頸城山塊・雨飾山 色づき始めた荒菅沢奥壁の紅葉と岩峰を楽しむ
妙高山、火打山が連なる頸城(くびき)山塊の西端にそびえる雨飾山。荒菅沢奥壁の岩壁「布団菱」を彩る紅葉が素晴らしい。
雨飾山は、長野県と新潟県の県境に位置する山です。南北に登山道が延び、両県にそれぞれ登山口がありますが、今回は長野県側から日帰りで往復するコースを紹介します。
往復7時間以上かかりますが、途中に山小屋等の施設はありませんので、しっかりと計画していきましょう。
たびたびの台風襲来で、天候不安定のなか、晴れ間の一日をみつけ、雨飾山に向かいます。紅葉のピークにはまだ早いようですが、週末も天候不安定なので、行ける機会を逃さずにという思いです。
前夜、雨飾山キャンプ場にて車中泊をしましたが、朝はすでに十数台の車が停車しています。キャンプ場の登山口からやや下り気味の道を進みますが、やがてすぐに急登が始まります。ブナ平を経て、黄色くなり始めのブナの樹林帯を進むこと1時間半ほどで、荒菅沢徒渉点への下降点へ。
その少し手前から、樹林越しに色づき始めた雨飾山の険しい山容、なかでも、紅葉・黄葉に囲まれた布団菱の白い岩壁が見えはじめてきます。荒菅沢徒渉点は唯一の水場で、多くの登山者が休憩しています。
ここからさらにハシゴや岩場の連続する急登が続きます。紅葉のピーク時には登山者の渋滞が発生するところです。
笹平からは笹が茂る広々した尾根道となり、双耳峰の山頂が姿を見せます。
山頂部はガスに覆われることが多かったのですが、それでも時折見える青空から光が差す布団菱の迫力ある岩壁と紅葉の美しいハーモニーを楽しむことができました。
山頂は石仏のある南峰と北峰の二つのピークの双耳峰になっていて、どちらも登山者でいっぱいでした。ガスで展望がきかないのは残念でしたが、ちょうど山頂から下る時には、霧のなかの乙女の横顔のかたちにカーブを描く登山道の脇の小高い丘の上でオカリナを合奏する二人の登山者がいて、その美しい調べが広い尾根にしみ渡るように響き、思いがけず、とても印象的な山行となりました。
下りは往路をピストンなので、ぞくぞくと登ってくる登山者とすれ違うことが多く、ハシゴや落差が大きい下りでは、とくに慎重に下るように心がけました。(取材日=2018年10月3日)
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
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