慎重過ぎるぐらいの計画と日頃のトレーニングにより安全な登山を 島崎三歩の「山岳通信」 第287号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年12月15日に配信された第287号では、県内の山は厳冬期に入り、厳しいコンディションとなっていることを説明。慎重過ぎるぐらいの計画と日頃のトレーニングにより、安全な登山を心掛けるよう促している。

 

12月15日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第287号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 11月21日、北アルプスの大天井岳で、単独で入山した29歳の女性が宿泊予定の山小屋に現れず、行方不明となっているため捜索を行っている。

  • 11月26日、木曽郡大滝村の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した84歳の男性が、足を滑らせて滑落する遭難が発生。男性を救助したものの死亡が確認された。

  • 12月2日、上田市真田町長地籍の「松尾城跡」で、単独で松尾城跡に訪れた66歳の男性が、登頂後に落葉で足を滑らせ滑落、急斜面で技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。上田警察署員及び上田地域広域連合消防本部救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 12月3日、佐久市志賀の岩場で、クライミングのために3人パーティで入山した52歳の女性が、通称「ひなたエリア」においてクライミング中に疲労により転落・負傷する山岳遭難が発生。佐久広域消防本部員らが出動して女性を救助した。

  • 12月8日、上田市上塩尻地籍の虚空蔵山で、単独で入山した32歳の男性が登山中に足を滑らせて滑落し、行動不能となる山岳遭難が発生。上田警察署員及び上田地域広域連合消防本部救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 12月10日、佐久市内山地籍の荒船山で、単独で入山した28歳の女性が艫岩付近を下山中につまづいて転倒し、負傷する山岳遭難が発生。佐久広域連合消防本部員が出動して女性を救助した。

  • 12月10日、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、単独で入山した27歳の男性が日帰りで登山に向かったものの日没後も下山せず行方不明となり家族が救助要請。翌日、自力で下山して男性の無事が確認された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

11月4週は、2件の山岳遭難が発生しました。1件は登山中の行方不明、もう1件はきのこ採り中の遭難で、2件とも単独での行動によるものでした。単独での行動は、万が一の際に通報ができない可能性が高く、下山予定日を過ぎて家族や友人等からの届出により遭難したことが認知されることがほとんどです。
皆さんは、万が一に備えた計画を立てていますか?冬山での歩行技術や装備の取扱いは大丈夫ですか?計画どおりのペースで目的地までに到着できる計画ですか?
計画の段階から登山は始まっています。登山は自然に立ち向かう冒険です。これから登山の計画をされる方は、天候や積雪量によって、計画どおりに行動できないことを念頭に、慎重過ぎるぐらいの計画と日頃のトレーニングにより安全な登山を心掛けてください。

12月1週は、2件の山岳遭難が発生しました。SNSなど、個人の山行記録をそのまま「鵜呑み」にしていませんか?記録によっては、日帰りで10時間以上も行動する体力的に負荷の高い記録や、凍結したルートを通過するなど、技術的に難易度の高い記録もあります。登山者それぞれ、体力や技術が異なるほか、天候やルートの条件が違いますので、そのまま「鵜呑み」にすることなく、自身に合わせた無理のない計画を立てましょう。

12月2週は、3件の山岳遭難が発生しました。この時期の登山は、北アルプスのような標高の高い山域ではなく、積雪の少な低山(里山)に登山へ行くことが多いと思います。しかし、里山といえども油断は禁物です。特にこの季節は、落ち葉により登山道が不明瞭になっていたり、滑りやすくなっています。
また、ルートによっては登山道が急峻であったり、崖の付近や鎖場を通過する箇所があります。里山登山であっても、事前に計画を立て、地図アプリのみに頼るのではなく、ルートの下調べをしっかりと行い、自身の体力や技量のほか、体調や健康状態を考え、無理のない登山をしましょう。

今週は、北アルプス等の高山だけではなく、標高約1000メートル付近でも降雪となるおそれがあります。積雪は、冬山登山において行動時間に大きく影響します。
冬山で遭難すると、状況によっては救助されるまで相当の時間がかかる場合があります。その間、遭難者本人や同行者は現場で風雪と寒さに耐えながら、救助を待たなければなりません。
冬山に入山する以上、遭難のリスクは誰しもあるものです。アクシデントに対応できるような非常用の装備を携行し、登山計画の段階から、積雪を考慮した余裕のある日程と冬山に対応できる装備品を携行しましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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