気軽に登れる山梨百名山・大蔵経寺山で紅葉を眺め、深雪温泉の極上湯に浸かる
ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第44回は大蔵経寺(だいぞうきょうじ)山に登り、下山後は石和(いさわ)温泉郷・深雪(みゆき)温泉へ。
写真・文=月山もも
山梨県甲府市と笛吹市の境にある標高716mの低山、大蔵経寺山。中央本線石和温泉駅から徒歩で登山口にアクセスでき、温泉宿への宿泊と合わせて気軽に楽しむのにちょうどいい山です。紅葉の季節に、のんびりと歩いてきました。
葛飾北斎も描いた富士山は雲に隠れて見えず
石和温泉駅のすぐ北側に見える大蔵経寺山は、登山口まで駅から徒歩10分ほど。
登山口の手前には同じ名前の寺院「大蔵経寺」が、山を背にして立っていました。お寺の名前が山の名前の由来になっているのでしょうね。
イノシシ除けのゲートを通過し、しばらくは広く緩やかな道を歩いていきますが、このあたりにはものすごい量のどんぐりが落ちていて、お子さんを連れたご家族がどんぐり拾いを楽しんでいました。
この後、道は2つに分かれますが、「山神宮」という社を通り、積石塚古墳群を歩くルートを登ることにします。
大きな岩がごろごろと並ぶ道で、岩の上を歩いていくことになるので、下山時や雨の後などは滑りやすそうです。登りで歩くことにして正解でした。
1時間ほどで山頂に着きます。樹林帯の中にあり、広場のようになっていますが、下る途中に眺望のよいスポットがあるはずなのでここでは休憩せずに先に進みます。
山頂からは来た道を戻るのではなく、もう1つのルートを歩きます。
こちらのほうが道幅も広く緩やかで紅葉も楽しめ、歩きやすい道でした。山頂から30分ほど下っていくと、眺望のよい、開けた場所に着きます。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」の一つに数えられる「甲州伊沢暁」という浮世絵は、この場所から眺めた朝焼けに染まる富士山を描いたとされているそうです。
残念ながらこの日は、ちょうど雲がかかっていて富士山は見えませんでしたが、笛吹市の街並みと青空を眺めつつ昼食を取り、下山しました。
設備の整った快適な和室でのんびりと過ごす
下山後は石和温泉駅に戻り、駅の南側に10分ほど歩いた場所にある温泉旅館、深雪温泉にチェックインします。
私が一人旅を始めて間もないころから何度も繰り返し宿泊している大好きな宿です。
宿泊したのは8畳の和室。トイレと洗面所がついており、一人で泊まるには充分過ぎるほど広く、空気清浄機やテレビなどの設備もしっかりそろっています。
障子戸を開けると広めの縁側があり、宿の前に流れる小川を眺めることができました。
飲泉も可能な自家源泉が毎分1415L湧出
まずは、チェックイン時に女湯となっていた「柿の湯」へ。
毎分1415Lという圧倒的な湧出量の自家源泉をもつ深雪温泉では、温度の異なる源泉を混ぜ合わせて、加水や加温なしで湧き出たばかりの源泉を楽しめるのがうれしいですね。
ほのかに卵臭の香る2種類の源泉が、常時浴槽にドバドバと注がれている様子は、何度見ても圧倒されます。
浴槽の縁から常にお湯があふれ出ており、これが本当の「源泉かけ流し」なんだなと、湯に浸かりながらうっとりと眺めていました。
広々とした露天風呂は、位置によって熱めの場所とぬるめの場所があるので、ときどき場所を変えて長湯を楽しみました。
湯口にはコップが置かれており、飲泉も可能です。夕食のタイミングで浴室が入れ替わります。
もう1つの「桃の湯」の露天風呂では、ひんやりとした空気の中で朝風呂を楽しみました。
地酒3種飲みくらべと甲州牛陶板焼きに舌鼓
夕食はお部屋食で、テレビを見ながらのんびり食べることができます。お気に入りの地酒「七賢 天鵞絨の味」が含まれる「地酒3種飲み比べ」をオーダーしました。1種類150mlずつ入っているので1人だとかなりたっぷりの量ですが、おいしいのでどんどん飲んでしまいました。
お刺身は「鮪、鯛、アオリイカ」の3種で、あしらいも美しく、日本酒が進みます。
肉料理は甲州牛陶板焼き、しっかり量があってうれしい。
ヒマラヤ岩塩を削って、さっぱりといただきました。
このほかにも、深雪温泉の源泉で魚介や野菜を蒸し上げた「源泉蒸し」などいただき、〆のご飯は炊きたての「鶏と牛蒡の釜飯」です。
デザートの蜜柑ゼリーまで、地酒を飲みつつすべておいしくいただきました。
翌朝の朝食は会場食です。ご飯は白米と雑穀米から選ぶことができます。
大ぶりな焼き鮭、鶏団子入り湯豆腐などの魅力的なおかずが並び、近くにある「納豆工房せんだい屋」の納豆から好きなものを選ぶことができます。私は「わかめ納豆」をチョイス。
納豆の他にもトロロやご飯などご飯のお供が盛りだくさんで、おかわりして朝からお腹いっぱいになりました。
*紹介した食事、サービスの情報は2020年3月取材時の内容です。
深雪温泉
料金 | 1泊2食付き/1名利用19,000円~※プラン、時期によって変動 |
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住所 | 山梨県笛吹市石和町市部822 |
電話 | 055-262-4126 |
プロフィール
月山もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
ひとり温泉登山
山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。