「山歩きしながらの植物写真撮影」に向いた、オススメのカメラとレンズ

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図鑑に載っている写真のように、植物を撮影するのは意外と難しい。うまく撮影するには、やはりカメラ機材にも気を使いたい。今回は、植物写真に向いたカメラについて説明する。

 

だんだん、春の足音が聞こえるようになり、足下には小さな花が咲き始めている。そこで、今年(2019年)こそ山歩きしながらの写真撮影に本腰を入れてみようという方に、おすすめのカメラを紹介する。

植物写真に向いたカメラというのはけっこう難しい。デジタルカメラはオートで動くことが基本だが、その基本設定は風景や人物を撮ることに重きを置いているからだ。植物撮影用のカメラというものはない。このため、できる限り植物写真に向いたカメラシステムを自分で組む必要があり、これがけっこう難しい。今までいろいろなカメラを試し、知り合いなどに何台もオススメした中で、私は「これがよい」と思ったものを紹介する。

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基本的な法則では、山では1gでも軽いほうがよい。しかし、より高画質には大きく重いほうがよくなってくるため、バランスが必要だ。最終的には、フルサイズと呼ばれる比較的大型なカメラに焦点距離100mm前後のマクロレンズを付けて撮るのが王道だが、大きく重く高価なので、最初はもっとコンパクトで軽いものから始めたほうがよいだろう。

私は数台のカメラとレンズを持っているが、撮影する場所、天気、花の大きさなどによって組み合わせを変えて撮影に持っていく。

 

気軽に雨の日に撮影するなら・・・

山は雨の日も多い。雨の日の撮影に向いた防塵防滴カメラもあるが、防塵防滴のカメラは一般的に重く、また価格も高いことが多い。そこもバランスが必要になってくる。防塵防滴についてはあったほうがよいのだが、雨の日にどれだけ撮影するかにもよるだろう。

私は雨でもガンガン撮影する方だが、雨具を着て、さらにレンズを水滴で濡らさないように撮影するのは高度なテクニックと体力が必要だ。防塵防滴ではないカメラとレンズを使う場合は、簡単に壊れるものではないが、雨の日は濡らさないように注意が必要だ。

写真初心者の方に、まずおすすめするのが、コンパクトデジカメのオリンパス「TG-5」だ。オリンパスがこのカメラを「タフ性能」と称しているように、水中でも使えるような防水性能があり、山で雨に降られても全く問題ない。

「フラッシュディフューザー FD-1」を付けたオリンパスTG-4


そして、このカメラの特徴はなんといってもマクロ撮影に特化していることだ。「バリアブルマクロシステム」とオリンパスは名付けているこの機能について簡単に説明すると、様々なマクロ撮影が可能なカメラ本体とオプションのアクセサリーを組み合わせて、驚くほどの高倍率から適切な撮影が選べるシステムが構築できるのが特徴だ。私が主に使っているのは顕微鏡モードで、小さなものを顕微鏡のように大きく写すことができる。

ただし、大きく写すと手ブレしやすいし、ISO値が上がってしまい画像が荒れるのが難点だ。それを防ぐためにフラッシュを光らせるのだが、普通にフラッシュ光を当てようとすると影になるし、影が強くなって暗い印象になってしまう。

そこで必要なのが光を柔らかくして、全体に光を回すことができる「フラッシュディフューザー」というもの。これは簡単にTG-5に付けられるが、外れてしまうこともあるので、私は簡単にテープで止めている。これで撮れば、だいたいうまくいく。

撮影の際には、カメラのモードダイアルを顕微鏡マークに合わせて、フラッシュディフューザー FD-1を付けて、花にカメラを向けて、ズームレバーで拡大し、シャッターを押すだけ。簡単である。

超クローズアップ撮影が簡単に撮れるカメラは、世界にこのシリーズしかない。また、マクロ撮影になると浅くなりがちなピントを、何枚か撮影した画像の中でピントが合っている部分を一枚の画像に合わせる、カメラ内深度合成撮影ができるのも魅力だ。超マクロ撮影でも高解像の画像が得られる。

現在はTG-5が販売されているが、私は以前のモデルのTG-4を使っており、このカメラでも問題ない。歩きながらでもポケットに入れられるので、さっと取り出して撮影簡単に撮影できる。雨にも強いし、TG-5は山で植物を撮るのに向いた真のフィールドカメラだ。

 

一眼レフで美しく撮りたいのなら・・・

コンパクトデジカメよりもより美しい画像で、周囲をぼかして、花だけをくっきり撮りたい、となってくると軽量なミラーレス一眼デジカメが必要になってくる。コンパクトデジカメと一番違うのが、レンズが交換でき、センサーが大型なことだ。いろいろな選択肢があるが、ここでは小型・軽量で使いやすいキヤノンのミラーレスカメラシステムを紹介する。

私はキヤノンのミラーレス一眼のEOS M3を使っている。小さく軽くシンプルなカメラだ。現在ではキヤノンではEOS M6、M5などのカメラがあり、EOS Kiss Mがキヤノンの初心者向きミラーレスカメラだが、どれでもいいだろう。

キヤノンEOS M3 と EF-M28mmマクロIS STM。レンズ先端の白い分部がLED ライトだ


山歩きしながら撮影する植物写真に特化すると、これらのカメラにセットするのが28mmマクロレンズだ。小さな花から大きな花まで、色々撮ることができる今までにない面白いマクロレンズで、レンズの先端にはLEDライトが付いているのが特徴だ。ライトはそれほど明るくないが、超アップ撮影をするときには、近寄りすぎた時に出やすいレンズの影が少なくなり、手ブレも少なくなるメリットもある。

28mmマクロレンズには「ハイブリッドIS」と呼ばれる手ブレ補正システムがあり、マクロ撮影でも手ブレ補正がきく。レンズを花に近づけて撮影することもでき、コンパクトデジカメやスートフォンに近い感覚で撮影することもできる。手持ちで撮影できるので、色々な角度から花を撮影でき、自由がきくし、撮影も速くでき、三脚も不要(できればあった方がいい)。

マクロレンズは、ただ花などを大きく写すためのレンズではない。普通に景色の撮影も可能だ。28mmマクロレンズがあれば、風景も人物もたいてい撮影でする。標準ズームレンズがれば、山の風景も撮影できる。100mmマクロレンズも付けられるので、ボケを利用した立体感のある撮影も可能だ(その分レンズが大きくなるが・・・)。

それぞれのカメラで撮影した写真を以下に紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

オオイヌノフグリ、TG-4でもここまで大きく撮れる。フラッシュディフューザー FD-1使用

オオイヌノフグリ、TG-4のカメラ内深度合成モードで撮影

EOS M3で撮影したオオイヌノフグリ

TG-4ならハコベもこんなに大きく写る。手持ち撮影

EOS M3で撮影するとハコベはこのくらいの大きさには撮影できる。手持ち撮影

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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