緑に広がる草原に、輝く池塘、咲き乱れる花たち――。天上の湿原へ

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山上に広がる幻想的な景色と、湿原に生きる草花や生き物を愉しもう

緑に広がる草原に、ところどころに水を満たした池塘が輝き、ミズバショウやニッコキスゲが咲き乱れる。湿原と聞くと、そんな風景を思い浮かべるだろう。

湿原とは文字通り、湿った地面に広がる草原地帯のことだ。尾瀬の尾瀬ヶ原が代表例で、日本各地さまざまな場所に湿原は広がっている。

湿原の代名詞的存在の尾瀬ヶ原(写真:funa さんの登山記録より)

ちなみに、学術的な言葉の定義で言うと、ただ湿った土地に広がる草原は「湿地」で、長い期間を経て成立した湿地を湿原という。

また、「高層湿原・低層湿原」という言葉をよく聞くが、これは標高の高さ・低さとは関係なく、枯死した植物が腐らずに残る泥炭の堆積具合の違いだそうだ。高層湿原とは、ものすごく簡単に説明すると「泥炭が蓄積して中央部が周囲より凸状に高くなり、地下水ではなく雨水などで水が供給されている湿原」という定義となる。

「腐らず泥炭化」する条件といえば寒く標高の高い場所。湿原の多くは標高の高い場所でに広がり、その特異な環境から、貴重な植生が育つ場所として知られる。

乳頭山と田代平湿原(写真:ダイノジ さんの登山記録より)

雪に包まれていた湿原も、夏の訪れとともに雪の下から顔を出し、豊かな自然を見せてくれる。梅雨入りすると、雪解け水と共に水が満たされ、そこは湿生植物と生き物たちの宝庫となる。

今回は山上に広がる湿原を持つ山をピックアップする。

本州最大、湿原の代名詞といえば尾瀬

東西6km、幅2kmにも及ぶ本州最大の高層湿原・尾瀬ヶ原を中心に、大小さまざまな湿原が広がる尾瀬。尾瀬ヶ原の他にも、アヤメ平、大江湿原ほか尾瀬沼周辺に広がる湿原、燧ヶ岳の山腹に広がる広沢田代や御池田代など、さまざまな湿原に出会うことが出来る。

尾瀬ヶ原・下ノ大堀川のミズバショウ(写真:甲斐駒鹿島槍 さんの登山記録より)

尾瀬の代名詞の1つのミズバショウは5月下旬からで、例年では6月初旬~中旬がベストだ。なお、ミズバショウの時期は、まだ時期としては寒く、尾瀬は多くの雪が残っていることが多い。雪に対する装備が必要となることが多い。湿原やその周辺で、雪の心配がなくなるのは6月中旬頃が一般的だ。

至仏山や燧ヶ岳への登山が一般的となるのは7月に入ってからとなる(至仏山は、7月以前の残雪期は登山禁止)。

行程・コース

【1日目】鳩待峠からアヤメ平へ
■総コースタイム 2時間5分、標高差 +386m、-116m
鳩待峠(08:00)・・・横田代(09:15)・・・アヤメ平(09:50)・・・富士見小屋(10:05)
【2日目】富士見小屋から見晴へ
■総コースタイム 2時間5分、標高差 +24m、-465m
富士見小屋(07:00)・・・富士見峠(07:05)・・・八木沢橋(08:25)・・・見晴(下田代十字路)(09:05)
【3日目】見晴から鳩待峠へ
■総コースタイム 3時間、標高差 +212m、-35m
見晴(下田代十字路)(07:00)・・・竜宮十字路(07:30)・・・牛首分岐(尾瀬ヶ原三又)(08:10)・・・牛首(08:20)・・・山ノ鼻(09:00)・・・鳩待峠(10:00)

高低図

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尾瀬沼ビジターセンターは10/31で今シーズンの営業を終了しました。

登山口からすぐに幻想の湿原へ。広大な大地に広がる月山・弥陀ヶ原

月山の北側八合目に広がる湿原・弥陀ヶ原は、台地状に広がる湿原で、抜群の展望を誇る場所として知られている。広い湿原からは東北の山々の展望はもちろん、晴れ渡れば日本海まで望むことができ、まさに天空の楽園となる。

美しい草原と絶景展望が待っている月山・弥陀ヶ原(写真:ぶえなびすた さんの登山記録より)

弥陀ヶ原へは、8合目駐車場から徒歩数分で行けるので、ファミリーでも安全に楽しめる。弥陀ヶ原から月山山頂まで登る場合も、登山道はよく整備されいて安全だ。なお、山頂への往復は4時間弱となっている。

一方、南山麓の姥沢から月山を目指すと、そこは夏スキーのメッカ。雪に対する装備は、夏でも必要となる。

なお、弥陀ヶ原は7月に入ってからがベストシーズンで、7月初旬から中旬の湿原はたくさんの高山植物が咲き誇る。

行程・コース

【日帰り】姥沢から月山に登り、弥陀ヶ原に下る
■総コースタイム 4時間20分、標高差+917m、-684m
姥沢口(08:00)・・・リフト下駅(08:10)・・・雄宝清水(08:30)・・・リフト分岐(09:30)・・・リフト上駅(10:00)・・・金姥(10:30)・・・牛首(11:15)・・・月山(12:15)・・・仏生池小屋(12:55)・・・月山八合目(13:55)

高低図

日帰りで手頃な湿原歩き&登山を楽しめる籾糠山・天生湿原

白川郷からほど近く、「飛騨の匠の伝説」によって生まれたとされる、岐阜県・籾糠山および天生(あもう)湿原。天生県立自然公園として整備されていて、雄大な自然が広がっている。

新緑とミズバショウが美しい登山道中の湿原(写真:山歩きすと さんの登山記録より)

登山口から30分程度で湿原を楽しめ、籾糠山までも往復4時間程度と手頃な登山&湿原歩きを楽しめる。

国道360号線が開通する、6月に入ってからが天生湿原のシーズンの始まり。ミズバショウやニッコウキスゲなどの、湿原の植生を存分に楽しめる。

行程・コース

最適日数:  日帰り 4時間0分
総歩行距離:  8,500m  上り標高: 668m  下り標高: 668m
行程: 天生峠・・・匠神社分岐・・・木平湿原分岐・・・分岐・・・籾糠山・・・分岐・・・木平湿原・・・木平湿原分岐・・・匠神社分岐・・・天生峠

高低図

魅力がぐっと詰まった、福井県唯一の高層湿原の山・赤兎山

石川県と福井県の県境に、愛らしい名前と山容を持つ赤兎山。この山頂付近には、赤兎平と呼ばれる高層湿原が広がる。

池塘に空が映り込む、赤兎山の湿原(写真:Yamakaeru さんの登山記録より)

登山口から山頂までは2時間程度と手頃で、稜線から白山や荒島岳の展望も美しい。湿原の規模は小さいものの、魅力がぐっと詰まっていて、人気の高い山となっている。

雪が消える6月初旬~中旬からがベストシーズンで、春にはリュウキンカ、初夏にはニッコウキスゲが広がる。

行程・コース

最適日数:  日帰り 3時間30分
総歩行距離:  59,000m  上り標高: 599m  下り標高: 599m
行程: 登山口・・・小原峠・・・大舟山分岐・・・赤兎山・・・赤兎平・・・赤兎山・・・大舟山分岐・・・小原峠・・・登山口

高低図

日本一の高所にある高層湿原、鬼怒沼湿原

日本一の高所にある湿原と言われる(諸説あり)のが鬼怒沼湿原だ。尾瀬ヶ原よりも600mは高い、標高2000m付近に広がっていて、訪れるのも尾瀬よりずっとたいへんだ。

ワタスゲが揺れる鬼怒沼湿原(写真:たぎお さんの登山記録より)

女夫淵温泉から鬼怒沼湿原までは、片道で4時間程度、鬼怒沼山頂まで行って往復するとなると一般的なコースタイムでは9時間以上要する。慌てて日帰りではなく登山口に点在する奥鬼怒温泉郷の宿泊と併せて楽しみたいところだ。

標高が高いぶん残雪が遅くまで残るり、6月中旬くらいから湿原が雪の下から顔を出し、7月に入ってからがベストシーズンだ。

行程・コース

【日帰り】夫婦淵から鬼怒沼湿原を往復
■総コースタイム 9時間25分 標高差+約1,328m、-約1,328m
女夫淵温泉(06:00)・・・八丁の湯(07:30)・・・加仁の湯(07:40)・・・日光澤温泉(07:50)・・・丸沼分岐(08:05)・・・オロオソロシの滝展望台(08:35)・・・鬼怒沼湿原南端(10:05)・・・T字路(10:25)・・・鬼怒沼山(11:15)・・・T字路(11:55)・・・鬼怒沼湿原南端(12:15)・・・オロオソロシの滝展望台(13:15)・・・丸沼分岐(13:35)・・・日光澤温泉(13:45)・・・加仁の湯(13:55)・・・八丁の湯(14:05)・・・女夫淵温泉(15:25)

高低図

お花畑、湖沼、湿原、草原・・・魅力が凝縮されている焼石岳

岩手県と秋田県の県境の南部に位置する焼石岳は、標高こそ1600mに満たないものの、さまざまな自然が凝縮されている。山頂一帯のお花畑や、点在する湖沼、湖沼周辺に広がる湿原やお花畑、原生林の新緑と、見どころが多い。

湿原やお花畑が点在する焼石岳(写真:スー さんの登山記録より)

岩手県側、秋田県側、どちらから登っても魅力がある。湿原やお花畑が花と緑に包まれる6~7月もいいが、夏も秋も魅力がたっぷりの山だ。

行程・コース

【日帰り】東成瀬口三合目~五合目~焼石沼~焼石岳
■総コースタイム 5時間35分、標高差613m(+825m、-825m)
東成瀬三合目登山口(08:00)・・・すずこやの森分岐点(08:15)・・・五合目釈迦ざんげ(08:40)・・・八合目焼石沼(10:00)・・・九合目(10:40)・・・焼石岳(11:10)・・・九合目(11:30)・・・八合目焼石沼(12:00)・・・五合目釈迦ざんげ(13:00)・・・すずこやの森分岐点(13:25)・・・東成瀬三合目登山口(13:35)

高低図

大湿原が広がる雲上の楽園の山、大白森

秋田県と岩手県の県境、十和田八幡平国立公園(八幡平地域)は、八幡平を筆頭に多くの湿原が点在している。八幡平から秋田駒ヶ岳方面への縦走路一帯は、多くの高層湿原が続き、雲上の楽園となる。

大白森山の湿原、ワタスゲが揺れレンゲツツジが彩る(写真:ヒロ さんの登山記録より)

その縦走路の途中にあるのが大白森で、山頂付近は広大な高層湿原が広がっている。

登山口となるのは秘湯・乳頭温泉からが一般的。ゆっくり温泉を楽しみながら登山したい。

行程・コース

最適日数:  日帰り 4時間35分
総歩行距離:  10,000m  上り標高: 700m  下り標高: 700m
行程: 登山口・・・展望地・・・分岐点・・・小白森山・・・大白森・・・小白森・・・分岐点・・・展望地・・・登山口

高低図

長い林道歩きの先に、ひっそりと広がる小松原湿原

初夏の湿原は美しく、多くの人が訪れる場所だが、静かにひっそりとした湿原を楽しみたいなら小松原湿原はおすすめだ。苗場山の北側の麓に広がる湿原は、2km四方ほどの大きさがあり、「小尾瀬」と呼ばれるほど、豊かな自然が広がっている。

長い林道歩きが強いられるので、湿原までの道のりは遠いが、下の代、中の代、上の代の3段に分かれた湿原は風情がある。

行程・コース

最適日数:  日帰り 9時間5分
総歩行距離:  25,500m  上り標高: 1330m  下り標高: 1330m
行程: 林道ゲート・・・小松原湿原入口・・・黒滝コース分岐・・・中ノ代・・・小松原避難小屋・・・日陰山・・・小松原避難小屋・・・中ノ代・・・黒滝コース分岐・・・小松原湿原入口・・・林道ゲート

高低図

「四国の尾瀬」とも称される、四国最大の高層湿原・黒沢湿原

高層湿原は、寒く標高の高い場所に広がるが、暖かい四国にも大きな湿原がある。それが黒沢(くろぞう)湿原だ。標高500m前後の場所に26.7ヘクタールの大きさを誇り、四国の尾瀬とも称される。

四国の尾瀬という言葉にふさわしい美しい湿原が広がる(写真:マローズ さんの登山記録より)

オオミズゴケ・サギソウ・イシモチソウ・キセルアザミ・ヒツジグサなどの希少などの水生植物が繁茂し、四季を通じて楽しめるのも特徴だ。

行程・コース

最適日数:  日帰り 1時間50分
総歩行距離: 
行程: 漆川八幡バス停・・・駐車場・・・たびの尻滝・・・駐車場・・・漆川八幡バス停

高低図