雨飾高原から快晴の雨飾山に登り、雨飾荘でりんご和牛と手打ち蕎麦を楽しむ
ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第32回は雨飾山と雨飾荘へ。
写真・文=月山もも
長野県と新潟県の県境にある標高1963mの雨飾山は、長野県側・新潟県側の両方の登山口に温泉宿がある、温泉好きにとってたまらなく魅力的な山です。
8月のよく晴れた日、長野県側の雨飾高原から山頂を目指しました。
秋の花と布団菱、日本海を眺めながら歩く
雨飾高原のキャンプ場に前夜からテントを張り、早朝に登山口を出発。
樹林帯の中の道は傾斜が急で、太陽がのぼってくるとかなり暑さを感じます。
歩き始めて2時間ほど経つと視界が開けて「布団菱」と呼ばれる尖った岩壁が見えました。遠くから見るとまるで山頂のような迫力のある岩ですが、山頂はもう少し先。ここからまた急坂を登ります。
日差しが強く、ハシゴやちょっとした岩場もあって気が抜けない道が続きますが、道端にはトリカブトやアカバナシモツケソウが咲いていて、心を和ませてくれました。
稜線に出ると、新潟県側から登ってくる道と合流し、遠くに日本海を眺めることができました。
ここまで来れば山頂まではあとひといき。
なだらかな道をのんびり歩いて山頂に到着。以前紅葉シーズンに登ったときはものすごい人でしたが、夏の雨飾山山頂は静かで気持ちの良い風が吹いていました。
少し休んでから、来た道を戻ります。
広々快適な洋室でお昼寝し、疲れを癒やす
本日のお宿は雨飾高原キャンプ場から30分ほど下ったところにある温泉宿、雨飾荘。
今回宿泊したお部屋は、1部屋だけある洋室のツインルームです。贅沢にも1人で使わせていただきました。
室内は、落ち着いたブラウンのインテリアでまとめられています。Wi-Fiやエアコンも完備され、冷蔵庫には冷たいお水が入っていました。
ベッドのあるお部屋なので布団を敷いてもらう必要がなく、昼からゴロゴロして登山の疲れを癒やしました。
館内の大浴場とブナ林の中にある野天風呂
館内にある男女別の大浴場は、チェックインから翌朝9時まで夜通し利用可能です。
洗い場も広々としていて清潔でした。
雨飾荘は毎分240Lの源泉が湧出する湯寮豊富な宿で、うっすら茶褐色のナトリウム炭酸水素塩泉を常時かけ流しています。
内湯は42度ぐらいのやや熱めに調整されており、露天風呂は40度ほど。ぬるめで長く浸かれます。
遠くの山並みが見えて、開放感のある露天風呂でした。
実は大浴場以外に、滞在中に楽しめる露天風呂がもう1つあります。
宿から徒歩3分の場所にある雨飾高原露天風呂。以前は混浴でしたが現在は男女別に分かれており、入りやすくなりました。ブナの原生林に囲まれた野趣あふれる露天風呂で、日が陰り始める時間帯が特におすすめです。朝10時から夜9時までの営業で深夜早朝は入浴できませんが、ぜひ1度浸かっていただきたいです。
地物食材尽くしの夕食、朝はのどぐろ一夜干し
食事は朝夕共にダイニングでいただきます。
夕食は信州サーモンのスモークや白馬豚のチャーシュー、信州牛の八幡巻きなど、信州産食材を使った見た目にも美しい前菜の盛り合わせから始まりました。
お酒は「白馬錦」や「大雪渓」などの地酒4種が楽しめる利き酒セットを注文します。
焼き茄子ゼリー寄せは、見た目も涼しげ。
お刺身は「岩魚の姿作り」です。新鮮そのものの岩魚のお刺身をおろしたてのワサビでいただく、山の宿ならではの贅沢な一品ですね。岩魚の骨は後から唐揚げにして出してくださり、おつまみとしておいしくいただきました。
蓋物は「信州牛の煮込み」で、和風デミソースで柔らかく煮えており、野菜もおいしい。
台の物は、信州産のりんごを食べて育った「りんご和牛」の石焼き。脂ののった牛肉をわさびと塩でいただきました。
雨飾山の湧き水で打ったという手打ち蕎麦は香りが良く、冷たいツユと大根おろしでさっぱりといただきました。
最後に「ご飯のお供に」と出していただいた「信州牛のそぼろ」が、旨みたっぷりで甘辛い味がお酒にも合い、日本酒をお替わりしたくなってしまいます。
デザートはすいかと杏のシャーベットです。
すべてのメニューで信州産の食材がふんだんに使われていて、調理法にもこだわりが感じられる、すばらしい夕食でした。
翌日の朝食も、同じダイニングでいただきます。
焼き魚は「のどぐろの一夜干し」です。添えられた「こしょう味噌」なるピリ辛味の味噌もおいしく、ご飯をお替わりしたくなる朝食でした。
*紹介した食事、サービス、登山道の情報は2020年8月取材時の内容です。
雨飾荘
料金:1泊2食付き/1室1名利用16,600円~、2名14,950円~ ※プラン、時期によって変動
住所:長野県北安曇郡小谷村中土18926-1
電話:0261-85-1607
HP:https://www.amakazari.jp/
プロフィール
月山もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
ひとり温泉登山
山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。