いざというときの備えのために、ビバークセットの携行を 島崎三歩の「山岳通信」 第335号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年4月4日に配信された第335号では、八ヶ岳・赤岳で発生した2件の遭難について取り上げ、いざというときの備えの重要性を強調している。


4月3日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第335号では、期間中に起きた4件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 3月24日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、単独で入山した46歳の男性の行方がわからなくなっている。

  • 3月27日、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した53歳の男性が赤岳主稜を登山中に滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

八ヶ岳連峰赤岳の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)
  • 3月27日、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した27歳の男性が赤岳主稜を登山中に、技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

八ヶ岳連峰赤岳の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)
  • 3月30日、金峰山で、単独で入山した24歳の男性が、金峰山に向けて登山中に足を踏み外して滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

金峰山の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

3月4週は、中央アルプスに単独で入山後、行方不明となる山岳遭難が1件発生しています。
中央アルプスでは3月に入ってから、これを含めて3件の行方不明遭難が発生しており、いずれも発見となっていません。
冬季の単独登山はさまざまなリスクを伴います。計画しているルートが自身の経験や力量に見合っているか、しっかりと検討しましょう。また、入山前に最新の気象情報を必ず確認しましょう。冬季は積雪や凍結など、ルートの状況によってコースタイムが大幅に変わります。ゆとりを持った計画を心掛けてください。
地図アプリを活用することで自身の現在地を正確に把握することができます。残りの行程や疲労度等を考慮して引き返す判断にも有効です。紙地図と併用して有効に活用しましょう。また、地図アプリは軌跡情報を記録しているため、いざというときは捜索救助活動にも非常に役に立ちます。

3月5週は、県内で3件の山岳遭難が発生しました。
八ヶ岳で発生した遭難は、バリエーションルートを登山中に同行者とのコミュニケーション不足により、1人が滑落して負傷し、もう1人は行動不能となりました。県警ヘリコプターが出動するも現場周辺の気流が安定せず、当日の救助を断念して遭難した2人はその場でビバークをしました。翌日の早朝に県警ヘリコプターで救助となっています。
バリエーションルートは一般ルートと違い、自分自身でルートを切り拓いていく楽しさがあり、登り切った後の達成感は一般ルートでは味わえないものだと思います。ですが、バリエーションルートでのわずかな気持ちの隙、小さなミスは大きな遭難につながってしまいます。日々、自分自身の実力を向上していただき、実力に合ったルート設定と準備、同行者との意思疎通などをして、最後まで気を抜かずに挑戦をお願いします。特に、ロープで確保が必要な場合は、お互いにコミュニケーションがしっかりと取れるようにしましょう。

ビバークセットは携行していますか。防寒具やツエルト、食料、飲料水、ガスなど・・・、軽量化を理由にこれらのビバークセットを安易に抜いてしまうと、救助隊が到着するまで体力を維持することができません。また、せっかく準備しても使用方法を熟知していなければ役に立ちません。準備をしたビバークセットの使用方法は、入山前に使ってみることが非常に重要です。いざというときの備えを抜かりなくお願いします。

長かった冬も終わり、暖かい地域では桜の便りも聞こえる季節となりましたが、長野県内の標高が高い2000mから3000m級の山はまだまだ冬山です。これから登山を計画されている方は、入山前に冬山装備品の準備を入念にお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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