山岳地帯も厳しい暑さが続く。下山するまで集中力を保つことが大切　島崎三歩の「山岳通信」 第231号

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年8月13日に配信された第231号では、厳しい暑さで疲労して起きる遭難事故が起きていることに言及。集中力を切らさないために、こまめな補給と休憩を呼びかけている。

8月13日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第231号では、期間中に起きた11件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

• 8月2日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、単独で入山した79歳の男性が、木曽駒ヶ岳から千畳敷へ向けて下山中に八丁坂付近で転倒して滑落、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して遭難者を救助した。

• 8月4日、北アルプス唐松岳で、2人パーティで入山した82歳の女性が、八方尾根を散策中に木道を踏み外して転倒し、足を負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して、遭難者を救助した。

• 8月5日、北アルプス白岳で、2人パーティで入山した64歳の男性が、唐松岳から五竜岳へ向けて縦走中に転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員及び大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して、遭難者を救助した。

• 8月5日、霧ケ峰高原車山で、単独で入山した74歳の男性が、車山から下山中に石につまずき転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。諏訪広域消防署員が出動して、遭難者を救助した。

• 8月5日、南アルプス仙丈ヶ岳で、2人パーティで入山した78歳の女性が、仙丈ヶ岳から大仙丈ヶ岳へ縦走中に滑落して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して、遭難者を救助した。

• 8月6日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した59歳の男性が、北鎌尾根を登山中に道に迷い行方不明になる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

• 8月7日、北アルプス西穂高岳で、単独で入山した57歳の男性が、西穂高岳から奥穂高岳へ向けて縦走中に鎖場で足を踏み外して転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して、遭難者を救助した。

• 8月7日、北アルプス涸沢で、2人パーティで入山した60歳の男性が、北穂高岳から上高地へ向けて下山中に涸沢で疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。山岳遭難救助隊員等が出動して、遭難者を救助した。

• 8月7日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、3人パーティで入山した50歳の男性が、木曽駒ヶ岳山頂から下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動し、遭難者を救助した。

• 8月8日、北アルプス西岳で、4人パーティで入山した50歳の男性が、燕岳から槍ヶ岳へ向けて縦走中に西岳付近で転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して、遭難者を救助した。

• 8月9日、北アルプス槍ヶ岳で、2人パーティで入山した22歳の男性2人が、槍沢から北アルプス槍ヶ岳に向けて登山中に水俣乗越付近で道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。救助に向かっている。

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月1週は、11件の山岳遭難が発生し、うち6件は転倒によるものです。夏本番の厳しい暑さにより、標高の高い山域でも日中は気温が上昇しています。コロナ禍により、久しぶりの登山の方や初めて登山をする方もいるかと思いますが、計画を立てる際には、行程や技術面・体力面を考慮するだけでなく、厳しい暑さによる疲労も考慮しましょう。また、持病をお持ちの方は、医師に必ず相談し、決して無理をしないようにお願いします。

なお、暑さと疲労で集中力が切れることにより、転倒や滑落のリスクも高まります。行動中は、のどの渇きを感じる前に、スポーツドリンクなどの塩分を含む飲料水をこまめに補給しましょう。また、ハンガーノック、いわゆる「シャリバテ」にならないためには、空腹を感じる前にエネルギーを補給をすることが大切です。下山するまで体力や集中力を切らさないために、こまめな補給を心掛けましょう。

今週は前線や低気圧の影響により、天候が崩れる予報が出ています。稜線などは、猛烈な風雨となる場合があり、夏季でも低体温症のリスクが伴います。最新の天候を確認し、無理のない計画・行動をしましょう。

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報（7月21日付）」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への５つのお願い（PDF）」を守ってください。