“酷暑”期は日常生活で疲労が蓄積、体調を整え入山を! 島崎三歩の「山岳通信」 第119号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2018年8月1日に配信された第119号では、29件の遭難事例を紹介。晴天かつ酷暑が続いた7月後半は多くの体調不良による遭難が起きたことについて言及している。

 

8月1日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第119号では、7月10日~22日に起きた29件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月10日、中央アルプス将棊頭山で、66歳の男性が将棊頭山から下山中に道に迷い救助要請する事象が発生。遭対協で捜索を行っていたところ、遭難者は自力で山小屋に到着した。

  • 7月11日、北アルプス白馬岳で、19歳の男性および20歳の女性(いずれも外国人)が白馬岳から猿倉へ向けて大雪渓を下山中、大雪渓上部の小雪渓付近で装備および技量不足のため滑落し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊が同行して下山した。

  • 7月13日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、59歳の男性が鹿島槍ヶ岳からキレット小屋へ向けて縦走中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。遭対協隊員により救助された。

  • 7月14日、下伊那郡阿智村大川入山で、57歳の男性が大川入山へ向けて単独で登山中、転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月14日、北アルプス燕岳で、58歳の女性が餓鬼岳から燕岳へ向けて単独で縦走中、疲労及び体調不良のため行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月14日、北アルプス白馬乗鞍岳で、66歳の男性が白馬岳から栂池へ向けて下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月15日、北アルプス前穂高岳で、50歳の男性が奥又白池から北尾根4峰へ向けて登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月15日、北アルプス槍ヶ岳で、50歳の男性が大天井岳から槍ヶ岳へ向けて東鎌尾根を縦走中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月15日、金峰山廻目平付近で、47歳の男性が金峰山廻目平にある屋根岩でのロッククライミング中に転落・負傷する山岳遭難が発生。救急隊により救助された。

  • 7月15日、北アルプス前穂高岳で、68歳の男性が前穂高岳から上高地へ向けて下山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月15日、北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根で、登山中の登山者から北アルプス槍ヶ岳の斜面で倒れている人を発見したと警察に通報があり、翌16日に県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。男性は36歳で、北鎌のコル付近にで何らかの原因により滑落したものと考えられる。

  • 7月16日、北アルプス常念岳で、38歳の女性が常念岳から下山中に足を滑らせて転倒、右足を骨折する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月16日、北アルプス白馬岳で、64歳の男性が白馬岳から猿倉へ向けて大雪渓を下山中、疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。遭対協夏山常駐パトロール隊および県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 7月17日、八ヶ岳連峰硫黄岳で、47歳の女性が下山中・八ヶ岳連峰硫黄岳赤岩の頭付近で浮石でバランスを崩して転倒、足首骨折の疑いの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助され病院に収容された。

  • 7月17日、中央アルプス越百山で、35歳の男性が越百山の東側斜面を登山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月18日、北アルプス槍ヶ岳で、29歳の男性が疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月19日、北アルプス奥穂高岳で、72歳の男性が奥穂高岳山頂から下山中に段差で足首を捻り負傷する山岳遭難が発生。夏山常駐パトロール隊員が付き添って下山した。

  • 7月19日、北アルプス爺ヶ岳で、12歳の女性が学校登山で爺ヶ岳へ登山中、体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月19日、北アルプス北穂高岳で、74歳の男性が北穂高岳山頂から下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。夏山常駐パトロール隊員が合流し、夜間だったため翌20日に県警ヘリにより救助された。

  • 7月20日、北アルプス槍ヶ岳で、69歳の女性が槍沢を下山中にバランスを崩し転倒・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

北アルプス槍ヶ岳・槍沢での山岳遭難箇所(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月26日付)
  • 7月21日、北アルプス常念岳で、22歳の女性が常念岳へ向けて登山中、体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月21日、北アルプス北穂高岳で、85歳の男性が北穂高岳へ向けて登山中、南稜の鎖場付近で滑落、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月21日、北アルプス白馬乗鞍岳で、58歳の男性が栂池に向けて下山中に雪渓上でスリップし滑落・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月21日、八ヶ岳連峰の南沢で、70歳の男性が美濃戸口へ向けて南沢を下山中につまづいて転倒、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月21日、北アルプス常念岳で、82歳の男性が常念岳山頂から下山中にバランスを崩して転倒、負傷する山岳遭難発生。県警ヘリにより救助された。

  • 7月22日、飯田市南信濃梶谷川で、渓流釣りのため梶谷川沿いの山林内に入山していた65歳の男性が道に迷い行方不明となる山岳遭難が発生。警察・消防で捜索を実施し、男性は無事発見された。

  • 7月22日、志賀高原裏志賀山で、10歳の男性が裏志賀山から下山中に浮石でバランスを崩し転倒、負傷する山岳遭難が発生。防災へりにより救助された。

  • 7月22日、北アルプス蝶ヶ岳で、58歳の男性が下山中に足を滑らせて転倒、負傷する山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 7月22日、北アルプス燕岳で、9歳の男性が燕岳へ向けて登山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。山岳遭難防止対策協議会の救助隊員により救助された。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月2週は、13件発生し、うち1人が原因不明の滑落により亡くなるなど、転・滑落、転倒による遭難が9件発生しました。
転・滑落、転倒による遭難は、疲労や集中力の低下等により発生しやすくなります。登山前日には、十分な睡眠をとり、登山中は、こまめに休憩や水分補給をしてください。
また、登山日の天候、体調などにより行程を変更することも遭難防止のためには重要となりますので、無理のない余裕を持った登山を心掛けてください。

7月3週は、16件の山岳遭難が発生し、そのうち転倒による遭難が7件発生しました。7件ともすべて下山中に発生しています。下山は登りよりも足運びが不安定になり、さらに足腰に疲労が蓄積されているため、バランスを崩しやすい傾向にあります。下山こそ慎重に慌てずに行動しましょう。
また、発病(体調不良)や疲労による遭難も5件発生しています。発病や疲労遭難は体調管理や行動中の栄養・水分補給を改善することで、予防ができるケースが多く見受けられます。
特に酷暑期は日常生活で疲労が蓄積していることが多いため、入山前の体調管理をしっかりと行い、行動中は計画的な補給を心がけましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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