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登山を再開するために。「登山 withコロナ」のリスクマネジメント【前編】 山に登る前に・準備にあたって

緊急提言
その他 2020年05月29日

前回、5月2日に「なぜ、いま「登山を自粛」なのか。その先の出口はどこにあるのか」を発信した、医師、山小屋経営者、山岳ガイド、ツアー会社、山岳ライターらで構成される「team KOI*」が、その後も意見交換を続け、「『withコロナ』の登山におけるリスクマネジメント」をまとめました。登山を再開しようというみなさんに向けた提言の前編、山に登る前・準備編です。

構成=柏 澄子

 

4月16日、全国に拡大した「緊急事態宣言」は、段階を経て5月25日にすべての都道府県が解除となりました。私たち登山者も、「withコロナ」の登山について考え、実践するときがやってきます。そこで今回、登山を再開しようという登山者に向けた提言をまとめました。第1回は、登山前の準備についてお届けします(第2回は登山中と下山後に関する内容を予定しています)。

ここに紹介するのは、みなさんが登山を再開する一助となることを願って書いた、ひとつの提案です。これをもとに、グループや山岳会、地域の山の仲間と話し合っていただき、よりよいご自身たちのルールを作るのがよいと思います。

これは「team KOI」のメンバーの言葉ですが、「最後に自分たちを守ることができるのは、自分たちで考え納得して作ったルール」だと考えます。どんなに細心の注意をはらっても、登山中に発症するかもしれません。山岳地域でクラスターが発生するかもしれません。

そんな時、私たち登山者を、ひいては登山社会を守るのは、確かな最新情報をもとに自分たちで作ったルールではないでしょうか。しかしそのルールは、コロナという未知のウイルスが相手であり、また「withコロナ」の登山という行為すべてが、私たちにとって初めての経験であるため、実践し、検証し、ブラッシュアップさせていくものだと考えています。

 

山に登る前に準備したいこと

居住(出発)地・経由地・目的地の情報収集

自分の住んでいる地域(出発地)、途中で立ち寄る地域、目的の山がある地域それぞれについて、以下の3つの観点から、情報収集をしましょう。

①行政のメッセージ
緊急事態宣言の発令状況のほか、自治体が旅行者、登山者に向けて自粛を要請しているケースもあります。行政のメッセージには、様々な事情が含まれています。真摯に受け止めることが大切です。

②感染流行状況
各都道府県が、感染流行状況を公開しています。市区町村、保健所管内別の情報もあります。詳細まで確認しましょう。
居住(出発)地と目的地の感染流行状況のレベルが違う場合、その間を移動することは、目的地域に感染を広めるリスク、あるいは居住地にウイルスを持ち帰るリスクが高くなると考えましょう。

③医療リソースの状況
地域外から移動する場合、とくに注視しなければならない情報です。
自治体が出す情報に医療リソースに関する情報が含まれていることがあります。情報収集しましょう。
コロナ対応病床数の動向がわかるホームページなどもあります。

 

事前の健康管理

  • 2週間前からの体調と体温を記録しましょう。この間に体調不良や37.5度以上の発熱があった場合は、登山を見送りましょう。
  • 2週間前からの自分の行動を記録しましょう。万が一感染が疑われた場合、感染経路のヒアリングに協力することができ、自己の状況把握にもつながります。
  • 自分の行動範囲の感染状況を注視しましょう。周囲に感染者が出た場合は、登山を止める勇気を持ちたいです。

 

登山道の情報

  • 山小屋の営業が変則的になり、例年通りには登山道が整備しきれないケースもあります。以下のホームページから、登山道の情報を積極的に収集しましょう。
    環境省、都道府県警(山岳救助隊・警備隊)、遭難対策協議会/遭難防止対策協会、自治体(観光課など)、山小屋、信頼できる登山/山岳ガイドなど
  • 登山の記録サイト/アプリの情報も有用です。直近の記録を収集しましょう。客観性のある写真や映像を中心に確認しましょう。
    ヤマケイオンライン、ヤマレコ、YAMAPなど

 

山小屋/テント場の情報収集も

  • 感染症対策のために休業する山小屋や、変則的な営業になる山小屋があります。予約の有無、定員数、食事提供の有無と内容、寝袋など登山者が持参すべきもの/持参するとよいもの、トイレ利用の可否、緊急通信手段の有無、診療所開設の有無などを、山小屋のホームページやSNSで確認し、それに合わせた準備をしましょう。新型コロナウイルス感染防止対策として、利用者数(定員数)を大幅に少なくする山小屋、事前予約が必要になっている山小屋、もあります。
  • テント場についても、予約の有無や、水場やトイレ利用の可否を管理者に確認しましょう。
  • 山小屋からの発信内容は、状況に応じて変わります。つねに最新のものを入手しましょう。

山小屋では、一人あたりの就寝スペースを大きく取る、寝袋持参をお願いするなどの取り組みが行われる。山小屋にとっても初めてのことなので、登山者は山小屋の発信に耳を傾けましょう

 

登山計画を立てる際に

  • 「withコロナ」の登山は、今までよりも行動に手間がかかります。また荷物が多くなるケースもあります。行動時間、行動内容をよく考え、余裕のある計画を立て、「安全マージン」を大きくとりましょう。
  • 山小屋やテント場が営業していない山域に関しては、ルート変更を含めた予定の変更、調整を考えましょう。
  • 都道府県警察宛てに計画書を提出しましょう。万が一、自分の行程のなかでクラスターの発生やコロナ発症があった場合にそなえ、公的機関がトレースできるようにするためです。
  • 混雑が予想される交通機関は、避けましょう。
  • 持病(呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病ほか)は、コロナが発症した際に重篤化する恐れがあります。登山についても、「安全マージン」を大きくとりましょう。
  • 標高が高いところでは、高山病かコロナウイルス感染症かの区別が困難になります。そのため、現状では、高山病の可能性がある標高(概ね2500m以上)での登山は、注意が必要です。

テント数を限るため予約制を検討する動きもある

 

「with コロナ」の登山で準備するべき持ちものの例

  • 山小屋で食料や水が手に入るのは当たり前のことではありません。休業中の山小屋では水源から水を引いていない場合もあります。山小屋の売店が営業していても、食料が購入できない場合もあります。食料や水は、いつもより多めに持っていきましょう。
  • トイレの稼働について確認し、必要に応じて携帯トイレを準備しましょう。
  • マスクやネックゲーターなど飛沫対策できるものを準備しましょう。
  • 十分な水が得られないケースもあります。消毒用のジェルやスプレーなど(エタノール希釈濃度50%以上推奨)を準備し、こまめに手指を消毒できるようにしましょう。
  • 行動食は、手指でつかまずに食べられるものを用意するのも、一法です。個別包装であれば、そのまま口に放り込むことができます。
  • 山小屋に宿泊する場合は、山小屋が案内する持ち物を忘れずに準備しましょう。詳細は、山小屋によって異なりますが、寝袋、マット、マスク(サージカルマスク含む)、コップやカトラリー、手指消毒用のジェルやウェットティッシュなどが、考えられます。
  • ファーストエイドキットには、感染予防対策のために医療用手袋を複数枚入れましょう。持病の薬や常備薬も忘れずに持参しましょう。
  • 日常生活を共にする人以外とのテント泊山行を計画する場合は、各々ソロテントで就寝することを考えましょう。

 

*****

 

 

(*)team KOI=新型コロナウイルスの流行を機に、今後の登山活動を考えるべく集まった、山を愛するメンバーです。

メンバー:
柏澄子(ライター、日本山岳会理事)
山田淳(やまどうぐレンタル屋、フィールド&マウンテン)
浅井悌(医師、利尻島国保中央病院副院長、日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員、災害人道医療支援会理事)
稲垣泰斗(医師、北里大学医学部総合診療医学特任助教、ウィルダネス メディカル アソシエイツ ジャパン メディカルアドバイザー)
近藤謙司(国際山岳ガイド、アドベンチャーガイズ、日本山岳ガイド協会理事)
佐々木大輔(国際山岳ガイド、日本山岳ガイド協会理事)
佐藤泰那(編集者、KUKKA)
花谷泰広(山岳ガイド、甲斐駒ヶ岳・七丈小屋)
柳澤太貴(赤岳鉱泉・行者小屋)

危機管理
教えてくれた人

team KOI

新型コロナウイルスの流行を機に、今後の登山活動を考えるべく集まった山を愛するメンバー。山岳ガイド、山岳旅行ツアー会社、山小屋事業者、メディアなどそれぞれの立場から、チームの取り組みに参画。
日本の登山社会が健全に活発に発展していくよう、これからもさまざまな活動を行いたいと考えている。
https://note.com/teamkoi

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