登山計画を友人や家族にしっかり伝え、定時連絡などで情報の共有を! 島崎三歩の「山岳通信」 第270号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年7月29日に配信された第270号では、登山届けの重要性について改めて言及。家族や友人に計画書の写しを渡すとともに、定時連絡の方法や時間についても、必ず伝えておくことを勧めている。

 

7月29日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第270号では、期間中に起きた17件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月11日、南アルプスの聖岳で、9日から1泊2日の予定で南アルプス聖岳に単独で入山した男性(60歳)が下山予定日になっても下山せず行方不明になる山岳遭難が発生していることを確認。捜索したところ、17日に自力下山し発見となった。

  • 7月12日、北アルプスの五竜岳で、2人パーティで入山した男性2名(65歳、66歳)が、下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して2人を救助した。

  • 7月14日、北アルプスの北穂高岳で、4人パーティで入山した67歳の女性が、北穂高岳から下山中に岩の上でスリップして転倒・負傷する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月14日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した男性2人(32歳、27歳)が、白馬大雪渓を白馬岳山頂に向けて登山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性2人を救助した。

  • 7月16日、北アルプスの西穂高岳で、単独で入山した51歳の女性が、登山中に腰痛で行動不能になる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

西穂山荘付近の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月19日付

  • 7月17日、八ヶ岳連峰の赤岳で、4人パーティで入山した61歳の女性が文三郎尾根を下山中にスリップして転倒、足首を負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員などが出動し女性を救助した。

  • 7月17日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、2人パーティで入山した64歳の男性が天狗岳山頂から唐沢鉱泉へ下山中、バランスを崩して転倒し負傷する山岳遭難が発生。諏訪広域消防特別救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月18日、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した58歳の男性が、柏原新道を下山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。北アルプス広域消防本部消防隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月18日、八ヶ岳連峰の赤岳鉱泉で、2人パーティで入山した9歳の男性が宿泊中に発病して微熱・嘔吐の症状により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員などが出動して男児を救助した。

  • 7月18日、上田市の四阿山で、9人パーティで入山した71歳の男性が、四阿山から下山中に転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 7月21日、北アルプスの前穂高岳で、3人パーティで入山した66歳の女性が、前穂高岳北尾根をクライミング中に肩を脱臼して行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して県警ヘリで女性を救助した。

前穂高岳北尾根の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月26日付

  • 7月23日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した59歳の女性が、槍ヶ岳から上高地に向けて下山中に岩の間に足を挟んで転倒して負傷する山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して女性を救助した。

  • 7月23日、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した57歳の女性が、白馬岳から杓子岳に向けて縦走中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して、女性を発見・救助した。

  • 7月23日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、2人パーティで入山した49歳の女性が、千畳敷から木曽駒ヶ岳へ登山中に転倒して右足を負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。24日に県警ヘリが出動して女性を救助した。

木曽駒ヶ岳の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月26日付

  • 7月24日、北アルプスの蝶ヶ岳で、6人パーティで入山した34歳の男性が、蝶ヶ岳から三股に向けて下山中に足をひねって負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

蝶ヶ岳付近の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月26日付

  • 7月24日、八ヶ岳連峰の蓼科山で、23人パーティで入山した70歳の女性が蓼科山に向けて登山中、山頂付近で疲労と体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

蓼科産山頂付近の遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月26日付

  • 7月24日、北アルプスの常念岳で、3人パーティで入山した70歳の男性が一ノ沢登山口から常念岳に向けて登山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月3週、県内では10件の遭難が発生し、下山中の遭難が6件発生したほか、残雪による道迷いによる遭難も発生しました。
下山時は、登山時とは異なる筋力を使うため、自分自身が思っている以上に体に負担が掛かり、疲労が蓄積しやすくなります。「あと少しで登山口だから大丈夫。」と油断せずに、こまめに休憩を取り、木の根や苔の生えた石の上等では、足下を取られないよう注意しましょう。

県内では、夏山シーズンに入り、大勢の登山者が入山しています。登山を計画されている方は、行き先のルート、携行装備を確認し、天候が安定している場合でも、突発的な雷雨になることもあるため、天候が急変した場合も視野に入れた計画を立てましょう。
また、新型コロナウイルス感染が再び拡大し始めています。登山を計画されている方は、登山前の体調管理を徹底し、少しでも発熱がある、体調がすぐれないと感じたら、登山を中止しましょう。

7月4週、7件の遭難が発生したほか、「登山に出掛けた家族・友人と連絡がとれない」「遭難しているのではないか」との相談も相次ぎました。
いずれも、登山中であったり、伝えていた日程を間違えていたなど、幸いにも遭難には至りませんでしたが、登山の様子が分からない家族や友人は、「携帯電話がつながらない」=(イコール)「遭難しているのでは?」と非常に心配になってしまいます。
現在は、携帯電話の通話可能エリアも広くなり、都市部ではつながることが当たり前になっていますが、長野県内の山間部や登山エリアでは、携帯電話がつながらないエリアも多くあります。登山をする際は、計画書を提出するだけでなく、無事に帰りを待っている家族や友人に計画書の写しを渡すとともに、定時連絡の方法や時間についても、必ず伝えておきましょう。

 

全国でコロナ急拡大!登山者のみなさまへのお願い

山小屋等では、安心して登山ができるよう従業員の健康管理をはじめ定員削減や間仕切設置など様々な感染防止対策に取り組んでいます。

登山者のみなさまは、登山前に自身の健康チェックをしっかり行うとともに、マスクなどの基本的な対策や事前予約を徹底し、急な営業休止などに備えて山小屋の営業状況をHPやSNS等で随時確認するようお願いします。

⇒詳細はこちら

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(7月12日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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