超軽量テントを南アルプス縦走で試す! プロモンテ/VEL-10 3S|高橋庄太郎の山MONO語りVol.119
南アルプス縦走でテスト開始
初日は夜半にいくらか雨は降ったが、樹林帯に位置する山小屋近くの草地という、テント場としては好条件。なにも問題なく、気持ちよく眠りについた。
2日目は朝から長々と歩いた。VEL-10 3Sは超軽量テントだけあって、収納時もコンパクト。バックパック内に小さくきれいに収まるのはありがたい。
この日のテント場は周囲に風をさえぎるような木々はなく、完全な吹きさらし。地面も草地ではなく、小石で覆われている。いかにも日本アルプスの高山だ。テント泊を行なう場所としては、初日に比べると環境はだいぶハードである。
初日はテント場が狭くて撮影しにくかったため、あらためてフライシートをかけた状態をここでお見せしよう。
VEL-10 3Sのインナーテントの出入り口はフライシートと同じように三角形に付けられている。
だからテントの開口部は広く、開放感はたっぷりだ。
上の写真のようにテントの出入り口に座る場合、出入り口が狭いテントだと僕は頭がつかえてストレスを感じることもあるが、VEL-10 3Sに関してはまったく問題がなかった。
この日はテント場に到着したあと、断続的に雨が降り始めた。
VEL-10 3Sのフライシートの撥水性はすばらしい。この初期性能としての撥水力がどれほど長持ちするのかはわからないが、定期的なメンテナンスを行なうことが肝要である。
付属しているガイラインは極細で、自在(コードストッパー)も極小だ。だが、テントにテンションをかけて風雨への抵抗力を高めるためには充分そうな強度である。
また、このガイラインは極細なのに硬くて張りがあり、テントの撤収時や収納時に絡みにくかったこともお知らせしておきたい。
フライシートの裾を広げるための短いガイラインもしっかりと機能していた。
フライシートに無用なシワが出ず、雨水の流れは良好だった。
吹き流しタイプのフライシートのベンチレーターは、コードを引き絞って閉じることができる。
大雨や強風のときはこのほうが浸水の恐れが減るのは言うまでもない。
小雨であれば、もちろん開いたままでもかまわない。
形状が少々つぶれても、ある程度の換気が継続されて快適だ。
フライシートとインナーテントのベンチレーターが重なっている状態が、以下の写真。内部から撮影している。
その気になれば内部からも吹き流しを絞ることはできるが、完全に封鎖する場合は外側からのほうが確実ではある。
これと連動する前面のベンチレーターからは外側が透けて見える。
風が入り込みやすく、いかにも通気性は高そうだ。しかし、涼しい時期はこの部分も閉め切りたいと考える人もいるかもしれない。
素材の防水性や換気性の高さには大きな問題はないようだが、少しだけ気になる点がないわけではない。それはフライシートの出入り口で、ファスナーの上を覆っているフラップ部分だ。
このようにファスナー部分にフラップがかかっていれば問題ないのだが……。風が吹いていると、簡単にめくれてしまうのだ。
このような状態になるとファスナーの上に雨水が流れてしまう。無風で小雨程度であればインナーテントを濡らすほどにはならないだろうが、強風で大雨の場合は浸水してくるだろう。他メーカーではこの部分を面ファスナーやバックルで留められるものもあり、実は僕もそういうタイプのほうがもっと安心して使える。
フライシートとインナーテントはバックルで連結する仕組みで、この部分には丈夫なテープが使われている。地面に接する部分も同様の素材で、擦れに強くて安心感が高かった。
ただ、この部分は水を含みやすく、乾燥するまでに時間がかかる。自宅で保管する際は、この部分が完全に乾燥するように気を付けよう。
2泊目のテント場の地面は、土というよりも小石。そこでグラウンドシートを組み合わせて使用した。VEL-10 3Sのインナーテントのボトムは透けるように薄いので、このような地面のときにはグラウンドシートを使わないと、すぐに傷んで地面の水が浸透してくるだろう。
とはいえ、ボトムにできるだけ穴が開かないように丁寧に使えばいいという考え方もある。しかし、少なくても僕は、小石だらけのテント場でVEL-10 3Sのような超薄手素材のテントを張る場合、グラウンドシートを併用しないと怖くて仕方がないのであった。だが、このグラウンドシートをテントと組み合わせて使えば約1016gになり、超軽量なVEL-10 3Sの優位さは少々失われてしまう。
このような問題はVEL-10 3Sに限らず、どのような超軽量テントにも言えることだ。10Dのボトムのインナーテントと30Dのグラウンドシートを併せて使うくらいなら、あらかじめインナーテントのボトムが30Dで作ってあるほうが安心だし、設営時にわざわざ重ねる手間が減って便利なのに、と僕はいつも考えてしまう。もちろん、初日のような草地の地面であれば10Dのボトムでもよく、結局はユーザーがどんな場所で主に使うかによって必要とされるボトムの強度が変わってくるのではあるが。
ところで、フライシートが生み出すVEL-10 3Sの前室は、いちばん奥行きがある場所で30cm。ひとりで使う分には過不足ないスペースだ。
上の写真は雨が降っていたときの前室の状態だが、シューズやサンダル、クッカーなどを置く分のスペースは充分に確保できていた。ただ、フライシートの裾の近くにある道具はやはり濡れやすい。このときも雨が強くなってきたときには、クッカーとバーナーは収納し、シューズ類は濡れないようにもっとフライシートから離れた位置に移動した。
幸いにも短時間で雨はやみ、夜が訪れた。
フライシートからの浸水は一切なく、地面からの浸透もなく、テント内は完全にドライ。この日のテント泊も快適そのものである。
暗闇のなかでトイレに行って戻ってくると、ガイラインの近くに付けられているリフレクターが光っていた。
細かい点だが、テントの場所がすぐにわかって便利だ。
自在も淡く光っていた。こちらは光を反射するのではなく、蓄光性の素材が使われている。
光を蓄える時間が短かったからか明るさは控えめだったが、これもまた役立つ工夫だ。
3日目も稜線を縦走し、いったん谷間に下がって、テント場に到着。
天気予報によれば、翌日はかなりの悪天候だった。そこで、ここで連泊して4日目をやり過ごし、結果的に最終日となる5日目に備えることにした。
実際、4日目はなかなかの大雨だった! 雨が降っている間はとても外に出ようと思える状態ではなく、ただただテント内で耐え忍ぶのみ。半分の時間は読書をして、残り半分の時間は昼寝していた。
テントと周囲の地面へ叩きつけるように降る雨は、フライシートが覆っているにもかかわらず、インナーテントに泥を跳ね上げた。高さ30cm以上も泥で汚れてしまったのだから、相当な雨であったことがわかる。
だが、撥水性が高いインナーテントの生地は水分を浸透させず、テント内の濡れはわずか。大事なものはドライバッグに入れるなどして浸水に備えていたのだが、大したものだ。さすがに使い続けていればこれほどの撥水性はなくなっていくのだろうが、少なくても今回はとても助かったのだった。
まとめ:オーソドックスかつ超軽量なテント
そんなわけで、悪天による停滞を含む4泊5日、それぞれに状況が異なる3カ所のテント場で試してみたVEL-10 3S。初日はまだしも、地面が小石だらけで吹きさらしの2日目、そして大雨だった3-4泊目を経験したことで、僕はVEL-10 3Sの実力をだいたい把握できたように思えた。
先に述べたように、VEL-10 3Sは基本的にはオーソドックスな山岳用テントだ。日本のメーカーだけあって雨が多い日本の山で使いやすく、今回も午後になると毎日のように降る雨の中でも快適に過ごせた。なにより、毎日バックパックに入れて背負って歩くに当たり、この超軽量性はやはり大きなメリットを持っている。さすがは1kgを切るテントだ。
しかし、形状や基本設計こそオーソドックスではあるが、“超軽量”に作られていることを忘れていけない。使用素材は薄く、ポールも細いので、うかつに扱って破損しないようにそれなりに配慮して使用する必要がある。シンプルで設営も簡単ゆえに、その点では初心者に適しているが、実際はある程度の経験を積んだ人が、超軽量ゆえの弱点を踏まえて使用するのが現実的かもしれない。
今回のテストでは降雨への強さは実感できたが、風はそれほど強くはなかったため、強風下での耐久性はわかりかねた。取扱説明書によれば、“風速15m/秒”を超えると破損する可能性がある“とのこと。機会があれば、そんな状況でもあらためて試してみたい。
今回のPICK UP
プロモンテ
VEL-10 3S
| 重量 | 約895g(本体、フライシート、ポール) |
|---|---|
| 価格 | 61,600円(税込) |
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!
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