遭難事故の多発傾向が継続。安全登山の意識を高めた行動を! 島崎三歩の「山岳通信」 第239号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年10月7日に配信された第239号では、9月中旬から遭難件数が高い状況が続いていることについて言及。もしものときに自分で自分を守る準備をしておくことを推奨している。

 

10月7日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第239号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月27日、北アルプス爺ヶ岳で、2人パーティで入山した62歳の女性が、爺ヶ岳から柏原新道を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月27日、中央アルプス宝剣岳で、2人パーティで入山した68歳の女性が、木曽駒ヶ岳へ向けて登山中に転倒して足を負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署員及び中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月29日、下伊那郡喬木村中口沢付近の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した79歳の男性が行方不明となる山岳遭難が発生。30日に岐阜県消防防災ヘリが出動して、男性を発見して救助したものの、死亡が確認された。男性は滑落した模様。

  • 9月29日、松本市保倉山で、2人パーティで入山した51歳の男性が、保倉山から下山中に疲労と体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。松本広域消防消防署員が出動して男性を救助した。

  • 9月29日、木曽郡大桑村糸瀬山で、きのこ採りのために単独で入山した58歳の男性が斜面で滑落して負傷。木曽広域消防消防署員が男性を救助した。

  • 9月30日、木曽郡木曽町三岳地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した69歳の男性が、きのこ採り中に発病により行動不能となる遭難事故が発生。木曽広域消防の消防署員が男性を救助した。

  • 10月1日、伊那市長谷地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した73歳の男性が斜面で滑落。伊那警察署員と上伊那広域消防消防署員が出動して男性を救助したものの死亡が確認された。

  • 10月1日、北アルプス白馬岳で、2人パーティで入山した66歳の男性が、栂池登山口から白馬岳に向けて登山中に疲労と体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。付近の山小屋関係者が男性に付き添い、山小屋へ収容した。3日に大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して救助した。

  • 10月1日、北アルプス槍ヶ岳で、単独で入山した48歳の男性が、七倉登山口から槍ヶ岳北鎌尾根に向かったまま行方不明になっている。

  • 10月2日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、7人パーティで入山した47歳の女性が、中岳のコルから阿弥陀岳に向けて登山中に落石により負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

八ヶ岳連峰阿弥陀岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月4日付

  • 10月2日、南アルプス仙丈ヶ岳で、2人パーティで入山した70歳の男性が、仙丈ヶ岳から下山中に転倒して負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。南アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 10月3日、北アルプス白馬鑓ヶ岳で、単独で入山した57歳の男性が、白馬鑓ヶ岳から唐松岳に向けて縦走中、登山道から外れたのち疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 10月3日、北アルプス唐松岳で、単独で入山した71歳の男性が、唐松岳から八方尾根を下山中、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス唐松岳での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月4日付

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

10月1週は、13件の遭難が発生しました。きのこ採り中の遭難は4件発生し、そのうち2名の方がお亡くなりになっています。登山中の遭難も9件発生し、前の週から遭難の多発傾向が続いています。

きのこ採り遭難では、地元の高齢者が滑落し、負傷、死亡する事例が大半を占めています。きのこ採りに行かれる場合は足場の不安定な斜面には入り込まないように十分注意すると共に、ご家族や親戚・ご友人にきのこ採りをされる方がいれば、一声かけて周囲からの注意喚起にも努めてください。

登山中の遭難では、転倒、滑落に加え、バテた状態や天候不良時に行動した事による、低体温症の行動不能等も散見されます。山岳地帯では救助を要請しても実際にヘリや救助隊が到着するまでには相当の時間を要します。アクシデントに遭遇し身動きがとれなくなった場合でも、その場で一晩を過ごせるだけの最低限の装備(シェルター、防寒具、コンロ、非常食など)を携行するようにしましょう。

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(9月22日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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