スカイブルーに雪の鋭峰と雲海の絶景が待っている武尊山へ

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スキー場のリフト利用ができてアクセスが良く、雪山初心者にも人気の武尊山。青空の下、雪の稜線を歩きました。

写真・文=奥谷 晶

雲海を背景に樹氷をまとった樹林帯を従え、天をつくようにそびえる剣ヶ峰の鋭峰

豪雪地帯の上越国境に近く、豊富な積雪で知られる上州武尊山は、積雪期にはスキー場の駐車場やリフトが利用できるなど、アクセスの良さで雪山初心者にも人気です。

しかし、いったん悪天候となれば、強風、ホワイトアウト、雪庇の崩壊、ラッセルと厳冬期の厳しい洗礼を覚悟しなければなりません。本格的な寒波が到来した1月の貴重な登山日和の日に、武尊山に行ってきました。

MAP&DATA

コースタイム:川場スキー場~剣ヶ峰山~武尊山(往復):約5時間

ヤマタイムで周辺の地図を見る

この日は快晴・微風の絶好のコンディション。川場スキー場のリフトを乗り継いで標高1870mのゲレンデトップが登山口です。いきなりの急斜面を登り、剣ヶ峰山をめざします。前日のトレースもしっかり残っていて、持参したワカンの出番はありません。アイゼンとストックで高度を稼ぎます。スキー場からは小さな出っ張りにしか見えませんが、剣ヶ峰山からは岩稜まじりの雪稜の急降下になります。斜面を下ると前方に武尊山山頂へ続く稜線が続きます。

剣ヶ峰から武尊山山頂へ続く稜線を見渡す。西側は樹林帯、東面は鋭く切れ落ちている

西斜面は樹氷をまとった樹林帯となっていますが、東面は雪庇も発達し、切れ落ちています。天気は微風・快晴で、まさに雲海上の快適な雪稜歩きを堪能できました。振り向くと2000m級の山とは思えない剣ヶ峰の天をつく鋭峰は、白く輝いて美しく、おおいにアルペン気分を盛り上げてくれました。

鋭く突き立った剣ヶ峰から岩稜を慎重に下り、雪の急斜面から振り返る

頂上の山頂標はすでに雪の下です。さすがに頂上付近は10m前後の風があり、長居はできません。風が強まるとトレースも消えがちです。さらに、雪庇が発達中で、大きな亀裂も見えます。ホワイトアウトなど視界不良時には要警戒です。

武尊山山頂直下。視界不良時には発達した雪庇に警戒が求められる

この日の午後には雲が広がり、翌日以降かなりの降雪が予測されており、状況は一変するものと思われます。剣ヶ峰の雄姿に去りがたく、眼前に広がる360度の展望、浅間山や赤城山などをながめながら、ゆっくりと下山しました。(取材日=2017年1月29日)

※川場スキー場のリフト利用での登山には、スキー場用登山届の提出と、ココヘリの装着が必要です。また、ゲレンデ内の徒歩での下山は禁止されています。詳しくは、川場スキー場のHPをご覧ください。

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。


武尊山データ

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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