QRコードで現在地を確認できる標識を新設。「脊振の自然を愛する会」|日本山岳遺産の横顔 vol.01
豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。自然保全や登山道整備に取り組む団体の横顔を伝える。
『山と溪谷』2021年1月号掲載記事
写真=脊振の自然を愛する会
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年1月号掲載記事

脊振の自然を愛する会 〈 2019年度認定 〉
Area:脊振山系Recent activity:レスキューポイントの設置
Group profile:
2012年設立。福岡市の西南学院大学ワンダーフォーゲル部卒業生、登山愛好家、地元自治体職員ら脊振山系を愛する約60人がメンバー。道標設置など登山道整備の活動を続けている。2019年に環境省自然歩道関係功労者表彰を受けた。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/2019-sefurisankei.html
九州北部、福岡と佐賀の県境にまたがる脊振山系。全長約70kmの大きな山域で、最高峰の脊振山(1055m)をはじめとした山々は両県市街地からのアクセスもよく、地元の登山愛好家らに親しまれている。山頂から見える博多湾の展望や、春のコバノミツバツツジ、夏のオオキツネノカミソリといった季節ごとの多様な花・植物などが見どころだ。
そうした魅力ある脊振山系で、登山道整備を続けているのが「脊振の自然を愛する会」だ。福岡市の西南学院大学ワンダーフォーゲル部の卒業生や学生が2008年から同市早良区と協働で道標を立てる活動をスタート。2012年に設置を終えたが、取り組みを継続すべく、登山愛好家や区の職員も参加し、会を設立した。

県内外から登山者が数多く参加
同会代表の池田友行さんは、活動を始めた経緯をこう振り返る。
「今からもう50年以上前ですが、私たちが大学生のころ、登山道に道標を立てたんです。それが朽ちてしまっていたので、再度取り付けることにしました。長年のさまざまな思い入れがある脊振の山にお礼の気持ちがありましたね」
その後、同会ではワンダーフォーゲル部後輩の大学生も参加する清掃登山を企画したり、毎年4月下旬に脊振山北西の金山で山開きを行なったりして、地元の山と住民をつなぎ、楽しみながら活動してきた。2018年からは脊振山系に関わるボランティア団体や自治体などが活動報告をする「脊振サミット」の事務局として横のつながりを生み出した。

標識を取り付ける
そして2020年には、日本山岳遺産基金の助成金を活用し、レスキューポイントの標識を作成。脊振山から三瀬峠にかけてのルート上の約30カ所に取り付けた。標識のQRコードをスマートフォンで読み取れば現在地を確認できる仕組みになっていて、道迷い防止のほか、登山中の急病や負傷時など、消防隊への正確な通報や迅速な救助につながる。スマホの操作に慣れてない人にも役立つように各標識にはナンバーを振り、通報時に居場所を知らせることができる。
「まだ遭難や道迷いはなくなりません。登山者が安心して安全に脊振のすばらしい自然を楽しんでほしい。そういう思いで、これからも活動を続けていきたいと思います」
★日本山岳遺産認定地 詳細:脊振山系[ 福岡県・佐賀県 ]脊振の自然を愛する会(2019年)
日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します
日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。
支援団体の条件
- 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
- 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
- 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。
助成対象となる活動費の主な用途
- 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
- 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
- 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。
助成金総額 250万円(予定)
詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html
プロフィール
日本山岳遺産基金
日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/
山と溪谷編集部
『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。
日本山岳遺産の横顔
日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!
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