栃尾又温泉自在館でぬる湯に浸かり、越後駒ヶ岳で紅葉登山を楽しむ
ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第9回は紅葉の越後駒ヶ岳登山前に、栃尾又温泉でぬる湯にじっくり浸りました。
写真・文=月山もも
紅葉シーズンがスタートする9月下旬頃、新潟県の越後駒ヶ岳に登りました。
駒の湯登山口から登り始めて急坂の登山道を3時間半ほど登り、稜線に出ます。このあたりはまだ色づき始めというところで「まだ紅葉には少し早かったかな」と思いつつ歩いていきます。
この日は山頂直下の避難小屋・駒ノ小屋に宿泊したのですが、小屋を越えて山頂に向かう途中あたりは、ちょうどいい具合に色づいていていました。今年最初の紅葉を目に焼き付けます。
また、翌日の朝は小屋の前でご来光と雲海を眺めることができました。紅葉の盛りの頃は、避難小屋もかなり混雑するとのことで、ちょうどいいタイミングで来れたのかもしれませんね。2020年は特にですが、混雑期は可能な限り、日帰りでの計画をおすすめします。
実は、越後駒ヶ岳は公共交通機関利用のハイカーにとって、アクセスの難易度が高めの山です。このとき私は、ぬる湯のラジウム温泉で名高い栃尾又温泉自在館に前泊し、宿から1時間ほど歩いたところにある駒ノ湯登山口から登り始めました。
宿泊したのは日当たりのいい和室で、チェックイン時から布団が敷かれていました。
自在館には1人泊専用の部屋が何室かあるため、休前日や連休でも1人で泊まれるのがありがたいです。
栃尾又温泉には3軒の宿があり、大浴場は3軒のお客さんが共通して利用する「共同湯」のスタイルです。しかし、自在館には大浴場以外に、貸切で利用可能な浴室が3室あります。
時間帯で予約をして利用するのですが、どの浴室も広く清潔で、1人で占領するのが申し訳ないほど!しかも、共同湯のぬる湯とは異なる、やや高温の源泉が楽しめるのです。
貸切風呂のうち1室は露天風呂で、緑の木々に囲まれて爽やかな湯浴みを楽しめました。もう少し季節が進めば、露天風呂からも紅葉を眺められそうですね。
夕食前に大浴場にも入りに行きます。大浴場は「したの湯」「うえの湯」「おくの湯」と3つあり、時間帯によって男湯女湯が入れ替わるのですが、このとき女湯になっていたのは「おくの湯」でした。
「おくの湯」は3つの中で一番新しい浴室です。広い浴槽は無色透明な、36度程度の人肌のぬる湯で満たされています。
泉質は「単純放射能温泉」で、温泉や湯気の中に含まれるラドンが免疫力をアップすると言われているそうです。ぬる湯に静かに体を沈めると、最初は冷たく感じるのですが、じわじわと体が温まってきていつまでも入っていたくなってしまう、強いパワーの感じられる温泉です。結局1時間以上入ってしまいました。
夕食は食事処でいただきます。1人客は他のお客さんの視線が気にならないよう、窓側の席に案内していただけるのがありがたいです。
1合で注文できる日本酒が10種類近くあるのもうれしいポイント。「緑川」という魚沼市内の酒蔵の純米酒を注文しました。
夕食は「一汁六菜コース」と「一汁四菜コース」がありますが、登山の前後ならもちろん一汁六菜コースでしょう!
ニジマスの刺身に岩魚の塩焼きと、山の宿らしい川魚料理に日本酒がすすみます。岩魚は、2時間以上かけてじっくり焼いているそうで、骨も頭も丸ごと食べられます。
鮭のみぞれ煮は、付け合わせの野菜や山菜もおいしく、鍋は鴨鍋!
デザートは手作りのほうじ茶プリンとぶどうと梨。すっかり満たされて、お風呂に入る余裕もなく早寝してしまいました。
翌日は朝一番に、女湯となった「したの湯」で朝風呂をいただきます。
「したの湯」は地下にあるため、長い階段を下っていくのですが、この階段が異世界につながっていそうな独特の雰囲気があるので気に入っています。
たどり着いた「したの湯」も、なにか神秘的なものを感じさせる浴室です。
栃尾又温泉の3つの共同湯は「霊泉の湯」と呼ばれるそうなのですが、「したの湯」は特に「霊泉」という呼び名がぴったりくると思います。朝日が差し込む時間帯は特に風情があるので、早起きして入りにいくのがおすすめです。
朝風呂のあとは食事処で、外の緑を眺めながら、品数豊富な朝食をいただきます。
大粒のラジウム納豆と生卵もあり、魚沼産コシヒカリのおいしいご飯を何杯もおかわりしたくなりました。
登山前の宿泊はどうしても慌ただしくなってしまうので、次回は一汁四菜コースで連泊して楽しむのもいいなと、計画を練っているところです。
(取材日=2019年9月下旬)
*掲載情報は、取材時の内容です。
自在館
料金:1泊2食付き/1室1名9800円~、1室2名8800円~(シーズン、部屋等により変動あり)
住所:〒946-0087 新潟県魚沼市栃尾又温泉
電話:025-795-2511
HP:https://www.jizaikan.jp/
プロフィール
月山もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
ひとり温泉登山
山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。