有明海を望む熊本・小岱山で、陽だまりハイキング
低山ながら、有明海の展望や伝説がある巨石など魅力が詰まる小岱山。市民に愛される、憩いの山です。
小岱山は、熊本県玉名市と荒尾市の境界の南北に連なる山地の総称です。北から最高峰の筒ヶ岳、観音岳、丸山と続く稜線は九州自然歩道として整備され、いくつもの登山口があり変化に富んだコースバリエーションで多くの市民に親しまれている山です。
標高500mに満たない低山の連なりですが、西側は有明海に臨み、それぞれの山頂からの雄大な展望に人気があります。とくに観音岳の広い山頂にはたくさんのイスが用意され登山者に愛されていることがうかがえます。
今回は小岱山ふるさと自然公園ビジターセンターから丸山・観音岳・筒ヶ岳の縦走コースを選びました。
自然公園ビジターセンター駐車場に車を停めてスタートします。ここを登山口に選んだのは、ビジターセンターでA3版の四季の植物図鑑がついた「小岱山る~と地図」が手に入るからです。
今日は丸山に登り、観音岳から筒ヶ岳までの縦走を行う計画です。そして展望の良い唐渡岩にも立ち寄る計画なので、ルート図を見ながら再確認します。
管理棟を出たら石畳の道をキャンプ場へ向かいます。管理棟の先で「丸山・展望所」の案内が2箇所出てきます。どちらに行くか毎回迷うのですが、今回も歩き慣れたテントサイトを抜ける道を選びました。稜線から谷沿いに吹き下ろす風と、照葉樹の森が清々しく大きく深呼吸。
山頂の登山者に、丸山への二つの道の違いを尋ねて、右の道は急登があるが展望がいい事がわかり、次回は右の尾根道を歩いてみようと思いました。
丸山には、展望が良い休憩舎があり正面には長い裾野を延ばした山容の二ノ岳三ノ岳が見え古い火山であった事がわかります。
ここからは、稜線歩きに変わります。歩きやすい道の途中には急な階段もあり、額に汗がにじむ頃、道の右側にうさぎの顔に似た大きな丸い石の「うさぎ石」が現れます。ここまで来ると、観音岳の登山者の声も聞こえてきそうです。
広場になった観音岳山頂には、たくさんの手づくりの椅子が並べられ登山者のくつろぎの場所になっています。西側の展望が開け荒尾市街地と有明海の奥に大迫力で雲仙岳が迫ります。
山頂からの展望を楽しんだら、石碑の後から唐渡岩へ下リます。コース上には、展望がいい、いくつかの巨岩がありますが、代表的なものが唐渡岩です。中国から僧・俊芿(しゅんじょう)を慕って飛来したものと言い伝えられてます。岩の上からの絶景には時間を忘れます。
山頂まで戻り、山地最高峰の筒ヶ岳へ向かいます。途中には、九州北部の主な7座を見渡すという七峰台の露岩があり、阿蘇山・九重連山・祖母山・英彦山など居並ぶ名峰の眺めは壮観です。
丸山から観音岳間はヤブツバキの木が、七峰台付近にはヤマツツジの木が多く、季節ごとに縦走が楽しめます。
その先の分岐点は、縦走路から少し外れますが荒尾展望所へ続く道です。荒尾・大牟田など市街地と有明海・雲仙岳の展望がいいので、立ち寄ってみるのもいいでしょう。
展望所分岐からは、急な階段に変わり濃い照葉樹の森の中のアップダウンを繰り返します。森の奥に明るい場所が見えてくると筒ヶ岳です。
山頂の手前には、「埋蔵金が隠された底なし井戸の蓋」だと言われる大きな三角形をした岩があり、すぐ先が広場になった山頂です。荒尾を統治した小代氏が鎌倉時代に築いた筒ヶ岳城跡や石祠があります。
静かな山頂は展望もよく、のんびりお昼を食べた後は、観音岳まで往路を戻ります。
山頂からは、南へ下る道を案内に従い自然公園ビジターセンターへ。下山後は湯けむりの玉名温泉で汗を流して帰ります。
プロフィール
池田浩伸
佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。
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