「フィッティングのよさはもちろん、工夫が随所に込められていて秀逸!」全天候型アウトドアライターのホーボージュンさんが、グレゴリーの「BALTORO(バルトロ)」を語る!

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文=佐藤慶典、写真=亀田正人、協力=ホーボージュン、サムソナイト・ジャパン

『山と溪谷』の「ギアテスト&レポート(GTR)」ページでもお馴染み、登山やアウトドアの雑誌でよく目にするアウトドアライターのホーボージュンさん。昨年アップデートされたグレゴリーのハイエンドモデル「BALTORO(バルトロ)」について聞いた。

 

『山と溪谷』の「ギアテスト&レポート(GTR)」ページはどのように作られる?

アウトドア専門誌やWeb媒体で活躍するホーボーさん。特に『山と溪谷』では、長年に渡りギアインプレッションページ「山岳装備大全」や「21世紀山道具」の執筆を担当し、現在も連載「ギアテスト&レポート(GTR)」が継続中だ。GTRはどのようにページ作りが行われているのだろう?

「まず、1年分(12回分)のネタ出しをします。何月にどんな商品群を取り扱うのか。たとえば5月売りの6月号ではレインウェア、8月号では大型バックパックといった具合に、編集者とも相談して、予め取り扱う商品群を決めます」

最新アイテムをフィールドテストする『山と溪谷』の人気連載「GTR」


その後は、各月に取り扱うアイテムの選定に入るが、これが悩みどころだという。

「昔のギア連載のときは、一回に十数種類のアイテムを紹介していたので、わりと選定はしやすかった。でも、それだと内容が広く浅くなってしまう。ページ数も限られた中、より深く掘り下げたインプレッションの誌面にするため、現在の一回に5アイテム程度に落ち着きました。数多あるアイテムの中から、たった5つしか選べないわけだから、悩みますよね」

そのとき、旬なもの、機能が優れているもの、特化したもの、読者が興味をもちそうなものなど、さまざまな要素を加味し、選定しているという。機能や用途が似ていて、落とさざるをえないもの、まだ完成品がなく、メーカーからの貸し出しが間に合わないものなど、タイミングが合わず、インプレッションに至らなかったアイテムも少なくないという。

「掲載するアイテムは、実際のフィールドでできるだけ長く使い、自分なりに気づいたことを原稿に起こします。『撮影のときだけ試してみて……』ってことはせず、少なくとも3週間くらい、長いときは6週間以上アイテムを借りて、各地での取材やプライベートで試用しています」

GTRは一日にして成らず、なのだ。

GTR撮影の合間に(写真=中村文隆)

 

「グレゴリー」というブランドについて

長年、GTR等でアウトドアギアのインプレッションを行なってきたホーボーさん。「グレゴリー」というバックパックブランドに対してどんな印象を持っているのだろうか?

「誰もが言うように、『フィッティングのよさ』が挙げられますね。また、オントレイルでの経験値が他社とぜんぜん違います。たとえば、『このストラップが取り外せれば』とか、『こことここのバックルがオスメスになっていれば、何かホールドできるのに』とか、そういった要望が満たされています」

デザイナーの頭の中だけではなく、フィールド、つまりトレイルや旅を通して生まれてきたアイデアが随所に詰め込まれているのだ。実際にグレゴリーを使ってみると、かゆい所に手が届くかのように、『こうなっててよかった。グレゴリーは、分かってるな~』と思うことがよくあるという。

「これまで積み重ねてきたノウハウとテスターからのフィードバックをしっかり反映、融合していることがよく分かります。昔は、最上級のフィッティングを持つ『バックパック界のロールスロイス』などと評されましたが、現在はフィッティングだけではないですよね」

 

フラッグシップモデル「バルトロ」の耐久性

最新のバルトロ65を背負うホーボーさん。「長く背負っても疲れにくいね」


バルトロを愛用しているというホーボーさん。その耐久性について聞いてみた。

「昔は、トリコニ60を愛用していました。それ以前は、国内外の70リットル以上のバックパックをいろいろ使っていましたが、トリコニに変えるにあたり、60リットルに入る荷物しか持たないようにしました。ちょうどウルトラライトの流行りはじめのころでもあり、それが可能になりました」

その後は、トリコニからバルトロ65に乗り換え。バルトロでは、香港のトレイルやマレー半島の最高峰、モンゴルでの登山、サハリンまで船で渡り、そこからのトレッキング、南アルプスの縦走や北アルプスの登山にも使用しているという。

「最新モデルは、まだ長くは使ってないのでわかりませんが、前モデルは壊れるといったことはありませんでしたね。海外なんかで、預け荷物でバンバン投げられるといった想定外の衝撃を受けないかぎり、普通に使っていて壊れる可能性は少ないでしょうね」

 

バルトロの特長

旧バルトロのアイコンでもあった縦ジッパーの大型フロントポケットが、最新モデルでは、ストレッチメッシュポケットに変更された。

「旧型の縦ジッパーポケットは、レインカバーやレインウェアなどのオントレイルで使うものがまるごと入れられて気に入っていたので、メッシュポケットへの変更はちょっとがっかりでした。でも、これが実に使いやすい。メッシュポケットの後ろには、両サイドからアクセスできるツインポケット仕様になっています。つまり、メッシュと両サイドの計3つのポケットを備えたフロントポケットに進化していたのです」

右のサイドポケットにはレインウェアの上下、反対にゲイターとレインカバー、メッシュポケットにシェルや帽子などを入れるなど、これまでよりも、オントレイルで使用するものを整理してパッキングできているという。

ストレッチメッシュポケットの下にもツインポケットを装備


ショルダーハーネスとヒップベルトの角度が自動で調整されるオートフィット機能をもつ「レスポンスA3サスペンション」もバルトロの特長と言える。

「ショルダーハーネスとヒップベルトが、個人の体形に合わせ、また、体の動きに合わせて、左右独立して上下に自由に動くのも特長ですね。重心が常に体のセンターになり、歩行時のブレが抑制され、軽い背負い心地、疲れにくさを実現します。ショルダーハーネスは、2段階で取付位置を変更できますが、最新モデルでは、より簡単に位置を変更できるように改良されています」

丸い点の部分を軸にショルダーハーネスが左右独立して上下に動く


バックパネルも改良されている。

「バックパネルは大胆に肉抜きされたメッシュ仕様となり、よりベンチレーション機能が増し、熱抜けがよくなりました。また、ショルダーやヒップベルトの内側もメッシュ仕様になり、通気性がアップしています。一方、腰が当たる部分には、滑りにくい加工を施し、バックパックがズレないようにしています。これまでよりも、肌に当たる部分の快適性、通気性の向上が実感できます」

通気性と熱抜けがよくなったバックパネル。腰が当たる部分はシリコン加工されている

 

お気に入りのポイント

「ハイドレーション用のスリーブは、取り外してアタックザックとして使えるようになっています。これがよくできていて、上部にはポケットがあり、財布などの小物が入れられます。フロント部分にはデイジーチェーンがあり、カラビナやバンジーコードなどを使えば拡張可能です」

テント場に着いてから、アタックザックでハイキングしたり、水汲みしたり。海外の山行では、機内持ち込み手荷物として、中継地となる町を散策するときのデイパックとしてなど、多いに役立ったそう。

生地はリップストップ加工済みで耐久性がある。本体ボトムのストラップを取り外し、アタックザックのウエストベルトとして流用


ストレスなく使用できるシステムもお気に入りのポイントだという。

「荷室は2気室構造で、ボトムアクセスが可能です。僕は、テントやマットを入れておいて、テント場に着いたらすぐにテント設営できるように工夫しています。ただ、2気室構造とは言っても、ファスナーなどで完全に仕切るタイプではなく、生地をフックで掛けて簡易に仕切るタイプなので、テントポールなどの長尺ものが入れやすい。不要なら、取り外して、1気室での利用もできます」

仕切りとなる生地は小さめ。そのため、長尺ものも内部に収納しやすい


「メイン荷室の巾着部分の開け閉めがとてもスムーズに行えるのもいいですね。長期の山行や旅の場合は、何度も行う作業なので、ストレスなく行ないたい。巾着を閉めるときは、片手でループを持ってコードを引っ張るだけ。開けるときは、引手を左右に広げるだけでスムーズに口が広がります。素早く荷物の出し入れやパッキングを行なうことができます。」

とてもクイック&イージーに開閉できる巾着。グローブをしていても扱いやすい

 

その他の機能や工夫

「フロント部には、逆U字ジッパーがあり、本体を床に横置きにして、ガバっと開くことができます。テント内で縦置きでパッキングしにくいときなどは便利ですね。ダブルスライダーなので、メイン荷室へのサイドアクセスとしても利用できます」

本体の3/4ほどまでガバっと開く逆U字ジッパー


「本体の右側には、ナルゲンボトルが入るボトルホルダーがありますが、この角度が秀逸。背負ったままでも取り出しやすい設計です。また、ハイドレーションを使う人など、ボトルホルダーが不要な人のため、収納可能となっています」

ボトルホルダーはやや前傾して取り付けられている(1枚目)。使用しないときは本体へ収納可能(2枚目)


「そのほか、①雨蓋がツインポケットになっていたり、②トレッキングポールホルダーのコードが収納できるようになっていたり、③コンプレッションストラップのバックルが左右でオスメスになっていて、フロント部へストラップを回して物を固定できたり、④ボトム部のストラップは取り外し可能で、アタックザックのウエストベルトに流用できたりと、細かいところまで工夫が施されています。よく考えられたバックパックですよ」

非常に満足のいく仕上がりのバルトロだが、いくつか改善してほしい点があるという。

ひとつは、ヒップベルトを締め上げたあとの余ったストラップが長いこと。これは欧米人との体格差があるので致し方ないのかもしれない。

「もうひとつは、右側のヒップベルトポケットをもう少し大きくしてほしいこと。iPhone10を入れようとすると、けっこうキツキツで……。次のモデルでは、楽に入れられるようになっていてほしい」

次モデルでのヒップベルトポケットの拡大に期待したい!

 

グレゴリー バルトロ GREGORY BALTORO

グレゴリーの大型バックパックのハイエンドモデル。背面システムが改良されて、動きやすさ、フィット感、通気性が向上。男性モデルは「BALTORO(バルトロ)」、女性モデルは「DEVA(ディバ)」。

バルトロ65
価格
39,000円(税別)
サイズ
3サイズ(S、M、L)
容量
65リットル(M)
カラー
2色
重量
2490g(M)

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プロフィール

ホーボー ジュン

大学生のころにスポーツグラフィック「Number」への寄稿をきっかけに執筆業の世界へ。ペンネームの「ホーボー(HOBO)」は英語で「放浪者」の意。20代で、400日をかけてユーラシア大陸を横断。その後もパリ~ダカールラリーへの出場や、自転車による南米大陸縦断、シーカヤックでの外洋航海、6000m峰の高所登山など、フィールドを選ばず旅を続けている。著書に『山岳装備大全』(山と溪谷社)や『実戦主義道具学』『実戦主義道具学2』(ワールドフォトプレス)などがある。

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