秋から初冬におすすめ! 南アルプスの絶景を眺められる前衛の山厳選4コース
季節は晩秋から冬へ。空気が澄んでくるこの時期は、雄大な山々を見渡す絶好の機会。今回は、南アルプスの山に注目。南アルプス北部に詳しい山岳写真家の伊藤哲哉さんと、南アルプス南部を中心に500日以上入山して歩いている岸田明さんのお二人に、南アルプスを展望できるおすすめの山々を厳選して紹介していただきました。
構成=山と溪谷オンライン
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甲斐駒ヶ岳から鋸岳などの大パノラマ中山(なかやま)
山梨県/887m
山梨県北杜市(ほくとし)白州(はくしゅう)にある低山・中山。勾配は比較的緩やかで登りやすく、広い山頂には展望台があるので、大パノラマの山岳絶景を満喫できる。
歴史的には武川衆(むかわしゅう、戦国期に活躍した辺境武士団)の拠点・中山砦としても知られ、山頂に烽火台(ほうかだい、のろしだい)も備えた山城である。武田氏・甲斐国の北の要として、重要な役割を担っていた。武田氏滅亡後、武川衆は徳川家康に帰属し、1582(天正10)年8月の天正壬午(てんしょうじんご)の戦いで中山砦を警護し、北条方を相手に活躍したという。各県に同じ名前の山があるが、ここ北杜市の中山は台ヶ原(だいがはら)、白須(しらす)、横手、柳沢、山高(やまたか)、牧原(まぎのはら)など地域の集落に囲まれていることに由来するといわれている。三方に釜無川(かまなしがわ)、大武川(おおむかわ)、尾白川(おじらがわ)が流れているのも特徴的だ。
ここでは、「道の駅はくしゅう」を起点に往復するコースを紹介しよう。本コースにはトイレはないので事前にすませて、午前中なるべく早めに道の駅を出発。国道20号を右に折れて尾白川を渡る。のどかな田畑の風景を見ながら舗装道を進み、中山峠へ。峠からの登り始めの登山道は、一般社団法人北杜山守(ほくとやまもり)隊による近自然工法(地質や地形を踏まえその環境や自然に適した方法)で整備されており歩きやすい。勾配が急な箇所は適宜、ロープを利用しながらゆっくり登ろう。平坦な道の樹林帯をしばらく歩くと、やがて視界が開けて展望台が見えてくる。
山頂展望台は13mの高さがあり、三六〇度の山岳絶景が眺められる。南アルプスの甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)、烏帽子岳(えぼしだけ)、鋸岳(のこぎりだけ)のほか、日本三大急登の黒戸(くろと)尾根や日向八丁(ひなたはっちょう)尾根、左に目を向けるとアサヨ峰や早川尾根、鳳凰三山(ほうおうさんざん)の大パノラマである。南アルプスの根雪は例年1月ごろからと遅めだが、天気やタイミングによっては晩秋でも雪をまとった姿が見られるかもしれない。
また東には富士山、北東には秩父連山、北には八ヶ岳(やつがたけ)も眺められる。時間の許す限り山岳絶景を楽しんだ後は山頂へ向かう。展望台から5分ほど南下すると、「中山砦」の説明書きがある中山山頂だ。周囲を見回すと、かつて山城があった土塁などの痕跡があるので見てみよう。
帰りは、往路を「道の駅はくしゅう」に戻る。時間に余裕があれば、甲州街道の宿場町として栄えた台ヶ原宿に立ち寄ってみよう。今でもその趣が残っており、銘酒「七賢」(しちけん)や和菓子で有名な「金精軒」(きんせいけん)など地元の特産品も買えるので、より充実した山行となるだろう。(文・写真=伊藤哲哉)
MAP&DATA
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今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。
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