熊本県・次郎丸嶽&太郎丸嶽 兄弟愛伝説が残る天草の山を登る

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熊本県・天草の次郎丸嶽と太郎丸嶽。美しい兄弟愛伝説が残る、二つの山を登ります。山頂は有明海や雲仙岳の大展望が広がります。

太郎丸嶽手前の露岩から見る有明海と雲仙岳

立春は過ぎても、まだ風は冷たく雪が降る日もあったりすると、暖かな熊本・天草方面の山に出かけたくなります。

天草諸島の山は、最高峰の倉岳682m・念珠岳503mなどそれほど標高の高い山はなくても、個性的で山頂から海を望める山が多いのが特徴です。

今回選んだ山は、次郎丸嶽・太郎丸嶽です。九州百名山に選ばれたこの山は、東側がスパッと切れ落ちた山容と山頂から遮るもののない展望に人気があります。

また、次郎丸嶽は山頂に弥勒菩薩が祀られた古来より信仰の山です。昭和初期の外務大臣・松岡洋右は、この地を訪れたとき「逝く秋や巨人眠れり次郎丸」と詠んだそうです。太郎・次郎の兄弟愛の伝説も残り地元に愛されている山に登ることにしました。

モデルコース:市営無料駐車場~太郎丸嶽~次郎丸嶽~市営無料駐車場

コースタイム:市営無料駐車場(10分)新登山道分岐(20分)分岐(20分)太郎丸分れ(30分)太郎丸嶽(20分)太郎丸分れ(30分)次郎丸嶽(25分)太郎丸分れ(15分)分岐(15分)市営無料駐車場 計約3時間5分

⇒太郎丸嶽・次郎丸嶽周辺の登山地図を見る

国道324号線から少し入った場所にある、市営無料駐車場に車を停めます。ここがスタート地点となる今泉登山口です。あづまや、登山案内図、太郎丸・次郎丸物語解説板などがあります。もし満車の場合は国道沿いの食事処おかむらの近くに臨時駐車場もあります。今泉地区交流センターグランドのトイレが利用でき、地域の皆さんに登山者が歓迎されていることを感じます。

登山口からは、随所に設置された案内板と手作りのアニメキャラクターが導いてくれます。

手作りキャラクターが賑やかにお出迎え

西辺地区に入ると、正面に岩だらけの次郎丸嶽が聳え圧倒されます。

地区の中の建材店の前で新旧登山道の分岐となります。行きは新登山道から、帰りは旧登山道を戻ることにして、左の道を取ります。

すぐに、石垣と民家の間を右に曲がり路地に入ると登山道になります。

尾根の道は途中で谷から来た旧道に合流します。帰りはこの旧道を下って登山口へ戻ります。

照葉樹の道はヤブツバキの花が目を楽しませてくれます。やがて「長寿の湧水」がある谷を横切ると遠見平にでます。休憩にいい場所ですぐ先が太郎丸分れの分岐点です。「長寿の湧水」は水が出ていないときもあるようです。

まずは、お兄さんの太郎丸嶽を目指します。風化した砂岩の岩稜帯を登ると大きな露岩の展望台に出ます。岩の裏側に回り込むと大展望の岩の上に立つことができます。

次郎丸嶽が大きく迫り碧い海が息を呑むほどの美しさです。

太郎丸岳の中腹から次郎丸岳を振り返る

展望台から登り返すとすぐに、太郎丸嶽山頂です。

先に次郎丸嶽を目指す人が多いのでしょう、こちらは静かな山頂でお昼にする事ができました。

太郎丸分かれまで戻ったら、次郎丸嶽を目指します。

しばらくは緩やかな登りの快適な道ですが、次郎落し付近まで来ると石段状の急坂に変わり、緩やかになると松尾尾根ノ頭の取り付きです。

松尾尾根ノ頭にある大きな岩を登る

ここには、砂岩の巨大な丸い岩がありそれを乗り越えて行きます。岩には太くて長いロープが設置されています。フリクションをきかせながら、岩の上に立つと島原湾に浮かぶ雲仙岳の絶景が広がっています。岩に腰掛けてしばらく景色でも眺めていたくなるような場所です。

弥勒菩薩の祠を過ぎると巨岩が積み重なった次郎丸嶽山頂です。三角点と方位盤が設置され、東側はおよそ50mの切れ落ちた絶壁で、岩に立てば足がすくむ高度感です。

次郎丸嶽山頂も東側は絶壁となっている

北側には太郎丸嶽や天草松島や雲仙岳と紺碧の海が広がり、東側には観海アルプスの高舞登山から龍ヶ岳までの長い尾根を一望できます。

展望を楽しんだら、最初の分岐点まで戻り左の旧道を下って登山口へと戻ります。

天草は、海鮮の美味しいところです。立ち並ぶお店の中から一軒を選び美味しいお魚を食べて家路につきました。

 

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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