全長約110kmのロングトレイルを舞台に自然保護や観光促進に貢献。信越トレイルクラブ|日本山岳遺産の横顔 vol.13

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。第13回は、長野・新潟の県境を通る「信越トレイル」でコース整備とともに、地域活性化や自然教育に取り組んでいるNPO法人信越トレイルクラブを紹介する。

写真=NPO法人信越トレイルクラブ 取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2022年1月号掲載記事

写真=NPO法人信越トレイルクラブ
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2022年1月号掲載記事

 

■日本山岳遺産候補地を募集中!

NPO法人信越トレイルクラブ

信越トレイルクラブ 〈 2020年度認定 〉

Area:信越トレイル
Main activity:地域振興・自然保護
Group profile:
地元の自然研究や観光業に関わるメンバーによって2003年設立し、翌年NPO法人化。長野県飯山市の「なべくら高原・森の家」に事務局を置く。事務局スタッフや会員約150人、ボランティアらで活動している。
https://www.s-trail.net/

里山の豊かな自然と文化を「地域の財産」として守る
「信越トレイル」は長野・新潟の県境の里山を巡る、全長約110㎞のロングトレイルだ。ブナ林をはじめとした豪雪地帯の豊かな植物や山間集落に息づく暮らしに触れながらハイキングを楽しめるコースで、里山ならではの自然や文化が国内外から訪れる多くのハイカーを魅了している。

歴史を振り返ると、信越トレイルは2000年代初めに自然保護と観光促進の両立をめざし企画された。構想には、日本でロングトレイルの普及に尽力し、2013年に亡くなった、作家でバックパッカーの加藤則芳さんが大きく関わった。

2005年に県境の関田山脈の約50kmのコースが開通し、2008年には約80kmに延伸。さらに2021年9月には、天水山から苗場山までの約30kmが加わった。コースは見どころのバリエーション豊富な全10のセクションに分かれている。

NPO法人信越トレイルクラブ

2021年に延伸しコースに加わった秋山郷は秘境とも呼ばれる山間集落だ。
今回の東方面に続き、西へのコース延伸もめざす
2021年に延伸しコースに加わった秋山郷は
秘境とも呼ばれる山間集落だ。
今回の東方面に続き、西へのコース延伸もめざす

そのコースの整備や維持・管理を長年担っているのが、NPO法人「信越トレイルクラブ」だ。事務局職員や会員、募集したボランティアらが除草や枝払い、道標設置などを行なっているが、整備方法は加藤さんの考えを継承し、あるこだわりがある。事務局長の大西宏志さんが説明する。

「『爪で引っかいたようなトレイル』を意識してます。皮膚の引っかき傷がかさぶたになって治るように、自然がすぐ元に戻れるように重機を入れず大きな負荷を与えない手作業での整備をしてます」

信越トレイルの整備を担うスタッフやボランティアたち

信越トレイルの整備を担うスタッフやボランティアたち

クラブでは自然環境調査を毎年実施。コース周辺の植物や動物の様子を調べ、トレイルの整備や利用による影響について確認している。大西さんは「利用と保全の両立をどう図るか考えていくうえで重要な調査です」と話す。

信越トレイルは、多くの地元住民やボランティアによって成り立ち、守られている。未来へつなげていくために注力しているのが、地域の子どもたちへの魅力の発信だ。小中学生らを信越トレイルに招いて環境学習会を開いている。

「『自然を守ろう』と言葉で説明するより、まずは里山へ入り楽しむことが大切だと思います。地域の財産だと認識してもらえるように価値を伝えていきたいです」

NPO法人信越トレイルクラブ

信越トレイルの価値を伝えるべく、子どもたちへの環境学習会を開いている
信越トレイルの価値を伝えるべく、
子どもたちへの環境学習会を開いている

★日本山岳遺産認定地 詳細: 信越トレイル[ 長野県・新潟県 ]NPO法人信越トレイルクラブ(2020年)


■関連動画

※動画がうまく再生されない方はこちらのリンクからYouTubeでご覧ください

日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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