文豪も愛した美しい自然を守り・伝える。岩手山地区パークボランティア連絡協議会|日本山岳遺産の横顔 vol.11

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。第11回は、奥羽山脈の岩手山周辺で登山道補修や外来植物駆除などをしている岩手山地区パークボランティア連絡協議会を紹介する。

写真=岩手山地区パークボランティア連絡協議会 取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年11月号掲載記事

写真=岩手山地区パークボランティア連絡協議会
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年11月号掲載記事

 

■日本山岳遺産候補地を募集中!

岩手山地区パークボランティア連絡協議会

岩手山地区パークボランティア連絡協議会 〈 2017年度認定 〉

Area:岩手山
Main activity:外来種駆除・環境美化
Group profile:
網張ビジターセンターが開館した2005年、個人で活動していた地元住民らが岩手山地区パークボランティアとして登録。2014年に岩手山地区パークボランティア連絡協議会が発足した。周辺に生息する動物にちなみ、通称「モモンガの会」。
http://iwatesanpv.s1009.xrea.com/

奥羽(おうう)山脈北部に位置し、岩手県の最高峰として堂々とそびえる岩手(いわて)山。噴火を繰り返してできた成層火山で、多様な地形・地質が育む数々の高山植物は登山者を魅了してやまない。また秀麗な山容は、仰ぎ見る人々の心に触れ、古くから多くの文学・芸術作品にも登場してきた。地元出身の石川啄木や宮沢賢治も愛した山である。

そうした貴重で美しい自然を守り、伝えているのが「岩手山地区パークボランティア連絡協議会」。パークボランティアとは、環境省の登録を受けて各地の国立公園で活動する人々のことで、同会は十和田八幡平(とわだはちまんたい)国立公園の岩手山周辺を担当範囲とし、現在32人がメンバーとなっている。

活動は大きくふたつに分かれる。ひとつは、岩手山南麓にある網張(あみはり)ビジターセンター主催のイベントのサポート。例年、ハイキングツアーや植物・昆虫の観察会、星空観察会、ブナの森でのスノーシュー体験会など催しが開かれ、その多くは定員いっぱいになる人気ぶりで、参加者が遠方からも訪れる。ビジターセンターのイベントはコロナ禍で一時休止したが、少しずつ再開している。

そして、もうひとつが環境整備。春の散策路の樹名板取り付けに始まり、登山道や案内板の点検・補修、清掃活動、外来植物の駆除など晩秋まで幅広く活動している。

岩手山地区パークボランティア連絡協議会

歩きやすいように登山道の段差をなだらかにする
歩きやすいように登山道の段差をなだらかにする

ビジターセンター近くには網張温泉があり、展望を楽しもうとリフトを使って山へ入る観光客も多い。その導線を歩きやすいように補修するのも注力している取り組みだ。

会長を務める家子賢一さんは会の様子をこう話す。

「活動参加は強制ではないのですが、メンバーが自然と集まってくれます。やっぱりみなさん山や自然が好きなんだなと感じますね。会で活動をする理由についての話になると、『健康のため』と口をそろえますよ(笑)。メンバーは高齢化してきていますが、元気で今の取り組みをこれからも継続していくことを大事だと考えています」

無理なく、楽しみながら続ける活動が、「縁の下の力持ち」として大きな役割を果たしている。

岩手山地区パークボランティア連絡協議会

2021年5月、岩手山麓の網張の森で樹名板設置作業を終えて
2021年5月、岩手山麓の網張の森で樹名板設置作業を終えて


★日本山岳遺産認定地 詳細:岩手山[ 岩手県 ]岩手山地区パークボランティア連絡協議会(2017年)

日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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