こんなときには身近な街中散歩で、花登山のためのトレーニングをしよう!

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外出がはばかれる昨今だが、家に閉じこもってばかりでは健康にはもちろん、精神衛生上も好ましいものではない。外に出れば、街でもたくさんの花が咲き始めている。そんな花の姿を見ながら、少し体を動かしてみてはいかがだろうか?

 

道端の草地をちょっとのぞいてると・・・、さまざまな花が咲いている


あまり大人数が集まる場所は避け、遠くに出かけないようにしている人が増えている状況だ。しかし家の中にずっと閉じこもっていたら、健康によくないし、気分もすぐれない。近所に山があって他人との接触なしで山に行ける環境ならいいのだが、なかなかそうもいかないだろう。

そのような時は、近所の散歩をしながら、野生の花探しをしてみるのはどうだろうか。実は3月下旬~4月上旬は街中の野生植物の花盛りになる時期でもある。野生植物はコンクリートの割れ目、公園、道路の並木の地面など、たくさんの場所に生え、元気に咲いている。

早春の街中は実は帰化植物が多い。地中海沿岸は都会のように冬も暖かいことが多く、冬の間に葉を展開させて大きくなって、早春一番に花を咲かせるという生き方をしている植物が多いからだ。オオイヌノフグリ、ホトケノザなどが地中海植物の典型だ。

早春の代表的な花、オオイヌノフグリは群落になてって咲いている


こうした草花は「オランダフウロ」などオランダの名前がついているものも多いのだが、オランダ原産というわけではない例も多い。江戸時代はオランダしかほぼ海外貿易を行っていなかったことと、ヨーロッパの植物について知らなかったため、ヨーロッパからやってきた植物に適当に「オランダ」と名付けただけだという。

 

近寄ってみたら、オランダミミナグサの花が咲いていた(左)/オランダフウロの美しい花が咲いているのも確認できる


ナガミヒナゲシなどを除くと、早春に咲く植物は、タンポポ以外ではオオイヌノフグリをはじめ、キュウリグサなど小さい花ばかりだ。小さな花は見分けるのが難しいが、早春の花はあまり種類数が少ないので、まだ見分けやすいシーズンでもある。

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小さな植物を見分けるのにおすすめの図鑑を紹介しよう。まずは山と溪谷社の山溪ハンディ図鑑(あまりハンディではないが)の「野に咲く花/写真・平野隆久」である。少し大きく重いが、多くの街中や野原でみられる植物を網羅し、クローズアップ写真も多用し、見分け方も詳しく書いてある。

初心者向きには手前味噌で申し訳ないが、ナツメ社の「色で見分け五感で楽しむ野草図鑑/写真:高橋修」である。初心者向けにわかりやすく植物を解説し、種数を絞った。ひとつの種に対しひとつずつコラムがあり、ひとつひとつの植物に対しより覚えやすい本にしたつもりだ。

まずは図鑑を片手に散歩しよう。今まで無味乾燥のようにしか見えなかった都会のコンクリートジャングルが、実は花いっぱいの自然世界に変わって見えてくるだろう。

 

道端に広がる植物の群落や、電信柱の横を見ると野生植物が元気に育っている


せっかく花が咲いているのだから、写真を撮ってみたくなるのは普通だ。しかし小さい花は撮影が難しい。このような難関に挑戦し撮影することは、カメラの使い方に慣れるためにも必要だ。冬の間はあまり植物の撮影をしなくなり、カメラが手になじんでいないことが多いからだ。

小さな花はピントを合わせにくいし、撮影倍率が上がると手ブレもしやすい。植物写真というものは、手振れと、ピントとの戦いでもある。これを早めに克服するのが春の花を撮影するときに大きなアドバンテージになる。

植物写真はどんなカメラでもいい。もちろんスマホでも、ある程度大きい植物なら撮影可能。キュウリグサなどあまりに小さい植物は苦手だが・・・。とにかく撮影してみるよう。

また、街中を歩くだけでも山のトレーニングになる。10000歩も歩けば十分な量である。さらに小さな花を見るためには、そのためには腰を落とすことになる。そして不安定な体制で植物を撮影することはバランのトレーニングになるし、何度もスクワットのような運動になり、これもよいトレーニングになる。

ザックを背負って、負荷をかけるのも有効だ。重い荷物を背負ったまま行う運動は登山以外にはない。ザックを背負う筋肉も常に負荷をかけてトレーニングする必要がある。

 

セイヨウタンポポやシロバナタンポポ(写真左)や、ハナニラの群落の花が開いている


このように、山に行かなくても、街中や、田舎道を歩くだけでも、山のトレーニングはできる。人込みを避け、風通しのよい野外で、ひとりか少人数で花散歩をして、楽しみながら体調を整えよう。

家にこもってばかりでは体力がどんどん落ちていく。来る、本格的な夏山シーズンに備えて、少しずつ体を慣らしていこう。いつかまた遠くない時期に、また山にいつも通り登れる日を信じていこう。

 

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プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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