残り花を楽しむ。花の少ない時期に咲く「リンドウ」

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低山にも氷の花が見られるようになりましたが、まだまだ見ることができる花があるそうです。植物写真家の高橋修さんが今シーズン最後の花を教えてくれましたよ。

初冬の枯れ草が茶色になり始めた低山に、ごろりと横たわるような青い花を咲かせるリンドウ。山で咲く一年で最後の大きな花である。この花を見ると、今年の花のシーズンも終わりだな、と感慨深く思う。とてもきれいな花で、よく見ると花弁に濃い緑色の小点がある。花冠の先端は、大きく5つに分かれ、一見星形に見える。

リンドウの根はとても苦く、健胃効果があるため生薬として使われた。生薬名「竜胆」(りゅうたん)」がなまってリンドウになったといわれる。

花は日が当たると開き、天気が悪くなると閉まる。花は筒状で上を向いて咲く。少しでも雨が降ると、雨水が花の中にたまってしまうからだ。リンドウは思ったよりも忙しい。

リンドウは花としては寿命が長く、何日も元気に咲いている。咲きたての時は雄状態。雌しべは雄しべに隠され、盛んに花粉を出している。花粉が出なくなるころ、雄しべはしわくちゃになる。男いや雄しべが弱くなったのと反対に、雌しべは伸びて先端が受粉できるように先端がパクッと開く。これは自分の花粉が雌しべに付かないようにするための、自己受粉を避ける仕組み。花が時間差で性転換をするようなものである。このようなシステムはけっこう多くの植物にもあり、一人時間差性転換と私は勝手に呼んでいる。植物は非常に複雑な生活システムを構築しているのだ。

毎日花が開いたり閉じたりして動き、性転換をする、リンドウはおとなしく見えてずいぶん活発な生き物(植物)なのである。

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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