雪の金峰山でご来光を眺めたあとは、湯村温泉郷 弘法湯の極上ぬる湯に癒される

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第45回は日本百名山の一つに数えられる金峰山に登り、下山後は湯村温泉へ。

写真・文=月山もも


山梨県と長野県の県境にあり、日本百名山の一つに数えられる人気の山、金峰山。

冬に登るためには厳冬期用の装備が必要ですが、年末年始以降12月の週末は山頂直下の山小屋「金峰山小屋」が営業しており(要予約)、宿泊すれば時間に余裕をもって雪山登山を楽しむことができます。

山頂で日の出と朝焼けに染まる富士山を眺める

公共交通機関利用で金峰山に登る際は瑞牆山荘行きのバスを利用するのが一般的ですが、冬季は運休しています。

今回、私は韮崎駅から予約していたタクシーに乗り、瑞牆山荘まで来ました。費用は1万円少々かかってしまいますが、ご来光が期待できそうな好天予報だったので奮発しました。

歩き始めから雪がしっかりと積もっていますが、踏み跡があって歩きやすかったのでホッとしつつ歩を進めます。

富士見平小屋に向かう途中に見える瑞牆山も、うっすらと雪化粧していました

富士見平小屋に向かう途中に見える瑞牆山も、うっすらと雪化粧していました。

金峰山の稜線

大日小屋、大日岩を通過し、歩き始めてから4時間弱で稜線に出ました。積雪や凍結があるので慎重に歩かなければならず、無雪期よりはどうしても時間がかかってしまいます。

金峰山の「五丈岩」

山頂にある金峰山のシンボル的な大岩「五丈岩」の姿もはっきりと見え、近づくほどにその姿が大きくなることに励まされつつ、山頂に到達します。

金峰山山頂

少し雲が出て寒くなってきたので、記念撮影だけして金峰山小屋に向かいました。

金峰山小屋のおいしい夕食をいただいて早めに就寝し、翌朝は夜明け前に山頂へ。

金峰山山頂

雲一つない快晴となり、美しい日の出を眺めることができました。

金峰山山頂
金峰山山頂

富士山と五丈岩、そして反対方向にある八ヶ岳も朝焼けに染まっています。冬の朝の冷たく澄んだ空気の中、雪に包まれた山々が赤く染まる姿を眺める。この季節ならではの贅沢な時間を楽しみました。

この後は金峰山小屋に戻って朝食を取り、元来た道を下山します。帰りはバスが出ている増富温泉まで歩いて、韮崎駅行きのバスに乗りました。

広く日当たりの良い快適な部屋で疲れを癒やす

韮崎駅から電車で甲府駅に向かい、駅からバスで湯村温泉へ。

本日の宿、弘法湯にチェックインします。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯
湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

案内していただいたのは次の間と広縁付きの8畳の和室。

日当たりがとてもよく、冷蔵庫や洗面所、ウォシュレット付きのトイレも付いている快適なお部屋です。もちろんWi-Fiも完備されていました。

一休みしてから、お風呂に向かいます。

湯量も泡つきもたっぷり。人肌の極上ぬる湯

温泉浴室は男女別の大浴場と、空いているときに鍵をかけて利用する貸切風呂が1箇所あります。

まずは女湯へ。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

浴室に入った瞬間に、ほのかな卵臭に包まれます。

湯口からは常時、すごい勢いで源泉が投入されていました。二酸化炭素ガスが含まれているそうで、湯口の周りでは炭酸がパチパチと弾けているのが見えます。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

しばらくお湯に浸かっていると、肌にもびっしりと小さな泡がついていました。

弘法湯の源泉は、湯村温泉のほかの源泉と比べて温度が低めのぬる湯なのですが、だからこそこの泡つきを楽しむことができるのです。温度は低めでも、じっくり浸かっていると体がぽかぽかしてきます。

貸切の浴室はやや浴槽が小さくなりますが、大浴場と同じ源泉が、こちらもすごい勢いでかけ流されています。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

人肌のぬる湯に一人静かに浸かりながら、浴槽の縁からお湯がどんどんあふれていくのをいつまでも眺めていました。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

浴室は、男湯と女湯の交換はありませんが、貸切風呂を含め夜通しいつでも入浴できます。

お部屋でのんびり、地酒を飲みつつ馬刺しを

食事は、朝夕共にお部屋に運んでいただきます。

弘法湯の夕食

テレビを見ながらのんびりと、食事を楽しめるのはやはりよいものです。

弘法湯の夕食

お酒は山梨県を代表する地酒の「七賢」の冷酒を。生酒で、ほんのり甘みがあるおいしいお酒でした。

予約時に食事を3つのプランから選べるのですが「グレードアップ」プランで予約したときのみいただけるのが「馬刺し」です。

弘法湯の夕食

思った以上にたっぷりと量があり、にんにくと生姜が両方ついているのがうれしいですね。脂が少ないさっぱりした部位だったので、最後まで飽きることなくいただきました。

山梨県は海に面していない県ですが、マグロのお刺身やお寿司が好きで、マグロの消費量は全国2位なのだそうです。

弘法湯の夕食

こちらの宿のお刺身の4種盛り合わせにもマグロが入っていましたが、ほどよく脂がのったおいしいマグロでした。

弘法湯の夕食

紙鍋の寄せ鍋は帆立、たら、かに、鶏団子、豆腐、白菜、えのきだけ、海老と具だくさんで出汁もおいしい。

弘法湯の夕食

最後にご飯とお漬物とお味噌汁、フルーツをいただきました。

弘法湯の朝食

朝食もお部屋で。焼き鮭や卵焼き、ほうれん草のおひたし、しらすおろし、かまぼこなど、品数豊富ですべておいしくいただきました。

*紹介した食事、サービスの情報は2023年11月取材時の内容です。

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯

湯村温泉郷 杖温泉 弘法湯
料金 1泊2食付き/11,000円~※プラン、時期によって変動
住所 山梨県甲府市湯村3-16-16
電話 055-252-5105
公式サイトを見る

この記事に登場する山

山梨県 長野県 / 関東山地

金峰山 標高 2,599m

金峰山は奥秩父連峰の盟主である。これを「百貫の貫禄を具へた山」と絶賛したのは、“奥秩父の父”といわれた木暮理太郎であった。古くは日本武尊が東征の折、この地に鎧をおさめたとか、雄略天皇10年(467)に開山されたなどの伝説が残っている。  その後、室町時代に修験の総本山、和州・金峰山から蔵王権現を分祠し、大いに栄えた。  参詣道は9つも通じ、里宮の金桜神社の門前に、神職の家が70軒、参拝者の宿舎200軒を数えたという。  この山がいかに有名であったかは『甲斐国志』をひもとくとよく分かる。金桜神社とともに、7500字も費やして詳述している。表登拝口の金桜神社、猫坂、黒平(くろべら)を経て登るコースは、道中が長いので現在はあまり利用されていない。ルート上に、仏坂、御小屋沢、巫子ノ沢、賽ノ磧、御室小屋、勝手明神などの名が残る。  山頂は大きな積み木を重ねたような、花崗岩の御像石(五丈石)がそびえている。これは南アルプスの前衛、鳳凰山の地蔵仏岩と、甲府盆地を隔てて好対称をなしている。  この五丈石の下には、古い石灯籠や石囲いらしいものが残っている。かつては桧造りのお籠り堂があり、30人くらいが泊まれたという。記録によると、明治42年(1909)に焼失した。  さて、参籠者はいったいどこから水を得ていたのだろうか。原全教の『奥秩父』によると、「御影石うらの4人くらいはいれる岩陰の上約6m、3坪の岩間にたまる水で、量は40lに達する」とある。これが『甲斐国志』でいうところの「甲斐派美(かいはみ)」と呼ぶ小池ではないだろうか。  山容は準独立峰なので、眺望雄大、上信越の山々から八ヶ岳、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、富士山や御坂、毛無の山塊、近くに国師ヶ岳から大菩薩嶺など、なかなかの眺めである。  山頂直下に、千代ノ吹上げの絶壁があるが、この岩にまつわる伝説が残っている。それはこんな話。山麓の大豆生田(まみようだ)に信心深い大工夫婦がいた。2人が金峰山登拝の途次、女人禁制のたたりか妻の千代は足を滑らせ、谷底へ落ちてしまった。夫は妻の許しを神に乞うべく、山頂で7日間断食をした。そして満願の日、一陣の風とともに妻は無傷で再び姿を現したという。それから、この絶壁を村人は「千代ノ吹上げ」と呼ぶようになった。  登山コースは、増富温泉から富士見平小屋を経由して7時間、梓山から西股沢に沿って5時間30分、金桜神社から猫坂を経て11時間弱、縦走コースは国師ヶ岳から3時間30分など。

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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