季節を問わず観光客に人気の神奈川県の湘南・鎌倉周辺のエリアは、起伏に富んだ丘陵が広がり、ハイキングコースも多い。アクセス至便なので半日でも楽しめ、市街地至近にも関わらず、一歩トレイルに入れば豊かな自然が広がる。また海や富士山、街並みの眺めがよいのも、このエリアならではの魅力だ。
鎌倉と三浦半島については、別項「山も海も街も楽しめる!大満足の鎌倉〜葉山〜三浦の山歩き」にて主なハイキングコースを紹介している。今回はそこで紹介していない鎌倉周辺のコースと、湘南エリアも含めて、手軽に歩けるハイキングコースをピックアップした。
衣張山(きぬばりやま・きぬはりやま)は、鎌倉駅南東に位置する標高120mの山。名越(なごえ)切通やお猿畠の大切岸(おさるばたけのおおきりぎし)など見どころも多く、比較的手軽に歩けるため多くのハイカーを集めている。鎌倉駅からバスを利用し、長勝寺バス停で下車。もしくは徒歩でアクセスしてもよい。
バス停からスタートして、線路を渡って名越切通の入口へ。山道に入り石段を進むと、国指定史跡で鎌倉七切通のひとつ、名越切通に着く。鎌倉時代、三浦方面に抜ける重要な道であったという。名越切通の付近には、まんだら堂やぐら群があるが、こちらは期間限定公開となっている。
切通からもと来た道を戻り、続いて石切場跡といわれているお猿畠の大切岸に出る。こども自然ふれあいの森を過ぎ、衣張山に向かう。着いた山頂からは、鎌倉の街並みと稲村ヶ崎方面の海など、すばらしい眺め。下山は、そのまま北に下り、杉本観音バス停から鎌倉駅へ。
高低図
横浜市南部にある円海山周辺は、多摩丘陵南端と三浦丘陵北端のあたりに位置しており、豊かな自然が残るエリア。都市部にこれほどの規模の緑地が広がっているのは希少である。谷戸や変化に富む地形の中、いくつものトレイルがのび、市民の憩いの場になっている。このエリアから鎌倉までつないでみよう。
港南台駅をスタートして市街地を抜け、眺めがよい高台から山道に入り、いっしんどう広場へ。付近にある円海山の山頂部は立ち入り禁止だ。ここから横浜市最高峰の大丸山を目指そう。
ビートルズトレイルと呼ばれているなだらかで歩きやすい道を進み、大丸山への分岐から階段をすぐで山頂に出る。大丸山からは、金沢八景方面の展望がすばらしい。
再びトレイルに戻り、次は関谷奥見晴台。なだらかな道をさらに進んでいくと、市境広場に到着する。ここからは横浜市と鎌倉市の境の道となる。岩が狭まる切通しのような箇所を過ぎ、しばらく歩けば天園だ。街並みと海を眺めがよいので、しばしの休憩によい。ここから亀ヶ淵方面に下るが、瑞泉寺方面、もしくはまだ足に余裕があれば大平山方面に向かうのもよい。
本コースはやや長いという場合は、途中の大丸山をゴールとして金沢自然動物園方面に下るのでもよいだろう。
高低図
高麗山と湘南平は、大磯の街の背後に連なる一つの大きな丘陵だ。湘南平は、山頂部まで車やバスでアクセスでき、大展望が広がるため、観光地としても知られている。ハイキングコースも整備され、標高も高くないので子供連れなど様々なハイカーに歩かれている。
大磯駅からスタートし、高来神社から山道に入る。ここから道は、男坂・女坂などいくつも分かれているので、好きな道を選べる。高麗山の山頂は展望がないが、小広いので休憩によい。ここから八俵山を過ぎ、気持ちよい雑木林のアップダウンを進むと浅間山。ここから少し下って登り返せば湘南平の山頂部に飛び出す。展望塔に上がれば、江ノ島、伊豆大島、伊豆半島、富士山、丹沢山地と360度のすばらしい眺め。
下りは、南側の駐車場脇から関東ふれあいの道をたどれば、すぐに市街地に降り立つ。湘南平手前に戻って、南側の高田公園方面に下ることもできる。こちらはより長く山道を歩け、楊谷寺谷戸横穴群へ寄り道もできるので、充実したプランになるだろう。
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小田原市東部に位置する曽我丘陵は、舗装路の区間が多いのでハイキングというよりはウォーキングに近いかもしれないが、のどかな里山風景の中、所々で富士山や麓の街並み、海が眺められるのが魅力。春にはウメや早咲きのサクラも美しい。
上大井駅からスタートし、緩やかに高台に上がっていく。四季の里手前のおおい夢の里では、早咲きのサクラ、菜の花と富士山の展望がすばらしい。ラ・レイエス湘南(旧いこいの村)を過ぎ、右折して農道のような細い道を進む。
不動山は曽我丘陵の最高点だが、展望はない。六本松跡の手前付近に来ると、相模湾が見え、解放感のある道となる。ミカン畑の道を進み、途中、脇道にそれて、橋を渡って縫うように下っていく。光明寺の脇に出て、後は市街地を国府津駅へ。
麓にある小田原の別所梅林では例年2月に梅まつりが開かれる。梅林も楽しみたい場合は、下曽我駅を起点か終点として、別所梅林を通るプランを立てるとよいだろう。
高低図
秦野市南部に位置し、秦野盆地の南にこんもりと連なっている渋沢丘陵。秦野は湘南地域圏に属しているということで、今回ピックアップ。海からは少し離れ車道歩きはあるものの、里山風景と丹沢山地の展望が魅力で、四季を通じてハイカーに親しまれている。
秦野駅をスタート。市街地を縫って県道を渡り緩やかに坂道を上がっていくと、丹沢山地の眺めが開けてくる。しばらくで震生湖に着く。関東大震災でできた震生湖は、丘陵のくぼみに水をたたえ、静かな雰囲気だ。
震生湖を後にして、車道から農道のような細い道に入っていく。所々で丹沢表尾根や大山が眺められ、樹林帯やのどかな里山風景が広がる。
いったん栃窪地区に出るが、また里山へと入っていく。栃窪神社への道を途中で右に折れ、頭高山方面に向かう。途中、八国見山への分岐を過ぎるが、八国見山までは片道15分ほど。時間があれば寄ってみてもいいだろう。その先、農道を進むと南側の峠地区方面が開ける。
渋沢駅への分岐を見送り休憩所に着けば、頭高山(ずっこうやま)の山頂はすぐそこだ。帰路は千村地区を縫って渋沢駅へ。頭高山のある千村地区は八重桜の里としても知られ、4月中下旬に見頃となる。
高低図