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登山を再開するために。「登山 withコロナ」のリスクマネジメント【後編】 登山中、下山後に気をつけること

緊急提言
その他 2020年06月05日

「なぜ、いま「登山を自粛」なのか。その先の出口はどこにあるのか」を発信した、医師、山小屋経営者、山岳ガイド、ツアー会社、山岳ライターらで構成される「team KOI(*)」が、その後も意見交換を続け、「『withコロナ』の登山におけるリスクマネジメント」をまとめました。登山を再開しようというみなさんに向けた提案の後編は、登山中や下山後に気をつけたいことです。

構成=柏 澄子

 

前回の「山に登る前に」(登山前の情報収集、計画の立て方、準備など)に続き、今回は登山中と下山後に関するものをお届けします。

前回同様、ここに紹介するのは、みなさんが登山を再開する際の一助となることを願って書いた、ひとつの提案です。登山者のみなさんは、様々な情報を参考にし、グループや山岳会、地域の山の仲間と話し合っていただき、よりよいご自身たちのルールを作っていただきたいと思います。

また、この内容は「前編」が前提となります。

特に「居住(出発)地・経由地・目的地の情報収集」の項目や、出発前の各人の健康状態の確認は重要事項だと考えています。ぜひご覧ください。

「山小屋に泊まるときに気をつけたいこと」の項目には、多くの情報があります。

山小屋は、営業・休業問わず、たいへんなエネルギーをかけています。山小屋が用意してくれた安全に加え、私たち登山者も山小屋の安全について考え、実践しましょう。山小屋、登山者、双方の力が合わさってこそ、山小屋の安全が保たれると思います。

そして、登山を再開する前にもうひとつ。

「stay home」のなか、ランニングなどのトレーニングに励んだ効果はあると思いますが、山の体力は登ることによって得られる部分も大きいです。

「team KOI」のメンバーには、山小屋を管理する者がいます。先月、2ヶ月ぶりに施設整備のために山小屋まで登ったところ、その際に実感したことは、①息があがる、②重い荷物が背負えない、③下りで足がもつれる、というものでした。

①と②は、登山を徐々に再開することによって、ある程度、コントロールできるかもしれません。けれど、③は転・滑落に直結する危険もあります。少しずつ段階を踏んで、自分自身をよく観察しながら山に戻りましょう。

 

山に登っているときに気をつけたいこと

登っているときに

  • 他者との距離を、十分に保ちましょう。
  • 登山道でのすれ違い時も、距離感を意識しましょう。一方が安全な場所で待機し、距離感を保ってすれ違えるよう気を配りましょう。
  • すれ違うときは、自分の飛沫の行方に注意しましょう。山の挨拶「こんにちは!」もほどほどに。
  • 他者との距離が保ちづらいときに、マスクやネックゲイターなどが必要になるかもしれません。ポケットにしのばせておきましょう。
  • サングラスも飛沫の防護として有効です。積極的に着用しましょう。
  • 登山中はクサリ、ハシゴ、岩、樹木など色々なものに触れます。むやみに手で顔に触れないよう気を配りましょう。
  • 大人数のグループは、人と人との距離が保ちづらいです。小グループに分かれて行動するなど、工夫しましょう。
  • 日焼け止めクリームを顔に塗る前に、手指を消毒すると安全です。
  • ハイドレーションシステムの水筒のマウスピースを扱うときは、手指を消毒するか、手がマウスピースに触れないように気を使いましょう。マウスピースが外気にさらされているだけでは感染のリスクはありませんが、飛沫がかかったり、他者が使用したものに触れるとリスクがあります。これらの点にも気を付けましょう。
  • 使用済みのティッシュや医療用手袋は、感染のリスクがあります。ジッパー付きのビニール袋などに入れ、密閉して持ち帰りましょう。
  • ギアの貸し借りは、なるべく避けましょう。仲間を撮影するときは自分のカメラで撮り、後日送付するなどの工夫をしましょう。
  • 常に技術的、体力的に余裕を持った行動をとりましょう。「withコロナ」の登山は、人と人との距離を保つ、荷物が重いなど、気を遣う場面が多いです。予想よりも時間がかかり、体力を使います。「安全マージン」を大きくとりましょう。

これまでと違い、他者と距離を保った山歩きに

 

休憩や食事のときに

  • 休憩のときの互いの距離感も重要です。休憩場所が混雑している場合は、ほかの場所を選びましょう。
  • 行動食を食べる際や食事の前には、手指を洗うか消毒しましょう。
  • 回し飲みや行動食の回し食べ、行動食を他者に配ることは、ひかえましょう。
  • 水場は、つねに水が流れているため感染力のある飛沫がそこに留まって感染源となることは考えにくいです。しかし、水場に置いてある共用のコップなどは、使用をひかえましょう。

 

テント泊では

  • 水場やトイレ利用の可否など、施設管理者(山小屋など)のルールにしたがって行動しましょう。
  • 自炊の場合は、大皿料理やみんなで鍋を囲むスタイルはひかえましょう。各自が自分の食材を用意し、調理するのが安全です。

予約制にしてテント数をコントロールするなど、新たな取り組みがなされるテント場もある。
施設管理者(山小屋など)の発信する最新情報に耳を傾けよう

 

山小屋に泊まるときに気をつけたいこと

体調管理

  • 登山前や登山中に体調管理に気を配ったのと同様、山小屋滞在中も自分の体調に注意をはらいましょう。体調の異常、発熱がある場合は、山小屋スタッフに相談しましょう。できることならば、早めの下山が望ましいです。
  • コロナ感染の疑いがなくとも、咳が出る場合はマスクを着用しましょう。

 

山小屋での過ごし方

  • 山小屋のルールにしたがって過ごすことが、大原則です。
  • マスクやネックゲイターを使って、飛沫感染を防ぎましょう。
  • 食事時はとくに飛沫感染に注意をする必要があります。
  • 山小屋で購入したドリンクの缶や瓶など、ゴミは登山者が持ち帰ることが望ましいです。
  • 就寝時は、必要に応じてマスクやネックゲイターなどを着用しましょう。飛沫を抑えるだけでなく、加湿による喉の保護にもなります。
  • 山小屋では、就寝スペースの十分な確保、寝袋やマットの持参、1回ごとのシーツや枕カバーの交換など、それぞれの事情を踏まえて創意工夫し、就寝スペースでの感染防止策をとっています。それぞれの山小屋で提示されるルールを守りましょう。
  • 寝袋のほかにマットやシートを持参した場合、使用後は床に面した側を内側にして収納し、持ち帰りましょう。

 

山小屋泊での感染症対策として準備したい持ちもの

  • 山小屋から案内がなくとも、以下の持ち物についても考えてみましょう。
  1. グループの代表だけなく、宿泊者全員のデータ(氏名、住所、連絡先、緊急連絡先)を用意し、必要な場合には提示できるようにしましょう。
    →万が一、感染者が発生したときに役立ちます。
  2. 布製のマスクやネックゲイターに加えて、サージカルマスク(使い切りの不織布のマスク)
  3. 手指消毒用のウエットティッシュやジェル、スプレー(エタノール希釈濃度50%以上推奨)
    →手指の消毒用品は自分で用意しましょう。トイレの使用前に自分自身で便座やドアノブ、トイレットペーパーのホルダーなどを拭くことができれば、自分自身も安心して利用でき、山小屋の衛生管理の手助けにもなります。
  4. 体温計
    →体調管理のために自分で用意しましょう。常備している山小屋もありますが、使用の度に消毒が必要となり、山小屋に負担がかかります。

 

山から下りてきたら実践したいこと

  • ウエアは必ず洗濯しましょう。通常の洗濯洗剤で構いません。
  • 装備についてもすべて洗浄/消毒することが望ましいですが、使用する洗剤や薬液および適正な水温は、装備メーカーのアナウンスにしたがいましょう。
  • ウイルスは、物への付着後、最長7日程度は感染力を保持する可能性があると言われています。消毒がままならない場合は、最長7日間は触れないようにすれば安全です(1~2日でも木材、布、紙など多くの物の表面から感染力を保持したウイルスは検出されなくなると考えられています)。日干しや、乾燥したところ、高温環境に置くことで、ウイルスが不活性化するまでの日数が短くなる傾向があります。
  • 登山の記録サイト/アプリに写真や映像を使って投稿し、次の登山者の安全に寄与しましょう。写真や映像は客観性があり、有益な情報になります。

帰宅後の「やることリスト」を思い浮かべながら下山の途へ

 

*****

 

 

(*)team KOI=新型コロナウイルスの流行を機に、今後の登山活動を考えるべく集まった、山を愛するメンバーです。

メンバー:
柏澄子(ライター、日本山岳会理事)
山田淳(やまどうぐレンタル屋、フィールド&マウンテン)
浅井悌(医師、利尻島国保中央病院副院長、日本山岳ガイド協会ファーストエイド委員、災害人道医療支援会理事)
稲垣泰斗(医師、北里大学医学部総合診療医学特任助教、ウィルダネス メディカル アソシエイツ ジャパン メディカルアドバイザー)
近藤謙司(国際山岳ガイド、アドベンチャーガイズ、日本山岳ガイド協会理事)
佐々木大輔(国際山岳ガイド、日本山岳ガイド協会理事)
佐藤泰那(編集者、KUKKA)
花谷泰広(山岳ガイド、甲斐駒ヶ岳・七丈小屋)
柳澤太貴(赤岳鉱泉・行者小屋)

危機管理
教えてくれた人

team KOI

新型コロナウイルスの流行を機に、今後の登山活動を考えるべく集まった山を愛するメンバー。山岳ガイド、山岳旅行ツアー会社、山小屋事業者、メディアなどそれぞれの立場から、チームの取り組みに参画。
日本の登山社会が健全に活発に発展していくよう、これからもさまざまな活動を行いたいと考えている。
https://note.com/teamkoi

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