高性能なパラボラアンテナを持つ、孤高で難易度が高い花・フクジュソウ

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春を感じる日がだんだんと増えてきましたね。今回は「春の使者」とも呼ばれるあの花について、植物写真家の高橋修さんが詳しく教えてくれました。

 

漢字で書くと福寿草。とてもおめでたい名前は、元日を祝う花としてその名が付いた。

フクジュソウは、夜は花が閉まっていて、よく晴れた暖かい日に、太陽が花に当たるとやっと花開く。花弁は黄色で光をよく反射してピカピカして上を向いて咲く。

太陽の方向を向いて動きさえする。暖かい太陽光線はピカピカの花弁に反射して、雄しべや雌しべに集められ、温度が上がる。雄しべは花粉を作り、雌しべは種子を作る。寒い冬から早春に咲くフクジュソウは、自分自身を温めているのだ。

太陽光が反射されやすい黄色い花弁。


フクジュソウは蜜を出さないが、花粉をたくさん作り、アブやハチ、ハエなどの花粉を食べる昆虫を呼び寄せる。訪れた昆虫にしてみれば、暖房付きのサービスのよいレストランといった感じなのである。食べられずに昆虫の体に付いた花粉は、別の花に移動した昆虫によって移動し、受粉する。

 なぜこんな寒い時期に咲くのか。これには理由がある。早春は落葉樹の葉がなく、フクジュソウは太陽光線をいっぱい受けることができるし、花の種類数が少ないために競争相手が少ないから。孤独が好きな花なのだ。

フクジュソウの群落


近年まで、日本のフクジュソウは一種類だけとなっていたが、最近は4種類に分類された。フクジュソウ、キタミフクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、シコクフクジュソウの4種類である。

名前を付けたのはいいが、ミチノクフクジュソウは東北地方だけでなく九州にもあるし、関東にはミチノクフクジュソウの両方がある。混生していないのでまだまし。シコクフクジュソウは四国という名があるが本州でも確認された。

見分けるポイントは、花の外側部分の総苞片と花弁の長さの差、果実の形、葉の裏の毛の有無など。見分けのポイントは地味で、植物に相当の知識がないと見分けることができない。なんとも難しい植物である。

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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