登山中に道に迷い、行動不能となった。
8月20日(水)、北アルプスの涸沢で、単独で入山した78歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中に、日没により道に迷い行動不能となった。
8月20日(水)、北アルプスの岳沢で、単独で入山した74歳の男性が、岳沢から上高地に向けて下山中に道に迷い、行動不能となった。
8月21日(木)、北アルプスの白馬岳で、3人パーティで入山した61歳の女性が、白馬岳から栂池に向けて下山中に三国境付近で転倒、負傷した。
8月21日(木)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した80歳の男性が、奥穂高岳からザイテングラートを下山中に滑落、負傷した。
8月22日(金)、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、3人パーティで入山した8歳の男性が、硫黄岳付近の山小屋に宿泊中に発病により行動不能となった。
8月22日(金)、南アルプスの仙丈ヶ岳で、2人パーティで入山した43歳の男性が、仙丈ヶ岳から北沢峠に向けて下山中に滑落して負傷した。
8月22日(金)、北アルプスの前穂高岳で、2人パーティで入山した51歳の男性が、前穂高岳の重太郎新道を上高地に向けて下山中、転倒して負傷した。
8月22日(金)、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した54歳の男性が、槍ヶ岳付近の山小屋に滞在中に疲労により行動不能となった。
8月22日(金)、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、2人パーティで入山した66歳の男性が、硫黄岳付近の山小屋に滞在中に体調不良により行動不能となった。
8月23日(土)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した55歳の女性が、唐松岳を登山中に山頂付近で転倒、負傷した。
8月23日(土)、八ヶ岳連峰の赤岳で、3人パーティで入山した52歳の男性が、赤岳付近の山小屋に滞在中に転倒、負傷した。
8月23日(土)、北アルプスの唐松岳で、8人パーティで入山した70歳の男性が、唐松岳に向けて八方尾根を登山中に疲労により、行動不能となった。
8月23日(土)、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した49歳の女性が、槍ヶ岳に向けて北鎌尾根を登山中にバランスを崩して滑落、負傷した。
8月24日(日)、中央アルプスの越百山で、17人パーティで入山した82歳の女性が、千畳敷から越百山に向けて登山中に疲労により行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では20件21人の山岳遭難が発生しました。とりわけ転倒や滑落によって負傷する遭難、疲労や病気によって行動不能に陥る遭難が多発しました。
転倒や滑落による遭難は、遭難が起こる前に小さなスリップや転倒を繰り返していたり、体調不良を自覚していたりしたケースが少なくありません。こうした「ヒヤリ」「ハッと」した体験は、重大な遭難の前触れであることが多く、その時点で一度立ち止まり、
- 気持ちを引き締め直す
- こまめに休憩を取る
- 行動予定を再検討する
といった判断が遭難防止につながります。
また、北アルプスの涸沢や岳沢で発生した遭難は、夜間行動中に装備不足(ヘッドランプ)と疲労により遭難した事案で、救助隊が地上から出動し、幸いにも無事に救助することができましたが、夜間に行動不能となれば救助を待つ間に体温を急激に奪われ、低体温症によって命を落とす危険性もあります。日帰り登山であっても、予期せぬトラブルを想定し、ヘッドランプや防寒着、ビバーク装備を必ず携行するとともに、日没間際の行動を避け、「早出早着」に努めましょう。
8月も、残すところ1週間の時点で、先週までに127件の山岳遭難が発生し、昨年の116件を既に超えてしまいました。今週、登山を計画されている方は、自分自身の登山計画や装備品を見直しを行ない、「無事下山」を合言葉に安全登山を心掛けましょう。
遭難しないためには・・・・・・
- 夏山は天候が急変。雷雨・落雷・気温低下に要注意。「早出早着」が基本!
- 体調不良や天候悪化の場合、計画中止や変更を検討。引き返す勇気を!
- 遭難は下山時に集中。暑さと疲労で体力や注意力が低下。最後まで集中!
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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