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八ヶ岳で空模様と天気図を読み合わせ。天気図のポイントを解説

山の天気を知って安全に登山を楽しもう!
基礎知識 2020年10月06日


山梨県のお天気キャスターになってはじめての夏。新型コロナウイルスの感染拡大がなかなかおさまらない今年でも、比較的登山がしやすい環境を提供している八ヶ岳に登ってきました。お天気キャスターが天気のどんなところに着目しながら登山計画を立てているのかを天気図のポイントや山で撮った写真も交えながら解説します。山行に役立てていただけたら幸いです。

 

まずは現在の天気を把握しよう

2020年8月29日(土)と30日(日)の週末を利用して、以前から歩きたかった八ヶ岳の赤岳~麦草峠までの縦走に挑戦します。ロングコースですから、長い時間安定して晴れてほしいところです。出発する前に、現在の天気の状況を整理しておきましょう。


出発2日前の27日(木)には、台風8号から変わった温帯低気圧から前線が延び、翌28日(金)も大陸から北海道の北には前線が停滞していました。気の早い人は早速「秋雨前線」と呼び始めていたかと思いますが、確かにこの前線の南側は夏の暖かく湿った空気で満たされていました。28日の猛暑日地点は全国観測地点の1割以上にのぼります。また、南の海上では台風9号も発生しました。

 

週末の天気の予想を立てよう

天気予報や地上天気図、高層天気図を見比べながら、29日と30日の天気の予想を立てましょう。

まず、tenki.jp登山天気アプリで、八ヶ岳の天気予報を確認します。気象庁の長野中部・山梨中西部の天気予報も併せて参照すると良いでしょう。

私の出演する天気コーナーでは、「晴れのち曇りで昼過ぎから所により雨。週末はお出かけの際、急な激しい雷雨に注意が必要」とお伝えしたかと思います。なぜこの天気予報になっているのかの理由を考えます。

 

・地上天気図

29日は日本の東に中心がある高気圧に緩やかに覆われていますが、30日になると高気圧は退いてしまいます。一方、北日本に停滞している前線には低気圧が発生し、30日にかけてじわじわと南下しています。台風9号はまだ遠く離れたところを進んでいるので、直接の影響はなさそうです。

 

・高層天気図

夏の太平洋高気圧は、500hPaの高層天気図では5880mの等高度線に対応するとされています。地上天気図では高気圧は退いてしまいますが、500hPaの高度では、中心が東西に分かれる傾向があるものの高気圧が健在なようです。渦度の分布を見ても、顕著な気圧の谷の接近は予想されていません。

大きく西まで張り出した高気圧が今年の猛暑をもたらした要因のひとつとも言われていますが、850hPaの等温度線を見ると、この週末も広く18℃の暖気に覆われています。今回は、八ヶ岳の稜線でも特段寒い思いをすることはなさそうだと予想できます。

一方、500hPaの等温度線を見ると30日にはシャープな三角形をした寒気の突っ込みが予想されています。C(寒気)のスタンプもあります。北日本が中心だと思いますが、大気の状態を不安定にさせるかもしれません。

 

・相当温位図

この時期は日ごろから345K以上の暖湿空気が入りこむことが多いですが、北日本の前線に向かって南西方向からの暖湿空気の流入が強まっています。降れば局地的には大雨のポテンシャルがありそうです。また、細かな矢印は風向を表していますが、29日、30日とも、午後は中部山岳で風がグルグル巻いています。ヒートローと呼ばれる、内陸特有の小低気圧が発生する予想です。

このことからも、やはり午後は雷雨の可能性が高いと考えた方がよいでしょう。この時期、八ヶ岳から奥秩父の甲武信ヶ岳周辺は内陸へと入り込む海風の終着地点となるため雷雲の多発地帯です。

 

・総合すると

太平洋高気圧に覆われるため、晴れベースの予報になっていると考えられます。非常に暖かい空気に覆われているので、夜間でも特段寒い思いをすることはないでしょう。ただ、午後は湿った空気や上空の寒気の影響で大気の状態が不安定になり、局地的な雷雨の危険性が高いようです。とくに八ヶ岳を含めた中部山岳は雷雨の可能性を見込んだ方がよく、なるべく午前中に行動を終わらせたいところです。

 

■当日の天気をリポート 予報は当たったのか

当日の天気を実際の写真を交えて紹介しましょう。

29日(土)の朝に甲府を出発し、美濃戸登山口から登り始めました。山梨在住だと、東京に住んでいた頃に比べて、当日の朝は普段通りの時間に起きてもゆうゆう間に合うのが嬉しいところです。茅野に向かう電車からは、晴れ渡った八ヶ岳を望むことができました。

美濃戸口から登り始めると次第に積雲が増えていき、稜線に出たころにはガスにまかれてしまいました。午後2時前に宿泊予定の小屋についた直後に30分ほどの雨。麓から見ると雄大積雲が八ヶ岳に寄り掛かるように見えたことでしょう。ただ、雨があがると雲は少なくなり、晴れました。高気圧に頭を押さえつけられたのか、積雲はそれほど成長しなかったようです。夜も天気の崩れはなく、星空を見る際も長袖のフリースはいらないほどでした。

30日(日)の朝は雲海から始まりました。八ヶ岳より背の高い雲はなく、稜線からの素晴らしいを思う存分に楽しむことができました。この日は夏にしては珍しいくらい遠くの見通しも効き、上空高気圧からの下降気流が強いのだろうかと感じました。

ただ、やはり気温が上がってくると雲が成長し始めます。八ヶ岳周辺では野辺山側から雲が沸き立つのが定番ですが、午前8時ごろに天狗岳を通過したころから雲が稜線を横切るようになり始めました。

その後もときどき大きな積雲が視界を遮るようになり、午前11時ごろに麦草峠に抜けたときには空はすっかり曇天となっていました。すぐにバスで茅野駅に降りたので、私自身が雨に遭遇することはありませんでしたが、雨雲レーダーを見る限り正午ごろからは八ヶ岳のあちこちで雨が降ったようです。

以上から、当日の天気は天気予報通りに推移したようです。翌31日(月)に、天気コーナーで八ヶ岳からの雲海の様子を紹介しました。

教えてくれた人

宮田雄一朗

日本気象協会所属の気象予報士。山梨県で気象キャスターをしています。天気予報をきちんと伝えられるように奮闘中。日々の天気の話題の中で、登山にちょっと役立つ知識もお届けします。

日本気象協会

日本の気象コンサルティングサービスのパイオニアとして1950年に創立。以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。
近年ではAIやIoT、気象ビッグデータの活用を通じ気象の調査解析、情報提供の精度を向上させ、気候変動への適応など持続可能な世界を実現する活動を支援している。
 ⇒tenki.jp

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