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「登山再生に向けて」ガイド業務再開ロードマップを発表した日本山岳ガイド協会の武川理事長に、協会の取り組み、山岳ガイドと登山者へのメッセージを聞く

緊急提言
その他 2020年06月04日

全国に発令されていた「緊急事態宣言」が解除され、登山を再開する動きが出てきました。そんななか、日本山岳ガイド協会の理事長、武川俊二さんから「登山再開に向けて」というテーマで寄稿いただきました。ガイド業の再開に向けて協会がどのような取り組みを行っているのか、登山者のみなさんにどう取り組んでほしいのか、ぜひ参考にしてください

 

5月25日、やっと待ち望んだ緊急事態宣言が解除されました。約1か月半以上「外出自粛」を要請され、山へ行くことが仕事である登山ガイド、山岳ガイドたちの仕事は無くなってしまいました。このコロナ禍のため、前後を入れると2か月以上仕事にありつけないガイドもいます。

問題は、ここから始まります。

緊急事態宣言が解除され、さて山登りができるのかというとそうでもありません。山小屋の休業、登山道の閉鎖、交通機関の運休などが次々に決まっていくなど、ただごとではない状況が見えてきます。場所、地域によっては、今シーズンの登山は不可能な状態になっています。

こうした中、職業ガイドの団体である日本山岳ガイド協会では、5月12日、役員改選に伴う組織改編で、特別委員会「コロナ対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、登山再生に向けて取り組みはじめました。

5月中旬、静岡県・高草山にて、ガイド業務再開に向けての検証登山を行った

プロジェクトチームは、支援事業班・医療班・行政対応班・広報班・事業再生班の5つの班で構成され、ガイド協会の今あるすべての知力、経験、人力、技術を結集して取り組むことにいたしました。

おもに医療班、広報班は、ガイドラインの策定に向けていち早く動いてくれました。発信してきました「新型コロナウイルス感染症対策のための業務再開ガイドラインVol.1」では 「緊急事態宣言一部解除に際して 事業再開に向けたプロセス」を発表しました。Vol.2~Vol.4と続け、Vol.5では「段階的ガイド業務再開のロードマップ」(下記参照)を作成しました。これはガイドに向けて作成されたものですが、登山者のみなさんにとっても、このロードマップが山登り再開するにあたって、よい道しるべになるかと思います。

支援事業班は、ガイド事業を支えるために行政が行う補助事業などを支援するものです。事業再生班は、ガイドのみならず、登山に関わるあらゆる業種と登山の再生に向けて活動するものです。山小屋、旅行業、旅館業、交通運輸機関、メディア、小売店、登山用具メーカーなどとともに登山の再生に向けて動きます。

行政対応班は、国、地方自治体などに対しての様々な要望、意見を取りまとめ、提出する役割です。5月28日、山岳ガイド協会では、「新型コロナウイルス感染拡大による経済的影響に対する支援の要望」を取りまとめ、厚生労働大臣、文部科学大臣、環境大臣あてに提出いたしました。厚労省では、橋本岳副大臣が、直接、この要望書を受け取ってくださいました。内容は、5月8日に行った山岳ガイド協会会員からのアンケート結果に基づき、下記のようなものになりました。

  1. 山と自然という文化を、人々へとつなぐ個人事業者である、ガイドという職業への経済的支援を今後も継続していただきたい。
  2. 緊急事態宣言解除後に再開されるガイド業務は、再開ガイドラインに沿ったもので行われることを理解していただきたい。
  3. 各地域で行われる山岳スポーツの催事、イベントなどへの積極的な支援をお願いしたい。
  4. 山岳ガイド、登山ガイドを厚生労働省の編む職業分類に取り上げていただきたい。

これにより登山ガイド、山岳ガイドの社会的スタンスが認められます。

厚生労働省橋本岳副大臣に、直接、要望書を提出した(橋本岳事務所提供)

こうした要望書を提出することによって、「登山ガイド」「山岳ガイド」という職業が、社会的に存在し、仕事として山に登るものへの理解を高めてもらいたいと考えています。

山登り、登山は、不要・不急の行為です。真っ先に「自粛」を呼びかけられました。しかし、山を歩き、自然に向き合う行為は、人間の持つ理性を高め、創造力を生み出します。絵画や音楽などの数多くの芸術作品は、山や自然の中から造りだされてきました。自然の中に入ることによって生み出される創造力は、決して人口知能(AI)には負けない知恵を人間に与えてくれる、といわれています。

ガイドの仕事は、そうしたことの橋渡しだと考えています。安心そして安全を軸に「withコロナ」の山登りを進めていきます。

教えてくれた人

武川俊二

1954年東京生まれ。日本山岳ガイド協会理事長。日本山岳ガイド協会認定ガイド。
山岳雑誌「岩と雪」編集部、クライミングジャーナル編集長などを経て、山岳専門旅行社を興す。主に旧ソ連の中央アジア、シベリア、カムチャッカなどの山々を専門に取り扱う。1996年社団法人日本アルパインガイド協会入会、マウンテンガイドとして活動する。2002年社団法人日本山岳ガイド協会統合設立に参画、理事に就任、山岳ガイド・自然ガイド資格認定制度を創る。2006年、かながわ山岳ガイド協会設立。2020年5月より、日本山岳ガイド協会理事長となる。

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